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ネックジョイントプレートの比較

ハンプバックさんから、今年完成したネックプレートのサンプルをお借りすることができました。戸田さんがtwitterで呟いているのをご覧になった方もおいででしょう。1.5mm厚と1.9mm厚の2枚を預かっています。

これらは、単純に厚みを変えて作ったというようなものではなく、詳しいことは不明ですが、金属そのものと加工の仕方、メッキの仕上げ方などにアイディアが投入されているようです。巷には、ノーマルなスティールに替えてブラスにしてみるとか、他にステンレス製、チタン製などが僅かながら流通しています。

そうした製品の、ひとつの着目点は、素材もですが質量を変化させることにあるようです。しかしながら、戸田さんの狙いは、ただスティールと言ったって60年代と今では組成が違うよね、とか今普通にメッキってやっているけれど昔と同じかな、とかそうした見逃しがちな細部にこだわってみることの検証にあるようです。

ちなみに、我々が理想とするトーンが形成されるには過去の記憶が基礎となると考えるのが普通で、だからビンテージの音が良いという理屈になります。逆にビンテージは良い楽器というより、その音の記憶が良い音を考える上での基準を成しているに過ぎません。今、ビンテージの楽器を手にして、何がその「良い」音を実現しているか、個々のパーツの素材そのものに目を向けることが、理解への近道かもしれません。

その意味で、戸田さんの実験は大きな成果を得ていると感じます。今回、お借りしたプレートを4本のフェンダー・クローンの各楽器に装着してライン録音をしてみました。お聞きいただくのが早いと思います。

録音に使用した楽器は、Crews Maniac Sound製の、よりフェンダークローンに近い構造でスポット生産されるジャズベース、これはアルダーボディのローズ指板で、典型的な60年代仕様となっています。

もう1本もクルーズ製で、先日ハンプバックさんのプリアンプをインストールした話題で登場させたアッシュ/メイプルのディンキーサイズJB。デラノのPUに交換しており、録音はアクティブにしてノンブーストの状態です。PUの搭載位置は60年代仕様ですので、典型的なマーカスサウンドとは、元々方向が違います。とはいえサドウスキーをイメージしていただくと良いと思います。

3本目はFreedom Custom Guitar Researech製のPBタイプで、アルダー/ローズです。ラベラのフラット・ワウンドを張っています。普通はトーンを少し絞って使いますが、今回は全開です。

4本目はやはりクルーズで、Punkというネームが与えられたジャコ・インスパイアドのJBフレットレスです。ネックは特注したエボニー指板のコーティング無しになっています。PUは例のお高い奴が載っています。リアPUのみでトーンをかなり絞っています。全閉だと音量が下がるので少し上げて25〜30%くらいのところです。

これらに初めから着いていたプレートは、メーカーがクルーズとフリーダムに分かれますが、全て厚みが1.6mmで重量が40.0gでした。クルーズはメイカー名がエンボスで入っていたり、フリーダムにはシリアルが刻まれていたりします。それでも1/10g単位の差違はありません。憶測ですが供給元は一緒の気がします。もしかすると国産の楽器は全て一緒なのかもしれません。

ハンプバック製は、ここに2種あり、一つは1.5mm / 36.9g、もう一つは1.9mm / 45.7gでした。厚みは、たしか50年代のストラトに付いていたものを実測したとかで決められたように聞きましたが、間違っているかもしれません。いずれにしてもフェンダーで使用されたことのある仕様と思ってよいでしょう。しかしそれが現代に踏襲されていないのが不思議ですね。しかし肝はメッキのようですから、厚みの差が音の差と思わぬ方が良さそうです。

よく使われているフェンダー型のベース4本に、合計3種類、12本のオーディオを録りました。デフォルトの音が、1.5mm、1.9mmと替えたときに変化する仕方が、同傾向であることに驚きます。ネックプレートは、これほど音質に対して支配的なようです。

録音での変化も十分聴き取れますが、生鳴りでは更に大きく差違があり、弾き手自身はもっとわかりやすいです。ネックプレートは直接、弦振動とボディ振動に影響を与えるようです。

なお、ここで実験していませんが、プレートにクッションを置く仕様の楽器があります。今となっては、私はあんなものはいらない、と言ってしまいそうです。もちろん比較実験を経ないで結論は出せませんが。

録音はいつものようにPrism SoundのLyra1というオーディオインターフェイスのHi-Z入力に、モガミのシールド直で楽器と繫いでいます。このシールドは、数年前にイケベ楽器を通じて販売されていた、プラグとケーブルを内部で溶接しているという製品です。私は結局これが一番色づけがないように感じています。2本しか持っていないので、今は大切に使っています。

それではSound Cloudの当該トラックへリンクを貼っていきます。

以上となります。お楽しみ頂ければ幸いです。

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12トラックを連続して聴けるPlaylistも作りました。以下からどうぞ。
https://soundcloud.com/f2u0s1c2a/sets/neck-joint-plate-comparison



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