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なろう作家が分析! ここが面白い「がっこうぐらし!」

今回はこちらの動画のテキスト版になります。

こんにちは、染島です。今回は初のマンガレビューです。

今回紹介するのは、『がっこうぐらし!』という作品です。
もしかしたらタイトルだけは聞いたことがある、という人もいるかもしれませんが、そんな人でも興味が持てるよう小説書きの視点から紹介していきたいと思います。

個人的に面白いと思ったポイントを分析してまとめました。

1.キャラクター
2.衝撃の第1話
3.正反対なトレンドの融合
4.極限状態における人間の醜さ+学園生活部の純粋さの対比

以上4つのポイントごとに、面白さを解説していきますが、まずは簡単にストーリーの概要に触れていきます。

『がっこうぐらし!』とは?

がっこうぐらしは2020年1月に完結した漫画原作の作品で、2015年にはアニメ化、2019年にはなんと実写映画化までされた作品です。
自分はアニメからこの作品に入ってその後原作コミックを読みました。実写映画はごめんなさい、見てません(笑)

そんなわけで、今回は原作のコミック版のシナリオを基準にして紹介していきますが、この物語を一言で表現しますと、

『ゆき、みーくん、くるみ、りーさんの4人を中心に「学園生活部」の日常を描いたハートフル「ボッコ」コミック

はい、これは間違いではありません。ハートがフルボッコにされる、見かけによらず想像以上にヘビーなお話でございます。
どういう意味なのか? 極力ネタバレを回避する形で先ほど紹介した5つのポイントに沿って掘り下げていきたいと思います。

1.キャラクター

まず1つ目の魅力がキャラクターです。
ではこのキャラクターの何がいいか、「学園生活部」に所属する登場人物の紹介も含めて解説していきます。

①ゆき/丈槍 由紀(たけや ゆき)
まず1人目がゆきです。帽子がトレードマークのキャラクターです。
彼女は4人の中のマスコット的存在で、周囲に癒しを与えてくれます。いきなり突拍子もないことを言い出してみんなからツッコミを受ける、いわゆるボケタイプです。

②くるみ/恵飛須沢 胡桃(えびすざわ くるみ)
4人の中では最も運動神経に優れた体育会系です。ツインテールの髪型とよく手にしているスコップがトレードマーク。
その身体能力を活かして、危険な場所にも真っ先に飛び込んで対処できるアタッカータイプで、ゆきのボケに対するツッコミ役です。

③りーさん/若狭 悠里(わかさ ゆうり)
実質的に学園生活部を執り仕切っている、お姉さんタイプのキャラクターです。
部活のブレインとして食料やライフラインの管理などのマネジメント面には長けていますが、緊急時など臨機応変な対応を求められる状況は苦手です。

④みーくん/直樹 美紀(なおき みき)
主要キャラの中で唯一後入りで加わった、学年的にも他のキャラより一つ下の後輩キャラクターです。見た目は色素薄めの女の子。
クールで毒舌家なもう1人のツッコミ役です。りーさんに近い頭脳派寄りのキャラですが、彼女はとっさの機転が利くタイプです。なので、場合によってはくるみの代役を務めることもあります。

このように、各キャラクターそれぞれが個性的なのはもちろんなんですが、その割り振りが絶妙なんです。
それぞれの個性がはっきり区分されているので役割分担が明確で、読者はキャラクターを覚えやすいです。
やはりわかりやすいキャラクター造形は大事ですね。

2.衝撃の第1話

やはり、この作品を語る上で欠かせないのが全ての読者を驚かせた第1話です。力技とも言えるプロローグの掴みで、アニメ版放送の際も一躍話題作となりました。
この第1話でのポイントは「視点の切り替え」です。

最初、第1話はごくありふれた日常的な学校の描写から始まります。しかし、それはある1人称視点だけから描かれた描写です。

しかし、第1話が終わる直前で、視点が3人称に切り替わります。
すると、見える世界が180度変わります。今まで見えていなかった、まさかの舞台裏が明らかになるんです。そこで読者は初めて、物語の舞台が生と死の隣り合った荒廃した環境だったと知ることになります。

これで読者の注目を一気に集めた本作ですが、実は2年前、これと全く同じ手法で、さらに奇しくも共通するモチーフを扱った1本の映画が爆発的な成功を収めました。
それが、『カメラを止めるな!』です。


日常シーンが先に来るか後に来るかの違いはありますが、同じような視点の切り替えを使ってストーリーの面白さを引き出しています。この2作品を見て、比較しつつ楽しんでみるのも面白いかもしれません。

3.正反対なトレンドの融合

本来交わるはずのないトレンド同士を融合させたという点も、『がっこうぐらし!』の特徴です。
この作品は、いわば「日常系」に「サバイバル」要素を加えた作品となっています。

「日常系」といえば、『がっこうぐらし!』の連載されていた漫画雑誌レーベル『まんがタイムきらら』系列のお家芸といえるジャンルです。ゼロ年代半ば〜後半にかけては『ひだまりスケッチ』や『けいおん!』など、日常を描いた人気作を多数輩出し、「日常系」というジャンルを確立させました。

しかし、2010年代からはその日常系ブームに反発するように、新しいムーブメントの流れが起こります。それが「サバイバル」です。

例えば、別冊少年マガジンで爆発的なヒットを飛ばした『進撃の巨人』や、先程紹介した『ひだまりスケッチ』の作者・蒼樹うめ先生がキャラデザを担当した『魔法少女まどか⭐︎マギカ』など、巨大な敵を相手に生きるか死ぬかの戦いを繰り広げる作品が話題となりました。

また、同じく2010年代のゲーム界でも『PUBG』や『Dead by Daylight』といったサバイバル色の強い作品が売れるようになりました。

そんなムーブメントの変遷の中、『がっこうぐらし』は日常系の系譜を受け継ぎつつ、対極にあるサバイバルやパニック・グロテスク要素というもう1つの流行も力技で取り入れたことで、唯一無二の作品としての面白さを築き上げたと言えます。

4.極限状態における人間の醜さと、学園生活部の純粋さの対比

物語が進むにつれて、少しずつ登場人物が増えてきます。
新たな心強い仲間とも出会いましたが、その一方で起きたのは派閥ごとの争いと仲間割れです。
さらに、世界の荒廃した原因も見えて来るわけですが、原因が人為的なものであること、さらに背後で巨大な組織が動いていたことが明らかになります。
結局、全ての原因は人間にあったんです。

物語の終わりが近づくにつれ、どんどん世界の穢れや暗部が見えてきます。見るに堪えない争いや、グロテスクな描写も増えてきます。
しかし、そんな状況の中でも、ゆき達学園生活部の面々はぼろぼろになりながら、純粋さを保ったまま生き残ろうと奮闘します。
そして、そんな暗い状況だからこそ、その純粋さが際立ちます。汚れきった世界の中の希望として、それぞれ4人のキャラクターがまぶしく映るんです。読者は、そんな彼女達を全力で応援したくなります。

最終巻では、ついに彼女達は世界を救う鍵を握りますが、精神的・体力的に最も苦しい戦いを強いられます。

その中で、果たして彼女達学園生活部は全員で生き残ることが出来るのか?
世界を救うことができるのか?

その結末は、是非原作コミックを読んで自分の目で確かめてみてください。

最後に

最後になりますが、なぜ今回この作品をレビューしたかと言いますと、6/24からは後日談となる『がっこうぐらし! 〜おたより〜』の連載が『まんがタイムきららフォワード』で始まります。

このタイミングに是非、『がっこうぐらし!』に触れてみてはいかがでしょうか?


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