見出し画像

『TRUMP』『グランギニョル』見たよ

ストレス性の胃痛と気圧の頭痛が最悪なほうの恋々です。毎日寝込んでは人生における時間の浪費についてひたすら考えております。悲しいね。


現在開催中の末満健一氏演出・脚本のTRUMPシリーズ無料配信の、第一夜、第二夜配信を鑑賞しました。

第三夜以降は観れる環境ではありませんので、わたしのはじめての繭期2020はここで打ち止めです。そもそもTRUMPシリーズは知り合い内外からおすすめされておりまして、いつかは観たいと思っていた作品ですので、おすすめしてくださった方々へ向けて、という感じで、いささか乱雑な文章とはなりますが第一夜「TRUMP」と第二夜「グランギニョル」の感想文をしたためたいと思います。演出家の意図するところは特に見聞きしていない上での鑑賞なので、あくまで私が感じたものになります。あとキャラの話とかはそんなにしてません。


第一夜『TRUMP』

事前におすすめされていた訳なので多少の用語知識はあり、ギムナジウムもの、重い思春期的なもので収容されるこどもたち、と聞いて萩尾望都とか武宮恵子的なやつかな~と思っていたのですがライチ★光クラブの精神性に近かったです。たくさんのこどもたちの思惑が外から訪れたものによって悲劇を引き起こすあたり。

「繭期」という重い症状に悩まされるこどもたち、というよりは、それを取り囲む大人たちも十分に精神不安定であると感じさせられ、するとそこに収容されているこどもたちは、肥大した自意識と自分の出生に苦しむただの、年相応の青年にしか見えない。ヴァンプの社会はどうも高貴な貴族社会であるようなのですが、拠り所のない人を嘲り、自身の家柄を背負う青年の在り方はあくまでの「普通」に思え、そこまで異質なものには感じられず、だからこそ、強制的に主従関係を発現させるイニシアチブや、血の高潔を唄う「ヴァンプ」という種そのもの、そして不死の原初、「TRUMP」という存在が、人びとに自分の身体を越えた夢を見させ、制御不能の暴走を引き起こしてしまい、悲劇につながる…。いわゆる視聴前に聞かされた「TRUMPの世界観」は、人間模様の上にかぶせられた「ままならぬ要素」の一遍、この凄惨な不条理演劇の完成のために存在している、と感じました。それこそ20世紀にフランスで起こったシュルレアリスム演劇の系統に近いというか、そう考えてみるとリバースシステム(と呼ぶんでしょうか?主要キャラクターの役を公演ごとに交代するやつです)も、また、ふたつの場面転換に100年の差があった、と後半で発覚するのとか、不条理演劇の実験的なシステムを感じさせられました。イヨネスコの犀みたいな…(と思ったんですが大昔に戯曲を一度読んだきりなので的外れかもしれない)。不安定な少年を演じる俳優たちもみな美しく、壮絶な演技でしたし、音楽も素晴らしかったですし、何より脚本・演出に唸らされました。「これはメチャクチャすごい作品じゃん!」という気持ちになりました。すごいね。もっかい見たいしリバースした方も見たいです。


第二夜『グランギニョル』

本当はすべてのはじまりであるところのTRUMPだけ見るつもりだったのですが、これは第二夜も見れるなら見たい…と思いがんばって時間を作ってみました。ま~見て良かったです。どんでん返しというのは創作作品の常とは言いますが、一本として完結した作品でありながら、その後の物語(TRUMP)を知っていれば呻き、苦しむ事実の多いこと多いこと…。台詞や演出に、TRUMPを想起させるものも多々見られ、この作品が連続性のある歴史の一部であったことを示しているのが本当に圧倒されます…。誰かが誰かに影響を与え、それがバタフライエフェクトのように、風が吹けば桶屋が儲かるように波紋を広げていくという舞台装置がメチャクチャに好きなので…個人的にはこの二作品を連続で鑑賞できてよかったなあという気持ちと、TRUMPを知らないままグランギニョルを見たいなと思う気持ちの半々です。生きることがしんどすぎるんだわ…。

グランギニョルは鑑賞中オイディプス王を何度も思い出しました。と、いうか、ブルジョワ劇ですよね。アリストテレスが主張したように、観客席に座るわれわれ市民の為に描かれる貴族の悲劇の物語であると感じられ、そう思えばTRUMPシリーズそのものが我々とは異なる世界であると、種の違いを何度も主張しているがゆえに感じられているのかな…と。劇中にてひとつの劇を完成させるにあたって壇上に引きずり出される貴族たちの悲劇は、約束された結末であり、それでもなお痛苦の中に生まれたこども「生きよ」と祈りを捧げるラストシーンが「約束された悲劇」に抗う唯一のすべであり、しかしその抗いの結末を我々はもう十二分に理解している…というのが、この壮大なブルジョワ劇の完成であると感じられます。オイディプス王やリア王に存在する、貴族が欲を出すことによって、(貴族の無邪気な加害性によって)降りかかる悲劇の物悲しさ、けれども市民は貴族を救済することはできないんですよね…。これはヴァンプの物語であって、我々の物語ではないので…。グランギニョルによる不条理劇の完成で、個人的には最高に打ちのめされました。鑑賞後、やっぱ感情を持って生まれてきたことが間違いだ、生きている限り絶対に抱くであろう欲望や愛や執着や信仰がこの惨劇を引き起こすのであれば我々は生まれてくるべきではなかった、そしてその悲劇のなか「生き残ってしまった」人びとが死にたいと願うことは間違いじゃない、すべての生まれたばかりのヴァンプが世界の光を知る前に殺してやりたい…と泣きながら眠りにつきました。でもわたしたちにはその権利はないし、生まれてくるこどもたちに「会いたかったよ」と抱き締めてやりたいんです。だって愛しているから。どんなにあなたが、生まれてきたくなかったと願っても、あなたの生を祝福したかったから…。これまで起きた残酷劇、そしてこれから起きるであろう残酷劇に思いをはせながら、早くヴァンプ絶滅してくれ…と祈ることしかできません。悲しい。何?あと永遠の繭期という概念、もっといつかは失われてしまう青春への願いかと思ったら生きている方が辛く苦しい日々のことだったのメチャクチャ悲しいです。生まれてきてくれてありがとうって言わせてくれよ…。


『TRUMPシリーズ』の感想

まだ2作しか見ていないのでこれがシリーズのすべてとは語れませんが、個人的にはとても面白かったし、わたしがこれまでに見た舞台の中でも非常に思い出深いものになると思います。いや~本当に面白かったです…もう一度見たいですしDVDが品切れになってて泣いちゃったりしました。頼むよ…。

丁寧に作られた舞台って本当に良いものですね。私の好きな要素が大変多くて、悲劇なり、親子の系譜なり、バタフライ効果なり…それが質の高い舞台演劇としてまとめられている手腕にひたすら魅了されました。たまに挿入されるお笑い要素も大変かわいらしく、しかし舞台の空気を壊すに至るものではなくて良かったです(個人的にはTRUMP終盤の突然はじまる一発芸が最悪すぎて最悪…となりました)。視聴後ずっと「死にたいって思う気持ちは間違いじゃない…」としか言えなくなりましたが、この打ちのめされた感情もひとつの大掛かりな作品を観れたという充足感です。最高の作品に自分の精神が揺さぶられるのってとっても気持ち良いですよね。というか本当に満足しました。ありがとうおすすめしてくれたフォロワー、ありがとう…………。個人的には過去に見たさまざまな演劇も思い出されたので、イオネスコの戯曲とか読みなおす旅に出ようと思います。ありがとう……。とりあえずフォロワーさんのご厚意によりリリウムを観れることは決まってるのでそちらも楽しみです。出会えた素敵な舞台、ゆっくり咀嚼したいと思います。生きるって地獄~!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

日々のごはん代や生きていく上での糧になります

5
学問と音楽と創作が好きで社会が苦手です。楽しく生きたい @oribeiyo
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。