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香りと距離

葉巻、シガー
強烈な芳香のたばこ。
独特の文化を持ち世界中に愛好家が存在します。
普段はたばこは喫わないが、シガーは喫う。
という方もいらっしゃる程の魅力を持ちます。

試験管のような筒状にバンド、リングと呼ばれる
物が巻かれており、ブランドや銘柄を表します。
非常にかっこいいです。
そして独特の香りをもちます。
いわゆる…くさい。
慣れてくるとこの臭さでさえも愛おしくなりますのでご安心を。
そしてこの独特の臭いが火を着けると匂い、香りへと変わっていきます。

そんなシガーですが、よくあるご質問に
「肺に入れてはいけないの?」
というものがありますが、今回はこれに関するお話です。


 ここは日本のどこか、とあるキャバクラがあります。
開店時間は20時、閉店は24時です。
ラストオーダーは23時半、ご延長は23時まで、
といったところでしょうか。

お店で働く彼女たちは、その日にお見えになるであろう
ご常連の好み、その日の気分、自分に似合う色などから衣装を選びます。
彼女たちはお店のお花ですから、
目に鮮やか、驚きを与えるような柄とデザインの衣装を身に纏います。

そして、お花のもう一つの特徴、

「香り」

おしぼりにいい香りが施してあったり、
渡す名刺にも少し香りが移っていたり、
お店のお花たちもそれぞれのセンスで好みの香りを纏います。

20時、開店の時には彼女たちの纏う香水は強烈に香り立ちます。
隣にいると物凄い香りの強さを感じ、香りに押される感覚を受けます。
席を離れても誰がいたのかわかるレベル。

21時、今日はお客さんが入れ替わり立ち代わりでご来店。
バタバタしていて忙しい、お化粧を直す暇もありません。
香水も体温とうまくなじんで香りもやや弱まっていきます。
それでもまだ隣にいるとはっきりした香りを感じるレベル。

22時、ちょっと疲れが出てきました。
お客さんのたばこの香り、お酒の香り、
香水はお店と自分の汗や体臭となじんで穏やかになります。
隣にいると香りは穏やかですが動作を伴うと香りが立つレベル。

23時、最後のテーブルです。
あと一時間ですよ、がんばって。
入れ替わり立ち代わりなので動きまくりますが、
動作があっても一瞬香るくらいで、
隣に座って少し香りがわかるレベル。

24時、最後のお客さんをお見送りして終了。
汗と体臭と体温で当初のきつさは相当薄れ、
香りはわずかに残るだけ、自分自身の香りもよくわからないレベル。
そばに寄って少しわかる程度のうっすら漂ういい香りになりました。


このようなことから、彼女たちの香りの強さは時間的な距離をもって薄れ、
自分自身と一体となった香りに変化していったと言えます。

シガーを楽しむためには時と場所を選びます。
ゆえにそれは特別な時間になります。

煙に物理的な距離を与えることで味や香りを近づけたり
遠くしてみるのも手段の一つで、煙をそのまま鼻へ通してみたり、
煙を舌の上で転がしてみる、むせない程度に吸い込んで鼻から、
口から煙を出してみる。
これだけでも舌の奥で感じる味、鼻の奥に残る香りがあるはずです。
シガーを味わい尽くす手段の一つですね。

シガーは決して安いと言えるものではありません。
あれだけ高い高いと言われているシガレットなどと比べても
値段が倍以上する物がゴロゴロあります。

特別な時間を灰にしてしまうなら、この一本を味わい尽くしてほしい。

そのためには肺へ入れる入れないというのは正解、不正解ではなく、
味わう目的のための手段として考えていただくと
あなたの人生に少し楽しい変化が起きるかもしれません。

という願望。






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