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事件簿 ④ 食べなくても危なかった事件

除去生活中のハプニングをお伝えする、事件簿シリーズ。今日は「食べなければいいんだ」と思っていたら、間違っていたことについて書きます。前半調理中の素手での接触湯気・煙の吸い込みの危険について、後半は、家庭でアレルギーのある食品を他の家族のために調理する方へのアドバイス、そして医療関係者の方々へのお願いを書きます。


1. 発端

アレルギー発症後、外食もできなくなり、家族の食事にも大きな影響が出ました。「私のせいで申し訳ないなぁ」「家では好きな物を食べてもらいたい」と思い、自分用の除去食と家族用の普通食を、できる範囲で作っていました。
なので、診断前後で変わらず、魚を買ってきて、素手で内臓を取って焼き魚を作ったり、豚・鶏肉を素手で触って包丁で切ったり、圧力鍋で煮込んだり、数時間オーブンで焼いたり。

ギョーザコンタミ事件
以降は、普通食が除去食にコンタミしないように気を付けていました。鍋やまな板をしっかり目に洗うお箸や皿を別にする、電子レンジで温める際には、食材が飛び散ることがあるので、一緒に温めないなど。でも、手袋は面倒で、魚介・肉のエキスがしっかりついた鍋、鉄板、まな板等を、素手で洗っていました。

a. 手が真っ赤に腫れる

当時、よく左手が水風船のようにぱんぱんに腫れました。左手結婚指輪は、除去開始から1年はつけられず、時計も左から右手首に移動しました。

安全な食物しか食べていないのに、手が腫れる。やっぱり、アレルギーのせいだけでなく特発性(原因不明)の血管性浮腫もあって、腫れてるのかな?と思っていました。

b. コンロ・オーブンの前で息苦しくなる

そして、台所のコンロやオーブンの前で長時間調理すると、喉が腫れたり、胸が息苦しくなり、「なんだか、台所にいると息苦しくて、喉も腫れる」「隣のリビングで少し休んでくる」ということが、何度も起きていました。

ネットで調べると、喘息温度変化も発作の原因になると書いてある。そのせいなのかな? でも、なぜか台所だけで起こる。暑い日に、玄関から外に出た時、2階の暑い部屋に行っても、具合は悪くならない。家族と「不思議だね~」と話していました。

2. 原因究明

a. 経皮感作

除去開始から数か月後、アニサキスの方々のSNSを見ていた所、和食の調理師の方が、コロナ後に魚を捌く機会が増えたら、アレルギー症状が悪化したという投稿が。「えっ、ちょっと待って、触るのもダメだったの? 毎日、めっちゃ触ってるんだけど」。ネット検索すると「経皮感作」が出てきた!

経皮感作:アレルギーの原因物質が、皮膚のバリアを通過して、表皮や真皮に侵入。免疫細胞と反応して感作が起こり、食物アレルギーが進行することもあると書いてありました。更に、「経皮」と「経口(食べる)によるアレルゲンへの暴露では、「経皮」の方が食物アレルギーになるリスクが高まるという記述も。

この時の気持ちです。「ショックだ、誰も教えてくれなかった。こういう大切な治療のための情報を、なんで自分でネット検索しないと得られないの?😡

推測の域ですが、左手が多く腫れていたのは、私は利き手が右手で、右手で包丁を握り、左手で魚介・肉類を素手で触っていることが多かったからかもしれません。または、特発性で、理由なく左手ばかり腫れていたのかもしれません。

b.煮炊きの湯気や煙の吸い込み

除去開始後11か月後、アレルギーについてのあるYouTubeを見ていたら、職業上、煮炊きの湯気・煙を吸ってアナフィラキシーを発症された方の症例が紹介されていました。

またまた衝撃!「えっ、また? 触るだけでなく、今度は、煮炊きの湯気や煙もだめだったの? 」。早速、ネットで検索してみることに。
すると、そば・うどん屋さんが、麺をゆでる湯気でアナフィラキシー、小麦アレルギーの診断になった例や、卵アレルギーのお子さんが、ゆで卵の調理実習中、湯気で気分が悪くなった例など出てきました。
その日の家族と会話です。
:「焼き魚したり、豚・鶏を圧力鍋で煮たり、オーブンで焼いていると、よく具合悪くなるでしょ。調理中にアレルギー物質を吸ってるからかも。どう思う?」
家族:「えっ。。。湯気とか煙も危ないなんて、想像できなかった。これからは、調理の時はよく換気しよう。魚介・豚・鶏は、自分ができるだけ調理するようにするから
私:「味見ができなくなっただけでなく、調理もごめんね」

この時の私の気持ちです。「約1年間、食物の除去を頑張ってきた。それなのに、後出しジャンケン方式で、治療に大切な情報が次々と出てくる。それも自分でネット検索しなければ、一生知らなかった。最初にきちんと、注意すべき事を言って欲しかった😡

調理時の湯気や煙が、台所での私の喉の腫れや息苦しさの原因か、確証はありません。でも、気をつけるようになってから、台所での調理中に、一度も症状は起こっていません。全体的に症状が改善していった時期だったので、湯気や煙とは直接関係なかった可能性もありえます。

3. その後

食物の除去、経皮接触、調理中の湯気や煙に気を付けて、現在、手の腫れは全く出なくなりました。結婚指輪も無事に左手に戻りました、イェ~イ!
指も動かしやすくなり、PCのキーボードも不自由なく打てるようになったり、自転車のブレーキも普通に握る事が出来るようになりました。たかが手の腫れと思われるかもしれませんが、不便な事が多かったです。
手がよく乾燥していたので、今まで面倒で使っていなかった、保湿剤やハンドクリームもよく塗るようにしています。手以外の体の乾燥している部分にも、入浴後保湿し始めました。
台所での湯気・煙対策開始後の翌月から、呼吸が好調になりました。月に4-5回、SpO2が88-95%になる問題も突然なくなりました。ピークフローも70-80%が半年以上続いていたのが、突然95-100%にアップ。この時期、抗ヒスタミン薬の変更をお願いしたので、薬の影響の可能性や、全体的に炎症が引いていった中でよくなった可能性もあります。

4. 患者さんへのプチアドバイス

食物・食物関連アレルギーの同胞の皆様へ。家族のために、アレルギーのある食品を調理しなければならない場合の、プチアドバイスです。

a. 手袋の利用

使い捨て手袋・洗い物用の手袋を、便利な場所に設置。アレルギーのある食品を触る時洗い物をする時などに、直接肌に触れないよう面倒だけどつけてね! ラテックスアレルギーがある方は、手袋の素材にもご注意を。

b. 処理サービスや処理済み商品を利用する

経皮接触を防ぎ、調理の時短も達成できる、一石二鳥の便利なサービスや商品がないか探してみて下さい。例えば、

  • 魚介:スーパーで無料で魚を捌いてくれるサービスを使う、冷凍のエビ・ボイルアサリ・シーフード(触らずそのまま使える)

  • 鶏・豚肉:既に小さく切っている商品(例 唐揚げ用、こまぎれ)

c. 皮膚のバリア機能を保つ

皮膚のバリア機能を保つため、保湿は大事。食物アレルギー発症を機に、逆に「肌がしっとり、きれいになったね」と言われるようお手入れしましょう。私は最近1人のお友達から褒められました! 保湿剤でアレルギーが出る場合もあるので、アレルギーが出にくい商品がおすすめです。

c. 調理中の湯気・煙・吸い込みに注意

心配な方は、ご自身の症状の場合、どの程度なら大丈夫か、医師に相談してみて下さい。特に制限がない場合も、換気と、長時間調理しないよう、お気を付け下さい。私のように、アレルギー食品の長時間調理は、家族にお願いしてしまうのも一つかもしれません(ごめんね、my家族)。
調理する方にアレルギーはなく、ご家族にアレルギーがある場合も、症状や家の構造によっては(例 リビングキッチン一体型)、アレルギー食品の調理の際、アレルギーのある方に他の部屋・離れた場所にいてもらう、換気に気を付ける等、必要な場合もあるかもしれません。

5. 医療関係者の方々へのお願い

食物・食物関連アレルギーの治療に携わる医療関係者の方々に、お願いがあります。
コロナの影響で家庭での調理が増えたのに加え、食物アレルギーの診断後、家で調理・食事する回数が増える患者さんも多いと思われます。
特定の職業(飲食・食品加工・調理等)や趣味に関係のない、一般の成人の食物アレルギーの患者さんでも、家庭での調理で経皮暴露、煮炊きの湯気・煙の吸い込み等が起こる可能性は十分あると思います。
症状が重い患者さんには特に、診断時に、食物除去の指導だけでなく、生活上の注意点として、調理の際の経皮接触や湯気・煙の吸い込みについても注意喚起して頂くことをご検討頂ければ幸いです。

6. 事件簿シリーズ終了

2週間前に始めたこのブログ、たくさんの方に読んで頂いて嬉しいです。事件簿シリーズでは、無事診断が出た後も、様々なハプニングが起こる。成人の食物アレルギー患者さんたちは日々、試行錯誤していることを、私の例を通じてお伝えしたいと思い書きました。
小児食物アレルギーについては、ヒヤリハット事件、ミニ失敗談対処法など、具体的な事例・情報が多くあって分かりやすいですが、成人の食物やアニサキスアレルギーは、情報があまりなく、孤独な手探り状態のことが多いんです。。

そろそろ事件簿は卒業し、違った話題を書こうかと思っています。食物アレルギーの患者さんの環境を少しでもよくできればと、今後も気持ちを込めて、ブログを書いていきたいと思います。引き続き、応援宜しくお願いします。

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