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『経営理念は企業理念の下層概念!?』  企業理念(ビジョン、ミッション、バリュー)や経営理念を整理してみた

メンバーのベクトルを合わせる

「会社を1つに…」「組織の力を結集したい」 のような声は、リモートワーク活用が推進される中、大きなものになると思います。

これは 「メンバーのベクトルを合わせる」 というもの。

実現の為に 「企業理念が大事」とか 「ミッションが…ビジョンが…」 とか「事業戦略が明確に…」 のような会話がされると思います。

ところが冷静に考えてみると、

「企業理念とミッションはどう違うのだ?」とか 「企業理念と経営理念って同じもの?」とか 「理念と戦略ってどっちが上位概念?」 のような疑問が浮かんでいるのではないでしょうか?

私自身、考える事の多いテーマでしたので企業理念や経営理念を整理してみました。


図にしてみると定義が曖昧な箇所に気づく


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部門戦略や戦術など 企業理念や経営理念よりも下層の概念とされる所まで含めましたが、世の中の考えを整理すると図のように表現できると思います。

イマイチよくわからない図ですね…

これは、図が複雑になっている為で 

原因は、「決着がついている点と未決着な点がある事」によるからだと思います。


決着がついている点

①企業理念 = ビジョン、ミッション、バリュー

企業理念は、ビジョン(ミッションを通して実現したい将来の姿、目指す姿)、ミッション(企業の使命、役割、実行すること)、バリュー(ミッションを行う上での指針、大切にする価値観)により構成。

企業理念の構成要素は、違う定義の主張もありますが、主流はこの「ビジョン」「ミッション」「バリュー」の3要素により構成される」というものでしょう。

②企業理念 > 戦略(全体) > 戦術(部分)

企業理念によって目標(ビジョン)や活動(ミッション)・思想(バリュー)が定義され、これを達成する為に戦略、戦術が存在。あるいは全体戦略、部分(部門)戦略が存在する。

この上位下位の概念の関係が  

企業理念 > 戦略(全体) > 戦術(部分) 

となる事も決着がついている点でしょう。

上位概念、下位概念としてはこの序列ですが、「思考や行動の順番もこの序列か?」と言うと必ずしもそうとは限らないと思います。
勿論、最終的に上位概念に対して包含される関係になる必要がありますが、思考・行動プロセスとしては下位概念が先もあり得ると考えます。
部分から先に考えて全体を構想する。 あるいは行動から始めて戦略を作る。というような事なプロセスです。

未決着な点は?

今度は未決着な点についてです。次の2点を決着させる事が整理には大事だと考えています。

①ビジョンとミッションはどちらが上位概念か?

②企業理念と経営理念の関係(同じものか? どちらが上位概念か? 経営理念は何を指すのか?)

まず①のビジョンとミッションのどちらが上位概念か? についてです。

これには 「ミッションが上位概念だ!」という主張 「ビジョンが上位概念だ!」という主張 「どちらが上位概念でも良い」という主張の3つが存在します。

ミッション上位派:ミッションは使命として現在から将来に渡って普遍的に実行する事、ビジョンはミッションを実行する中で辿り着く1つのシーン。その為、ミッションが起源であり上位概念である。
ビジョン上位派:ビジョンは将来実現したい姿であり目的そのもの、その目的を実現するための手段がミッション。目的と手段の関係なので目的であるビジョンが上位概念である。
どちらでも…派:「鶏が先が卵が先か?」 のような話であり企業としてどちらを上位概念とするかが明確であれば良い。強いて言えばより普遍的なものが上位概念。ビジョンが中間地点であればミッションが上位だし、ビジョンが最終目標であればビジョンが上位となる。

この件について私は、

ミッション上位派 > どちらでも…派 > ビジョン上位派 の順に主張している数が多い様に感じています。


次に②の企業理念と経営理念の関係(同じものか? どちらが上位概念か? 経営理念は何を指すのか?) については様々な主張があります。

実際、実在する企業の経営理念を見ても企業理念と経営理念の関係は様々ですし、その解釈は詳細に見ると多岐に渡るでしょう。
ただ、大雑把に分類すれば次の3パターンに分けられると思います。

(1)経営理念 > 企業理念 企業理念の上位概念として存在

(2)経営理念 = 企業理念 同じもの、あるいはミッションと同じ

(3)経営理念 < 企業理念 企業理念の下位概念として存在

こちらについては何か理由があるというよりも単に言葉の定義としての「決め」の問題ですから各主張の背景については割愛します。

このように「ビジョンとミッションの関係」と「企業理念と経営理念の関係」が明確では無い為、整理すると複雑な概念図が生まれてしまいます。

「定義が曖昧」
この事実を認識されていない事で、議論が空中分解してしまう事や噛み合わない事があるのではないでしょうか?

未決着な点を自分なりに決着させてみた

未決着な点がある事は認識しつつも、整理されていない図は理解しにくいので私なりに決着させたのが下の図です。

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ビジョンとミッションでは「ビジョン」を上位概念とし、

「経営理念」については企業理念とは別物かつ企業理念の下位の概念と定義しました。

ビジョンが上位概念である理由

ビジョンが上位概念である理由は、ビジョンが未来の目指すべき姿である事から、これをゴール(目標)と考えるべきだと思うからです。

その場合、ミッションは目標達成する為の手段です。目的と手段の関係からビジョンをミッションよりも上位概念と捉えるべきだと思います。

「ミッション = 使命」 と捉えた場合も使命の先には「成し遂げて創りたい世界」があるはずです。そうすると、やはりゴール(目標)はビジョンでしょうから上位概念はビジョンとなると思います。

「ミッションはやり続ける事ができるが、ビジョンは達成したら終わってしまうではないか? より普遍的であり、存在意義となるのはミッションの方だから、やはりこちらが上位概念ではないか?」

という意見もあるかもしれません。

これについては、「では、目標を達成した後にミッションを続ける意味があるのだろうか?」と問いかけたいです。

本人の楽しさなどはあるかもしれません。しかし、自己満足の世界であり「使命を担っている」と、果たして言えるものなのでしょうか?

「目標達成した姿を維持する為にミッションを普遍的に続けることが必要な事もある」という意見もあるかもしれません。
でもこの場合は、「目標維持の手段」にミッションを使用しているように思います。

やはりビジョンがミッションの上位概念だと思います。

「それではビジョンが達成されたら組織の存在意義がなくなってしまうではないか? そんな時限的なものが理念で良いのか?」 という意見もあるかもしれません。

これについては、「その場合はその組織は役目を終えて、形を変えるのでないか?」と考えています。 
ですので、その組織が「存在する限り」普遍的なものがビジョンという未来の瞬間の姿。このビジョンこそがミッションよりも上位概念になると思うのです。


僕の考える経営理念の位置付け

もう一つの未決着な点は、経営理念の位置付けです。

僕は、「経営理念は、企業理念(ビジョン、ミッション、バリュー)とは別物企業理念の下位概念として位置付けるべき」と考えています。

別物である理由は単純に言葉として別物だからです。同じもので良ければ混乱させるだけなので、1つの言葉を使うか単純に「理念」でまとめるべきでしょう。

しかし、違いを表現できないからこそ理念の前に「企業」「経営」という言葉が付けられていると思うわけです。

そしてこの「企業」と「経営」という言葉に焦点をあてると、どちらが上位概念と位置付けるべきか答えが出るように思います。

ではそもそも理念とはどういう意味でしょうか? 辞書には、

ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え

と記載されています。
この事から企業理念と経営理念はそれぞれ次のようになります。

企業理念:企業についての根本の考え
経営理念:経営についての根本の考え

つまり、企業理念は企業の在り方についての考えであり、経営理念は経営の進め方についての考えという事です。

企業の在り方は、存在意義ですから一度決めたら余程の事が無い限り変更する事の無い普遍性の高いものだと思います。

一方、経営の進め方は、経営者が変われば経営方針が変わる事もあるでしょう。つまり、経営者による影響が大きく企業理念に比べると普遍性は低いと言えます。

また、「何の為に経営するか?」 「何の為に経営の理念を定めるか?」 と言うと企業活動をする為でしょう。
この関係性から経営理念は、企業理念との関係では、手段の関係にあると言えるでしょう。

そして、「経営者が変わると企業理念が変わるのか? 変わって良いのか?」 と考えると

多くの場合、「(簡単に)変わってはいけない」と答えるのではないでしょうか?

経営理念は、あくまでも企業理念の影響下で定められるべきでしょう。

このような事から僕は、「経営理念は企業理念の下位概念」と位置付けました。

企業理念を浸透させよう

「企業理念を浸透させよう」 長々と文章を書き、図を整理したのは、この想いからです。

企業の力を頼らずとも個人で生活がしやすくなった今の時代、企業の一員として働く事の意味は、共通の目的を達成する為に集まるという事だと思います。
テレワークが活用され空間距離として離れ、従来のままでは一体感を得にくくなった今の時代、ウェブの利用などもありますが精神的な結び付きを強める事も大切だと思います。

この環境下、今の時代においては冒頭にも書きましたが
「メンバーのベクトルを合わせる」事が大事だと思います。

そしてベクトル合わせの実現の為には「企業理念の浸透がとても大切」だと考えています。

同じように考えている方、感じた方にとって、この整理が一助になれば幸いです。

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