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【連載|シオクリビトが出来るまで】vol.1 ECらしさを捨てたEC?

こんにちは。スマイルズ クリエイティブ本部の吉田剛成です。

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先日、私たちがプロデュースした福島県商工会連合会の地域産品ECサイト「シオクリビト」がローンチしました。(10月からティザー公開しておりましたが、この度本公開)

2021年の春にご相談をいただき、急ピッチで企画・制作を進めてきました。ロゴデザインとWebサイトの実装は外部のパートナーさんにお願いしていますが、それ以外の企画・コンセプト・Webデザイン、取材・撮影・編集は全て自分たちで行っています。本当に本当に、ついこの間まで制作作業をやっていて、まだかいた汗が引いていない今日この頃です。

さてさて、シオクリビトってどんなサイトなの?という方へ。
まずは実際のサイトをご覧ください。

解説付きでご覧になりたい方は、スマイルズのクリエイティブチームの実績ページを見ていただけると嬉しいです。

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トップページが無かったり、全然商品が出てこなかったり、本文が読み込む度に変化したり、検索ページが不思議だったり・・・正直不便なところもありますが、1つの信念を貫いて企画設計を施しています。通常のECサイトと比べると戸惑うところばかりかもしれませんが、さまざまな機能をなげうってでも生産者さんの記事に焦点があたるようにしたかった強い思いがあるんです。(とはいえ、色々と改修はしていく予定です)

20回、45社、150時間、10,000枚

いま振り返れば、もっと効率的なやり方があったんじゃないかな(苦笑)と思うところもたくさんありますが、主に4名のメンバーで延べ20回福島県に通い、45社の事業者・生産者さんと出会い、およそ150時間のインタビューを実施、取った写真は(しかも写ルンですで)10,000枚を越えました。※取材撮影の裏話は追って詳しくご紹介いたします。

その分、愛情はたっぷり。ローカル番組を見ていても知っている人が登場する、福島県に行く人がいればおすすめスポットを紹介したい、2週間福島出張が無いと寂しい気分になる、そのくらいプロジェクトが自分ごとになっています。

福島県商工会連合会は、東日本大震災、台風災害、そしてコロナ禍にも負けず前向きに努力する小規模事業者、中小企業を日々応援されています。今回は福島の生産者さんを応援する新たなEC事業の立ち上げで、スマイルズにお声がかかりました。

今日はせっかくnoteを書かせていただくので、裏話を含む、プロジェクトの背景について記録しておきたいと思います。

何を買うか、よりも誰から買うか

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シオクリビトの企画において、「コロナ禍だったから」という要素は無視できません。世情が変わって、自分自身の購買体験にも変化がありました。これまでの自分は結構クラシックなタイプでして、サイズが分かっていても洋服は現物を試着してから買いたい。行く時間や持って帰る手間があっても何だか店舗で買い物した方が安心感ある。微々たるものでも通販の送料を気にしてしまう、なのにDVDは延滞しちゃったりするような小さい男でした。(肝が小さいのは変わっていません)

しかしながら、お出掛けができないコロナ禍になり、通販でモノを買うことのハードルが自分の中で下がりました。また、せっかく何かモノを買うのであれば、飲食店やものづくりを営んでいる知人からがいいな、と。ちょうどSNSを開くと

「オンライン販売をはじめました!」

という知人のジンギスカン屋さんの投稿が目に留まり、「よし、これで週末は焼肉パーティーだ!」と即決。わざわざSNSでメッセージは送りませんでしたが、通販の購入連絡が私からの便りになったら、なんて考えながら。そんな思いを汲んでくれたのかはわかりませんが、その知人は僕に手書きの一筆メッセージを添えて商品を送ってくれ、小さなことかもしれませんが、思いもよらぬプチ・サプライズに体温がぽっと上がりました。この経験から通販で商品を買うことがある種の挨拶やエールになるんじゃないかな、頼んでから届くまでの時間はかつての手紙のやり取りに似ているな、予期せぬオマケにはぐっときちゃうな、という感覚が芽生えました。

Electronic commerce(電子商取引)
→Emotional commerce(情緒的取引)

「モノではなくヒトから始まるのもアリ」「通販って文通みたいだな」「利便性や合理性以外にもつくれる価値はあるぞ」「とても情緒的なやり取りで、ECのEはEmotionalのEでもいいじゃん」という後にシオクリビトの根っこや幹に繋がるキーワードがふつふつと浮き上がってきたのでした。

「いいモノは作っているヒトが面白い」

実は数年前から福島県商工会連合会さんとはご縁があって、フードフェアのグラフィックデザインや個別の事業者さんのブランディングなどでお付き合いが続いていました。

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思い返すと、生産者の方々は作っているものも勿論ステキだったのですが、何よりもヒトがユニーク。強烈だったり、感じが良かったり、いい意味で曲者だったり、覚えているのはヒトの魅力でした。

並行して社内のメンバーと本企画のブレストをしている時に、一人が自身の仕送りのエピソードを話してくれました。親の名前で届く箱、段ボールを開けたときの匂い、有難いものと余計なものが入っていること、手紙が入っていなくても伝わる「元気でやっているか」というメッセージ。そこで、コロナ禍の購買体験、福島県の人々、仕送り…私たちの周りにたゆたゆと浮遊していた要素が一つの文脈に繋がっていきました。

遠くて近い、愛らしくて知らないヒト

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通常のECサイトは商品の良さや違いで勝負するけど、このサイトはヒトの魅力を前面に押し出そう。作っている人の顔が見えることや生産加工背景の紹介程度にとどまらないで、有名無名に関わらず情熱大陸とか仕事の流儀のように徹底的にそのヒトの人生に迫ってみよう。本気で向き合ったそれはきっと、ご本人にとっても貴重な体験になるはず。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの反対で、ヒトのことが気になったり、好きになれれば、商品にも興味関心が芽生えるだろう。同じカテゴリーの商品であっても、作っているヒトは全く違うし、それぞれの経験・価値観・魅力がある。知らない人でも、どこか共感できる幼少期のエピソード、青春時代の思い出、趣味や家族の話、仕事に対する姿勢などがあるはず。

「本当に会ったことがあるわけではないけど、サイトの記事を通じて、福島県で離れてはいるけどなんだか身近な、知らないヒトなんだけどどこかで自分と関係がありそうな、遠い親戚のような感覚になってもらないかな」。「ECサイトだからって、余計な背伸びやセールストークではなく、生産者さんたちの何気ない日常から人柄やつくっているモノ、そして生活する福島という地域の魅力を感じてもらえたら」。そんなことを考えながら、これまでとは一線を画す、ECサイトを企画していったのがシオクリビトです。

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ロゴのデザインと縁起物の万祝をモチーフしたシンボルマークは元スマイルズの仲間で今はクリエイティブ・ディレクターとして独立したHARKENの木本さんが手掛けてくれました。

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彼女とは同僚と時に入場料のある本屋「文喫 六本木」をはじめ、数々のプロジェクトで一緒に仕事をしてきて心から頼りになる存在です。今回のコンセプト文をまとめていくにあたっても、ヒントをもらいました。末尾の2行は彼女がロゴデザインの提案資料の中で語っていたもので、これまで自分が経験してきたヒトを起点とした通販に対する感覚が適格に表現されていて、この言葉から改めてテキストを見直し、最終的なカタチに至りました。サイトの特徴を捉えながら、離れている福島県へ思いをはせるニュアンスが醸し出されたコンセプトに仕上がったと思います。

企画の裏側についてお話させていただきましたが、何はともあれお時間あるときにサイトを覗いていただき、一人ひとりのエピソードに触れていただけたら嬉しいです。ヒトを起点に福島県に魅力を感じてくれる人が一人でも増えることを願っています。

次回は佐々木航大さんに取材撮影のウラ話を紹介してもらいます。

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→次回予告:「vol.2 取材後の写ルンですは少し重たい」

この記事を書いた人

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吉田 剛成(よしだ たけなり)
ディレクター / ビジネスプロデューサー

2008年スマイルズ入社。Soup Stock Tokyoでの店長業務、人事部採用担当を経て、2013年から2015年にかけては経済産業省クリエイティブ産業課へ出向。中小企業の海外展開事業「MORETHAN PROJECT」、「The Wonder 500」、海外向け情報発信サイト「100 Tokyo」を立ち上げに参画。現在は、スマイルズが手がける外部案件のコンサルティング、企画・プロデュースなどを担当。

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