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Amplified Musical Productsについて少し

ある夜のこと、デジマパトロールを敢行した際に、検索トップにAMP社のプリアンプが現れました。いやはやここで出会うとは。そもそも安価であったことと販売店のポイントを持っていたことから、正味1万円の出費でしたので迷わず購入しました。きょうびペダルプリアンプもその値段では買い難しですから。実機の美観は時代を超えて優れており、お店の6ヵ月中古保証もあって、とりあえずコレクションに加えるには最高の買い物体験でした。別に、全然、ベースプリアンプを必要としてはいませんけれど。たくさん持っていますので。正式名Amplified Musical Products社は"AMP"というロゴが貼ってあるので、一般には「エイ・エム・ピー」と呼ばれていました。プリ・パワーセパレート型のラックアンプを見ると萌えます。世代的に。

私がベースを弾いたのは、昨日書いたように中学卒業のタイミングから始まり、高2くらいまでで一旦終わり、大学3年くらいだったかで再スタートをしています。本格的な練習はサラリーマンを辞めてからですから世の中舐めてますね。これからプロになると言って、容認する人はいませんでした。その20歳前後、楽器調達は前にも語りました通り環七にあったクルーズでしたが、まずはそこに入荷したものを見ました。また友達の友達として紹介された、おそらく音楽の専門学校を出たばかりで、少しお仕事も始めましたというような男の子と知り合い、何故か彼の住まいを訪ねたとき、このAMPのフルセットとSpectorという、当時のハイエンドを揃えていて、あぁやっぱり裕福な人は早く世に出られるのだなと、的外れなことを思ったものです。

記憶が正しければ、国内に入ってきた最初のプロダクツは、このSL-1(プリアンプ)とM-800(パワーアンプ)とXB-15(スピーカーキャビネット)の3点セットでした(もちろんばら売り)。後でブランドの概要を書きますが、ソリッドステート・ベースアンプの最高峰がacousticからSWR/EDENに置き換わる少しの間を埋めるタイミングに登場しました。

M-800

私的な話に戻りますが、最初に買ったライブをやるための本格的なベースアンプは、その彼よりもいくらか遅れてですがAlembic F-2Bに、このM-800、そしてDean Marcleyのキャビという布陣でした。しば〜らくしてTrace Elliotの上下に替わるのですが、初めてにしてこれですから、オーディオ趣味全開で楽器用再生システムに踏み込んで行きました。竿よりアンプです。

XB-15

時代のダイヤルは大きく回転し、その10年後くらいにXB-15を中古で入手します。すでにブランドは無くなっていました。このキャビは比較的小型の15インチキャビですが、すっぽりと収まるツアーケースのような「外箱(external cabinet)」が付属します。実はケースを兼ねるのは正解ですが、エンクロージャーを拡張する装置なのです。スピーカーを搭載するキャビは底が空いていて、ケースの上蓋は枠だけになっているので、中身を取り出した後、その枠を元に戻せば台になり中身を乗せられます。すると空間が約2倍に拡大されて充実した低音再生が可能になる、という設計です。

ステージ用のベースアンプキャビネットは15インチ2発(あるいは10インチ8発)が常識でしたので、容積を増やすことで稼げるローがあれば、ユニットは1発で充分でしょ、との主張が、そのポータビリティの良さと相まって魅力でした。このキャビネットを実際に使用した感想ですが、実は私は気に入りませんでした。

まず良いことは、ユニットの地上高がかなり上がるのでモニターしやすくなる。容積は増えて太い音が出るには出るのですが、良くないこととして、ケースの部分は内側に吸音材等無く、定在波が発生して妙なピークが出る。つまり音質に癖が出ました。バスレフのようなスリットは空いていますが、バスレフであるならばポートが無ければなりません。ポートをユニットに合わせて設計することで最低共振周波数の帯域を補完できます。ケースですから内側に出っ張りを設けることができずポートを付けられません(使用する際に表側に出っ張らせて付けても良いのですが)。

だったら、上に乗せる本体の方へ穴を開けポートを取り付け、ケースの側のスリットは塞いでしまおうと考え計算し、ポートのための塩ビのパイプを買ったところまではやりましたが、バッフルに真円の穴を空ける道具をどうしようか悩んでいるうちに、キャビ自体を手放してしまいました。この時に買った塩ビのパイプは昨年に家を取り壊すまで、部屋の片隅にありました。

BH-420

最初期はセパレートで攻めてきたブランドですが、時を置かずプリメインアンプ、つまりヘッドをリリースします。SL-1にはチャンネルデバイダーが付いていてハイトローを分けて出力できます。それを受けるM-800はステレオのパワーアンプですが、同社唯一のキャビネットはウーハーのみです。というわけで需要の実情は、モノラルのヘッドアンプであることから、M-800の片チャンを内蔵したようなヘッドが登場しました。それがBH-420、後にGibsonが権利を買って再生産したことがあり、国内でも見かけましたから「名機認定」されて然るべきです。プリメインは、より小出力でセミパラメトリックの機能を廃した弟分が出ます。Web検索するとBH-250とBH-220が出てきますが、私は実機を見た覚えがありません。

BH-420も実は持っていたことがあります。よく仕事で行く会場に置いてしまおうと、無くなっても壊れても他人に使われてもいいようなものを探して、それをたまたま中古で見つけました。スピーカーキャビを使用していた頃から、ここでも10年くらいが経過しています。十分なパワーと温かみのある音色で悪くなかったですが、その会場へ行かなくなってから不要と思って手放しました。もうすでにD級軽量アンプが普及しつつあり、安くて軽くて、パリッとした音のヘッドが、新品でも中古でも思いのままに入手できる時代に変わっていました。

SL-1

そして3日前、BHからは10年以上の時を経て、性懲りも無く出会ってしまって即、わが家へ届いたプリアンプです。品質チェックのために早速音出ししました。AshdownのヘッドへReturn入力してパワーアンプとします。やはりBH-420の音を思い出しました。ソリッドステートの太く暖かい、昔で言えば素直な音です。もう古き良きと言うしかない。こういうのって、普通みんなが真空管デバイスに対して形容するための言葉です。解像度はミレニアムが変わって以降のものとは段違いです。フィルムカメラとデジタルカメラ以上の違いを見る思いです。

インプットはノーマルとロウ、パッシブ/アクティブと同じです。ゲインがあって、次にリミッター、その隣にエンハンサーのスイッチがあります。これを入れるといわゆるドンシャリになります。Ashdownのプリシェイプと同じ効果です。シェルビングのバスとトレブルに挟まれて、ミッドは40Hzから1kHzを4バンドに分けて可変できるセミパラメトリックトーンとなります。その次にトーンバランス、これはWalterWoodsにも見られるティルト機能です。中心周波数は不明ですがローとハイをシーソーのようにどちらかへ傾けられます。私はこれが結構好きなんですね。ステージで使いやすくて。その後アウトプットボリュームがあり、クロスオーバーが100〜1kHzとなっています。レベルは変えられないので音量バランスはパワーアンプの方で取ってくださいということですね。

いかがでしょうか、何かを思い出されませんか? はい、SWRのSMシリーズです。というわけで、見た目Acousticっぽく、機能SWRっぽいのは訳があり、それらの勃興の中間地点に存在するという意味でも、中の人が一緒です。

来歴

ここからはうろ覚えだけでは書けませんので、少しサイトを参照しながらまとめます。AMP社を興したのはラス・アリー氏で、Acoustic Contorol Research社(Acousticブランドの製品を作っていた会社)でジャコ・パストリアス使用などでお馴染みの"360"を設計した、70年代の楽器用ソリッドステートアンプの伝説的な人物とされています。そこにAcousticの元同僚だったスティーブ・レイブ氏が加わり、プリアンプのこのような機能をデザインします。これらのインプットセクションはデイヴィッド・ファンク氏が担当します。AMP社が存在したのは1982年から1989年と言われています。

AMPを解散してラス・アリー氏はEdenを、ステーブ・レイブ氏はSWR(その後独立してRaven Labs)を起ち上げます。デイヴィッド・ファンク氏は日本では馴染みの薄いThunderfunk Ampsを起ち上げます。どのような経緯で枝分かれしていったのか存じませんが、彼等は確実に時代を作りました。そうしたこともあって思い入れの深いAMP製品を、良い状態で発見したなら所有したいと考えるのは自然な成り行きでした。

ちなみに、色々読んでみますとジャコはBH-420を使っていたとの記述も発見しました。今ここにあるSL-1は、個人的にはジャコのトーンに迫ることのできる機材の一つではないかと感じます。検証はできませんが。

まとめ

というわけで最新の入荷をご紹介いたしました(売るわけではありませんが…)。持ってるだけで、これはハッピーです。順を追ってAMPを制覇しました。同時に複数台を所有したことが無く、組み合わせて使ったことがないことに笑ってしまいますが、これからもどこかで見かけ、取得費がリーズナブルであればコレクションしたいと思っています。この頃のラック機材が大好物です。当時はなかなか買い揃えられませんでしたから。


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