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デザイナー必読!バナー広告の制作依頼が来たら聞くべき「3W」とは|広告の変数とヒアリング例

スマートキャンプ デザインブログ、デザイナーの髙松です。

突然ですがデザイナーの皆さん、社内でバナー制作を依頼されたことはありますか?「もう日常茶飯事」という方も「たまには...」という方もいるかもしれません。

それでは、配信したバナーの数値結果を共有されたことはあるでしょうか?

バナーのクリック率、コンバージョン率(※)といった数値的なフィードバックがデザイナーに共有されるかは現場によって違いますよね。
あるいは、フィードバックが「あのバナーよかった!」の一言に集約されていることもあるかもしれません。

※ コンバージョン … 購入や会員登録など、ユーザー行動の成果地点となるアクション

この記事では、制作したバナーをデザイナー自身が正しく評価できるように、バナー広告の3つの変数の解説と、ヒアリングで聞いておくべき質問例を紹介したいと思います。確認しておくべきポイントがわかれば、マーケ担当者や広告運用者と目線を合わせて、より良い提案ができるかもしれません。

クリエイティブのフィードバックが難しいわけ

前提として、非デザイナーにとって広告クリエイティブの評価をすることは難易度が高いということをデザイナーは理解しておく必要があります。
理由はいくつか考えられますが、例として挙げるなら下記のようなものがあります。

1. 広告の配信結果にはクリエイティブよりも影響が大きい変数がある
2. 季節性や競合他社の施策など、数値にフィードバックされない影響がある
3. クリエイティブのクオリティと広告効果は必ずしも比例しない

クリエイティブの配信結果を数値でレポートするには、それほど工数がかかりませんが、数値結果に理由を見出して言語化するにはあらゆる要因を掛け合わせて突き詰めなければなりません。自分が制作していないクリエイティブの評価をしなければならないとしたら、なかなかに大変な作業です。

このような理由から、私自身はデザイナーが広告の制作過程だけでなく、「仮説立案」〜「効果検証」までのプロセスに関わった方が良いと考えています。

クリエイティブの数値結果を見て仮説を立てる際にも、制作意図をもった人物の狙いが当たったかどうかを軸に議論を組み立て、デザイナーがいる現場で「次に行うTRY」を話し合えると効率的です。

バナー広告の変数「3つのW」とは?

「広告の配信結果にはクリエイティブよりも影響が大きい変数がある」と書きましたが、具体例を挙げていきます。
変数は3つのWで分解すると、整理しやすいかと思います。

3つのW
1. Who(だれ) - どのオーディエンスに配信したのか
2. Where(どこ) - どの媒体を使って配信したのか
3. What(なにを) - どのクリエイティブで配信したのか

特に「Who」「Where」はとても重要です。
デザインに込めたメッセージは、狙ったユーザーに届かなければ効力を発揮できません。どんなユーザーに接触できるかは、この「Who」「Where」に大きく依存しています。より詳細に分解してみます。

Whoの分解例
- どんなデータを使ったのか
   例) 40代の男性 (デモグラフィックデータ)
         ゲーム好きの人(興味関心データ)
         3日に1度スーパーへ通う人 (位置情報データ) など
- 自社との関係性はあるか
   例) 過去に自社のWebサイトに来訪している
         過去のキャンペーンに参加したことがある など
Whereの分解例
- 配信面はどこか
   例) Webページ
         Twitter / Facebook / InstagramなどのSNS など
- 配信面にカテゴリはあるか
   例) 料理コンテンツ特化型のアプリ
         ユーザーにビジネスマンが多いニュースメディア など
- 配信先のデバイスはデスクトップか、スマートフォンか

このように「Who」と「Where」を詳細に分解していくと、
「女性向けにダイエットサプリのクリエイティブを制作してほしい」
という依頼を

「過去に自社ページに来訪した人に向けて広告を打ちたい。配信に性別制限はかけないけど、メインターゲットが女性だからクリエイティブは女性らしくしたい。
ちなみに配信面はInstagramだから、商品写真の他に、読モを使った素材を試しても良いかも。あまり広告っぽくないおしゃれな投稿に見せたい!」

といった、より解像度の高い内容に変換できます。

デザイナーが聞いておくべき質問例

ここでは制作前のヒアリングや、配信後のレポートで聞いておくと役立つ質問例と解説を挙げていきます。
ほとんどは制作前に確認できるといいことばかりですが、広告クリエイティブの制作依頼が来た時点では、配信設計(使用するデータや配信する面などの詳細)が固まっていないこともあります。ヒアリング時点で明らかでなかったことは後から確認すると良さそうです。

1. Whoに関する質問

どんなオーディエンス(ユーザー)に配信しますか?

デザインを作る際に重要な「ターゲット」は制作前に確認している場合がほとんどかもしれませんが、バナー配信後にもあらためて確認してみましょう。
実際の広告配信でどのようにターゲティングしたのかを確認できると、よりGoodだと思います。

子供がいる主婦をターゲットにしたい場合、狙い方は「性別x年代の指定」「母親向けメディアをみているユーザー」「 "塾" や "反抗期" などのキーワードで検索しているユーザー」といったように複数のやり方が考えられ、それによって制作すべきクリエイティブも変わります。

どのページを来訪した人に配信しますか?

過去に自社サイトに来訪したユーザーに広告配信する手法を「リターゲティング」と言います。(リタゲと略されることが多いです。)

リターゲティングは一度自発的に流入した人に対して広告を配信します。
すでに興味関心を持っているユーザーに接触できる確率が高く、性別や年齢などのオーディエンスデータを使うよりも高い効果が出やすいです。

より高い効果を狙う際には、サイトのどのページを訪れたユーザーを狙うのかを明確にして、適切なメッセージを決めた後でデザインに反映すると良いと思います。

また、以前は高い効果を維持していたリターゲティングのクリエイティブで効果が出なくなったら

いつから配信していますか?接触回数は制限していますか?

と、確認してみるのも良いかもしれません。
もし、接触制限をかけずに長い期間を同じクリエイティブで配信していたら、いわゆる「何度も同じ広告が出てうざい・・」という状況になっているかもしれません。
新しいメッセージのクリエイティブを作るか、接触回数を制限して、より新しいユーザーに接触できるような調整をしましょう。

2. Whereに関する質問

どの媒体を使って配信しますか?

「20代女性」に広告を配信する場合、配信先のメディアにいる「20代女性」の人物像は違います。
Webのバナー広告枠に配信するクリエイティブと、InstagramなどのSNSに配信する広告では、訴求軸やデザインの素材、色、テンションを変えることが望ましいです。

また、インスタ映えやTwitterのバズワードなど、媒体によって特徴的なブームがある場合には、それを味方につけてみるのも良いかもしれません。

配信先メディアのフォーマットはどんな形をしていますか?

制作依頼には要件としてクリエイティブのサイズ指定がありますが、必ず実機サイズの確認をしましょう。
広告のクリエイティブサイズは解像度をあげるために大きめのpx数で制作依頼がくることがあり、実際の表示サイズと異なる場合があります。

アスペクト比 1:1 の広告クリエイティブを作って欲しいと依頼され、デザインにテキストを挿入した場合、実際はスマーフォンの画面で100px程度の大きさしかなく、テキストが視認できなかったという可能性もありえます。

【番外編】 広告レポートの見方

最後に、一般的な広告のレポートの見方を解説します。

Web系の広告ではCPCやCTRといった専門用語が多く、初めのうちは覚えるのに苦労しますよね...。私も、ミーティングで出てくる専門用語に「それってどういう意味ですか...?」と切り込めず、なんとなくやり過ごしていた記憶があります。

いくつもの数値が並ぶと見るべきものがわからなくなってしまいますが、広告レポートには基礎の形があります。デザイナーが貢献できる指標には目印をつけるので、参考になれば幸いです。

インプレッション数(Imp / Impression)
広告が表示された回数です。

クリック数(Click)
広告がクリックされた回数です。

配信金額(Cost)
広告配信にかけた金額です。

コンバージョン数(CV / Conversion)
ユーザーがとった目的のアクションの回数です。「購入」「会員登録」「申し込み」などが挙げられます。

CPM(Cost per Impression)
計算式:配信金額 ÷ インプレッション数 × 1000
広告の1000回表示あたりの金額です。

CPC(Cost per Click)
計算式:配信金額 ÷ クリック数 
クリック単価です。後述のCTRを改善できればクリック単価が下がり、より多くのユーザーに接触してクリックを稼げます。

CTR(Click Rate)◉デザイン貢献ポイント
計算式:クリック数 ÷ インプレッション数
クリック率です。CTRが改善するとクリック単価を安く抑えられます
ボタンを目立たせたりメッセージを変えるなど、よりユーザーにクリックされやすいデザインや訴求を追求することでCTR向上に貢献できます。

CVR(Conversion Rate)◉デザイン貢献ポイント
計算式:コンバージョン数 ÷ クリック数
コンバージョン率です。CVRが改善すると後述するCPAを安く抑えられます。CVR向上には、流入先のLP改善や無料キャンペーンを行うなどの広告以外の工夫による影響が大きいです。広告でできる改善は、メッセージの工夫や遷移先と広告の内容にズレをうまないなどが挙げられます。

CPA(Cost par Action)
計算式:配信金額 ÷ コンバージョン数
1コンバージョンあたりにかかったコストです。費用対効果をみる施策では、このCPAを指標にしている場合が多いです。デザインが貢献できる指標はCTRCVRになりますが、どちらを改善してもCPAには好影響です。

「3つのW」とヒアリングで、数値レポートを味方に

デザイナーが作るクリエイティブには多くの工夫が込められており、数値レポートをもらっても、そこにはデザイナーの狙いに対する答えがすべて載っているわけではありません。

特に広告の数値結果には、オーディエンスデータや配信面の影響が含まれており、変数が影響する割合を明確にすることはできません。
しかし、「3つのW」を把握して施策担当者と同じ目線でヒアリングができれば、数値結果を分解して仮説を立てられます。
そうなれば、デザイナーにとって数値フィードバックはとても強い味方です。

デザイナーにコントロールが難しい大きい変数が多いとはいえ、最後にユーザーに届くのはクリエイティブです。よりよい広告体験 / ユーザー体験をしてもらうために、私自身も数値に向き合い続けてみようと思います。

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WRITER : Yume Takamatsu ( SMARTCAMP / Designer / @dream_yt95 )
EDITOR : Yuta Morishige ( SMARTCAMP / Designer / @MorishigeYuta )
& Ryo Takeuchi  ( SMARTCAMP / Writer )

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