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1/19 映画と小説の感想

今日は歯茎がちょっと腫れていて気持ち悪い方の恋々です。何か悪いものでも食べたのでしょうか。それとも無意識のうちに歯ぎしりをしすぎたのでしょうか。まるでわたしの人生のようですね。

最近見た映画と小説の感想です。


闇の女王にささげる歌

ローマやケルトやヴァイキングの文学、古代ブリテンの英雄の物語といえばローズマリー・サトクリフでしょうが、これはブリテンにおける伝説の女王であるブーディカの物語です。

某フェイトをグランドオーダーするゲームでもキャラクター化されおなじみですが、略してエフゴにおいては料理上手で献身的な母親のような慈愛と、内面の闇の部分としてローマ許すまじの苛烈な憎悪が見て取れます。ローマ帝国という圧倒的な暴力に屈することなく立ち向かい、抗い、あるいは娘や自身へ投げつけられた屈辱を返すようにロンディニウムで破壊と殺戮を行ったとされる彼女を、サトクリフがどう料理したかというのは気になるポイントでした。

それは女王に仕える竪琴弾きの視点にはじまり、代々続いてきた部族のしきたりに従い女王となりゆく彼女の見聞きした世界の美しさ、育まれた愛とそれに対する無慈悲な破壊、「勝利」以外の選択肢を無くすために、種つけの行われないまま置き去りにされた田畑の、戦火の熱と物悲しさを語るものでした。抗うことがいかに無謀であったとしても、そうすること以外の道などなかった人々の物語は、どうしてこうも我々の心を揺さぶるんでしょうね。女王と部族を取り巻く神秘と信仰、そしてあらゆる自然の美しさはサトクリフの妙だと感じます。読了後は紅いマントに輝く髪を持った闇の女王の姿が鮮明に脳裏に浮かびます…(それと、竪琴弾きの見ていた幼い少女の姿も)

あと、著者記に書いてありますが、イケニ族が女家長制であり、ブーディカが王権を所有する女王であるということは知らなかったので意外でした。これによって彼女の蜂起、ローマに対する憎悪の意図もまた意味合いが変わるような気がしますね。翻訳も読みやすかったです。


マグニフィセント・セブン


七人の侍は好きなんですがそこで更にリメイクやアレンジを見たいという気は特に起こらず、その為荒野の七人も見ていない感じです。ただ、マグニフィセント・セブンはイ・ビョンホンが出ているので見たいな~と思って見ました。

ストーリーも単純明快で面白かったです。七人の侍のラストにあった、勝利したはずなのにどこか苦く切ない後味の悪さはホニャララ七人系の伝統なのでしょうか。七人がどのように集っていくかの過程とかも短いながら頑張って構築していたと思います。イビョンホンは最高でした。洋画に出てくる東洋人として百点満点です。ニッコリ。

百姓の物語から開拓史の物語に置き換えることで変わった要素もあるのでしょうね。



有料部でクローズド・ガーデンの話。


クローズド・ガーデン

周囲の環境から、次第にカトリックに傾倒していった少女が17歳で修道女を志し、修道院の厳しい規律の中で自我や信仰を問う話です。それと同時に、近年のカトリックにおける最大の事件であろう第二バチカン公会議に揺れる修道女たちの物語も折り重なり、外界から閉ざされたキリストの花嫁たちの試練や日々を描いています。

や~~~面白かったです。信仰に悩める人には見てほしいポイント高いかもしれません。一緒に借りてきたダヴィンチコードがディスクの不調で観れなかったんですが、もう見れないままでも全然良いなって感じです。

宗教がいかにして近代社会と手をとっていくか、あるいは近代の流れの中で生きていくか、という問いかけに対し、改革を求めたのが1960年代に行使された第二バチカン公会議ですが、その結果として九万人の修道女が棄教し、また、全国の教会は混乱に陥ることになりました。これまで自分が信じていたものが覆り、自分が犠牲にしていたものが無駄になってしまった、という恐怖が、青春のすべてを捧げた、老いた修道女たちに襲い掛かるのです。これめちゃくちゃ怖いですよね。無宗派の日本人には感覚が薄いかもしれないけれど、いままで自分が立っていた地面があとかたもなく崩れていくような恐ろしさなのです。信仰は疑ってはならない、と繰り返すヒステリックな修道女がいい味出してます。

それとはまた別として、神のための、忠実で無垢な乙女になる為に自分の中にある無駄(とされているもの)をそぎ落としていく少女たちの苦しみや戸惑いも胸に迫ります。外界で人と馴染めず、人と育む愛を知ることが出来なかった少女が、神の愛に傾倒し、神の愛を求めていくが、それは結局人間が肌を触れ合わせ、言葉を重ねることで得られる愛とはまったく異なるものだった…という、性の目覚めや情動の悲しさもあり…。己が犯した罪への罰を乞う敬虔な少女たちの姿はとても痛ましい(また美しい)ものです。キリスト教に傾倒する娘を案ずる母も素敵でした。

ビジュアルもとてもきれいで、清廉とした修道院、そこに務める修道女たちの修道服の白と黒の色鮮やかさが映えています。特に神前で誓う時に着る真白なレースのドレスは、どこか艶やかささえ感じてしまいました。これは…肉欲…?(鞭を打つ音)閉ざされた箱庭の中で、遊びも肉体の悦びも知らずに神に仕え、祈りを捧げることこそが至上とされている世界の連なりと崩れ去っていく悲しさがありました。

あとDVD特典でマルチエンディングが用意されているのがめちゃオモロでした。映画にもマルチエンディングって用意できるんだな~。

女の子だらけの世界なので、いじめのシーンとかあったら怖いなと思っていたんですが、皆信仰に必死で他人を苛める余裕なんてないのでいじめのシーンは無かったのもよかったです。

日々のごはん代や生きていく上での糧になります