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首相、「一律非課税給付」へ舵 大幅減収世帯への救済はどこへ?

大幅な減収となった世帯への30万円給付で調整が進んでいた現金給付策。

しかし、首相の判断で減収の有無に関わらず住民基本台帳に登録のあるすべての国民に一律で10万円(非課税)を給付する方向へ舵を切った。

それに伴い、大幅な減収となった世帯や低所得世帯を対象とした30万円給付は突然立ち消えとなった。

「連立を下りる」の一声で決断 ”宗教票”失うのを恐れたか

首相が一律給付を決断したのは16日夜。
その数日前から、党三役のひとり二階氏(党幹事長)や連立を組む公明党代表山口氏など首相周辺から一律給付に転換するよう強く求められていた。

そのなかで最も堪えたとされたのは、公明党山口代表から持ちかけられた「連立離脱論」。

公明党は20年以上自民党と連立を組んできた関係で、相互に選挙協力を行ってきた。

たとえば、衆院選の1人区(1人のみ当選)で自民党の候補者が出馬する際は、原則その選挙区に公明党候補者を出馬させず、その逆も然りだ。

そして、自民党候補者が出馬している選挙区での公明党支持者は自民党候補者の名前を書いて投票し、政党名を書く比例票は公明党に入れる。

公明党は支持母体が宗教法人「創価学会」であるため、支持者のほとんどは創価学会の会員。

そのため、自民党に入る公明支持者からの票は俗に”宗教票”と呼ばれる。

一般的に宗教票というのは固定的で、動きにくく計算がしやすい。

加えて多くが無批判に支持しているので、自民党の候補者に投票しろと指示されても一切の違和感を持たないことがほとんど。

自民党にとってこんなに利用のしやすい政党もないだろう。

今回公明党が連立離脱を持ちかけたことが事実ならば、7年4ヶ月の安倍政権では初めてのことだ。

首相が自らの後任を譲る(禅譲)予定だとされている岸田政調会長が発案した30万円給付案を撤回するとは、首相にとって公明党の後ろ盾を失うことの意味の大きさを物語る。

実際に、公明党が自民党との連立を離脱したのは政権交代が起きた2009年。

このときの悪夢を繰り返したくないとの強い思いがうかがい知れる。

方針転換で大幅減収世帯には不十分な支援に

当初の政府案(岸田案)では、2月~6月の間に大幅な減収となった世帯、住民税非課税の低所得世帯に限定し、1世帯あたり30万円の給付を予定していた。

条件にある減収幅が大きく、世帯主の減収が対象となるなど、極度な制限を設けていたためかなりの不評を買ったが、減収となった国民に一律給付を行うか、上限額を設け、減収率に応じて支給額を変動させるようにすれば、目的が明確となり、非常に合理的な給付となったはず。

しかし、減収率に関わらず一律10万円給付となったことで不公平感がより大きくなった。

大幅減収世帯にとっては不十分な支援と言わざるを得ない。

一律給付とは別に、大幅な減収となった個人に現金給付を行うことを政府に求めたい。

しがらみにとらわれない政治判断を

この不況によって仕事を失った人にとっては10万円を支給されても必要最低限の支出に消えていくだけであり、今は職にありつけている人も今後、感染終息までの期間が長期化すれば失う可能性は多分にある。

この非常事態にしがらみにとらわれ、サプライズ的に方針を転換し続けるのではなく、先を見据えた中長期的な支援策を早急に国民に明示すべきだ。

そうすることで、国民は状況に応じて適切なタイミングで適切な支援を受けられるようになる。

結果的に政府への信頼度は高まるに違いない。

今のところ五輪を予定通り開催するため、都市封鎖を避けるため恣意的に検査数を絞って、感染拡大規模を過小評価するような政府に信頼を置く余地はないが。

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