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免許更新

運転免許を取得してから、3回目の誕生日。

ついに初回免許更新のタイミングがやってきた。
なんとか無事故無違反でここまでやってこられたので、本免試験以来の調布試験場である。

免許の更新は昨日済ませてきた。
僕の誕生日は6月末であり、更新期間はその前後1ヶ月なので、実を言うとものすごくギリギリのタイミングだったのだ。

ただでさえギリギリのタイミングにもかかわらず、選んだ講習の時間帯はその日の1番最後、午後に行われる時間帯だ。


そんな怠惰な僕の様子に、神もお怒りだったのだろう。


武蔵小金井駅に降り立った僕を待ち受けていたのは、天変地異を目論むかのような暴風、豪雨、そして雷。

しばしば比喩表現で「横殴りの雨」というワードが使われるが、昨日の雨は本当に横から降っていた。

雨粒が、地面と水平に飛んでいる。

横殴りどころか、タコ殴りにしてしまおうかと言わんばかりの威力だ。


幸いにも駅には少しだけ早く到着していたので、お目当てのバスに乗り換える頃には、タコ殴りのゲリラ豪雨も雨雲ごと東へ逃げていった。

その絶賛猛々しいドス黒い雲を見ながら、僕は思った。


「あっちの方角、僕の家だなぁ」


目を瞑ると、瞼に浮かぶはさっき干してきたばかりの洗濯物。

目を開くと、眼前にはヒビ割れのようにくっきりと現れる稲光。


絶対に無事じゃない洗濯物を想って、僕は肩を落とした。


免許センターに着くと、もてなしの微笑か、あるいは嘲笑なのか知らないが、これでもかというほど日差しが差し込んでいた。

無事に視力検査もパスし、手数料も払い終え、約2時間ある講習に耐えると、ようやく新しい免許証が手渡された。


新免許証にプリントされた自分の顔を眺める。

無様なほど不機嫌そうな顔をしている。

そしてフレッシュなグリーンだった免許は、心模様を映し出したかのようなブルーに変わった。


家に帰ると、どうしてしまったのか尋ねたいくらい、物干し竿に巻き付いたバスタオルがベランダで僕を待っていた。


きっと、雨粒にタコ殴りにされる恐怖の中、必死に竿にしがみついていたに違いない。


いつか必ず、晴れ渡るほどの笑顔を携えた、ゴールド免許を手に入れようと心に誓った。

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