見出し画像

パントマイムって喋ってもいいの? #12

パントマイムって喋ってもいいの?
これは様々なパントマイム作品を観た方であれば、ふとよぎる疑問ではないだろうか。

パントマイム=無言、無声

が当たり前。喋るのはNGのような気がする。いや、でも、結構喋ったりしてる作品もあるし‥そこのところどうなのだろう。

結論から言えば”喋っても良い”である

どのような場面において言葉を用いるのか、また、言葉を使うことがどのような意味合いを持つのか。サッカー選手が手を使っても良いのか?というような比較とは全然違う。パントマイムにおける言葉の意義を考えていこう。

目的に沿って考えてみる

感情論とか好みは抜きにして、目的に立ち返るならば、こちらの記事に書き記したように、パントマイムの目的とは【観ているお客さんを楽しませること】にあると思う。

楽しむとは《笑い、泣き、驚き》を提供するということだ。
その為に必要な要素に、脚本があり、演出があり、テクニックがあり、演技がある。そして、衣装や、小道具と、細分化していく項目の中に、要素として”言葉”というものが存在している。

例えば演劇において、”楽しむ”を提供するために欠かせない要素がある。それは脚本であり、演出であり、演者、そして台本に記された《台詞》だろう。演劇においては言葉はもの凄く重要で、脚本に沿って緻密に台詞を構成していく。その台詞をどのように表現するか、どのように言葉を扱うかで、演目が楽しめるかどうかに大きく影響を与える。演劇においては必須項目として《台詞》があるということだ。

では、一方パントマイム作品においてはどうだろう
前述したように【観ているお客さんを楽しませる】という目的に沿った場合、台詞なしでも成立する作品が沢山ある。むしろ、台詞がないからこそ、想像力を掻き立て、物語に引き込む事が出来るように作られている作品は多い。言葉を用いず、身体表現と空間美術のみで非日常の空間に誘う。完成している料理にハチミツをぶちまけるような味付けはいらない。そこで完成している作品において、言葉は蛇足であり、不純物となるのだ。

”要素”として扱うもの

しかし、例えば路上での大道芸だったり、大衆演劇やイベントにおける一つの盛り上げ役としての役割であった場合どうだろう。

この空間においては、なかなかお客さんの集中力が続くような環境では無かったりする。目的は何度も言うが【観ているお客さんを楽しませること】だ。効果的に目線をひきつけ、パフォーマンスの世界に引き込む要素として、無言、無音より言葉を用いる方が有効である場合は多い。

つまり、目的に沿って語るのであれば、言葉や台詞を用いることによって、よりお客さんが楽しめる方を選択すれば良いということではないだろうか。演劇やその他のパフォーマンスにおいて必須である言葉や台詞が、パントマイムにおいては”要素”の一つとなる。効果的なのであれば使った方が良いし、使わない方が魅力的なら使わないという選択をすれば良いのだ。

台詞と擬音

これはしっかりとした台詞だけの話ではない。
パントマイム演目においては擬音や言葉にならない声なども扱う事がよくある。あっ!とか、くっ!とか、うーん‥などの擬音、ふとした瞬間に意味のある言葉だったりを織り交ぜる。

前提条件として《パントマイム=無言、無声》というのは、大衆の中でも何となく認知されている。なので、無言であるはずの演目の中で、不意に意味を持った言葉が出てくるから笑えるのだ。そして、擬音を用いることによって、現在何を表現しているのかという代償表現もしている。

つまりパントマイムにおける分かりづらいところを無くし、今何をしているのかという情報を明確に素早く理解させ、演目の感情の部分に集中出来るよう促してくれているということだ。ジェスチャーマイムを用いたり、このような擬音を多めに使うことも、シンプルにエンタメとして楽しんでもらう。パフォーマンスの世界に引き込む為の必要な要素として、活用しているということなのだ。

理解して用いる

これはステージ作品でもそうだ。効果的であるならば台詞を用いて構成する。演出として台詞があったほうが伝わるならば使えばよいのだ。より笑えて、より泣けて、より驚ける方へ、楽しんでもらうという目的を達する為に、パントマイミストは台詞を使うかどうか、擬音を用いるかどうかを判断していく。

注意しなくてはいけない事は、理解し、効果的かどうかを判断して扱っているかどうかということだろう。

パントマイムは無声であることが大きな魅力の一つである。言葉が無いのに感情が伝わり、心動かされるから感動するのだ。情報や説明として言葉を乱用してしまっては、最大限の魅力の一つが殺されてしまう。また、言葉無しでは何も伝える事ができないという、未熟さの体現ともなるだろう。

パフォーマンスを行う場所、その際の役割や目的、自身のキャラクターや演目内容、そして、構成として意識的に使い分けていくことを忘れてはならない。

伝える、伝わる、楽しめる

演劇やその他のパフォーマンスにおいて必須である言葉や台詞が、パントマイムにおいては”要素”の一つとなる。効果的なのであれば使った方が良いし、使わない方が魅力的なら使わないという選択をすれば良い。

パントマイムだから使ってはいけないと意固地になる必要はない。
大御所でも台詞や言葉を匠に扱って、物凄く魅力的で面白い作品を披露されている。また、自身の師匠の師匠であるヨネヤマママコ女史も【パン歌語】という言葉を残されている。

【パントマイムと歌と語り】という意味だ。
それらをすべて融合させ、美しくも楽しく、芸術的な作品を作り上げていらっしゃる。

パントマイミストとして言葉を用いずに表現しきる研鑽や努力は必要だ。何をしているのかを伝えようとする余りに、言葉過多になってはいけない。マイムで表現している部分を言葉で補ってしまっては二重説明になる。

言葉も擬音も効果的に扱って
誰もが楽しめるパフォーマンスになるのが一番だ。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?