見出し画像

雨の日はパリジェンヌ

雨の予報だった。
出かける前は曇っていて、帰る頃には雨が降る予定。違う天気予報を見れば、ギリギリやんでいるかもしれない。

自転車で行くか、歩いていくか、バスで行くか。自転車が一番速くて、バスは楽だけどお金がかかるし、ちょっと長い道のりを歩く体力は今日はなかった。

空は曇っているし、お腹も鈍痛だ。プラスチックゴミをだすのを忘れたことに帰ってから気がついた。

中学・高校と自転車通学だったので傘を持っていなかった。持っていなかったというか、持っていたのだけどほとんど使わなかったし、いつのまにか傘壊しの達人の妹に骨を折られていた。

雨の日、高校の昇降口から自転車小屋までは少し距離があった。部活のみんなで一つ二つの傘にわいわい入り肩を濡らした。今では密になるのかな。相合い傘が昔のものになるかもしれないなんて、傘も思っていなかっただろう。またあの距離感で会いたい。

合羽を着ても自転車を漕ぐとフードが風で脱げて頭や顔はびしょ濡れになる。合羽から脚を伝いローファーの中に雨水が溜まる。自転車をとめて玄関に行くまでの足音はどちゅどちゅ。

合羽は気休めなので引っ越す時に置いてきた。乾かすのも面倒だし、大きい。

今は傘を持っている。だから今日の選択は徒歩かバスで、行きと帰りで変えるのもありだなと思っていた。

お弁当を作ってお化粧をして、外を見た。今にも降りそうだけどまだ降ってない。授業を受けたら帰るだけ。そう、帰るだけ。

だったら自転車行って、帰りは濡れて帰ればいいじゃない。

どこかの私がそう言った。

自転車だから傘も要らないかと思った。邪魔だし折り畳み傘もあるけど、いいや。

授業終わり、外に出ると思ったより雨が降っていた。自転車置き場に行くまでにずぶ濡れで、お腹が冷えて痛かった。

パリジェンヌは雨でも傘はささない。

そう。もう私は帰るだけで、誰かに会うわけでもない。いっちょ気持ちよく雨に濡れて帰るのだ。

雨で顔が濡れるのを手で防がず、前髪もないので気にせず、少し寒いけど颯爽と。でも小走りではなく。

私、雨になんて気にしないもの。

そんな感じでいつもより胸を張って歩き、容赦なく降り付ける雨の中を自転車でかっ飛ばした。

結構寒かった。

水が伝って前が見にくい。

眉毛が半分消えていた。

でも心はパリジェンヌ。春の雨を浴びて、身も心も洗われよう。

しかしもう大人なので、わざと傘をささずに雨に打たれて風邪を引いたらかっこ悪い。帰宅してすぐにお風呂に入った。冷えた身体がじわじわと温まり、雨に濡れるよりも綺麗になっていく気がする。

これから梅雨を迎える。可愛らしいレインコートか、長靴かを買ってみたら濡れずとも雨を楽しめるかもしれない。

それでなんだかどうでもよくなったら、また雨に濡れてしまおう。

この記事が参加している募集

部活の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?