見出し画像

データ利活用実証プロジェクト報告 4/5(ゼンリン、NTTデータ)

次世代通信推進課の隣のチームが昨年実施していた「データ利活用実証プロジェクト」の報告の全5回シリーズの第4回目として、今回は株式会社ゼンリンと株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、ゼンリン、NTTデータ)の2社と連携しながら行った、バリアフリーに関するテーマについてデータ利活用の実証プロジェクトをご紹介します。

ゼンリン:バリアフリーマップの作成機会の増加を受けて、本実証を通して地図要件を整理し、地図更新手法を確立させる。

NTTデータ:計測補助アプリを使って歩行空間ネットワークを利用したバリアフリーマップを作製し、様々なデータを掛け合わせることで、移動弱者を支援するサービスの可能性を探る。
(歩行空間ネットワークについては、国交省のサイトをご参照ください。)

正直なところプロジェクトが始まる前は、都としてどこにお役に立てる領域が残されているものなのか、担当者として明確なイメージが持てていませんでした。
しかし実証を進める中で、また障害を抱える当事者の方の実体験を伺うにつれて、特に「エレベーター」、「歩道の段差」の2点について要望があること、そしてデータ整備の点でまだまだ課題解決の伸びしろが大きいことなどが見えてきました。

画像1

何はともあれ、エレベーター

当事者の方の体験として、とある会場で障害者向けのイベントが開催されている日中に、会場の入口につながるエレベーターの保守点検が行われており、利用できないことがあったそうです。
そのときは情報をTwitterなどのSNSで拡散することで混乱を回避できたそうですが、事前にメンテナンス情報がオープンデータ化されていれば、未然に防ぐことができたかもしれません。

よく調べるサイトは?

障害者の方が日常的に利用されているアプリや、バリアフリー情報を収集しているサイトを伺ったところ、最も多かった回答はGoogleストリートビューでした。以下のような事態を回避するために、利用されているそうです。

「飲食店でエレベーターありと表記されていても、ビルの入口に3段の階段があって入れないことを発見できた。」

「坂が長く続と、休憩する場所がなかったり、雨が降ると手が滑るため登り切れなかったりするため、事前に歩道の様子を確認した。」

歩道の段差2cmは重要

車道と歩道の段差は無い方が良いと思われがちですが、視覚障害者の方は0cmでは段差を認識できず危険なため、都市計画上、段差は2cmに定められています。
一方で、車椅子で問題なく超えられる段差も2cmとされています。
手動車椅子であれば前輪を自分で持ち上げて乗り越えられる場合もあるそうですが、電動車椅子の場合はその走行環境条件以上の走行はできません。また、上り坂に盛り上がった段差がある場合は大変危険で、実際に前輪が浮いて後傾してしまい、危うく後ろに転んでしまうような場面がありました。

画像2

現地の様子を、ストリートビューを上回る情報量のデータで提供することは容易ではないとは思いますが、歩道を確認できるデータがあれば、お出かけ前に、あらかじめ適切なルートを選択いただける可能性があります。
具体的な対応案として、まずは①エレベーターのメンテナンス情報のオープンデータと②歩道の地図整備 などが現時点で有効性が高い取り組みになると思っています。

① エレベーターのメンテナンス情報
一部の鉄道事業者は、駅のエレベーターについてメンテナス情報を掲載しています。こうした情報を利活用し易い形式でオープンデータ化することで、地図アプリ提供事業者が活用しやすくなる可能性があります。

② 歩道地図の整備
本実証の開始時は、ゼンリンをはじめとする地図事業者による初期整備後に、NTTデータの計測補助アプリを利用して都民参加型でデータを更新していくことを考えていました。

しかし実証を通じて、いずれも当初の想定以上の時間を費やす工程があることが分かったため、継続的にデータを更新していくためにも、より効率の良い計測手法を検討すべき点が課題だと捉えています。
また、歩道地図のニーズを調査したところ、自走するロボットなどは3Dマップが必要ということが分かりました。
せっかく歩道の地図を整備するなら、より多くの方に活用していただけるよう、様々な用途で利用できるフォーマットでの出力も併せて検討していきたいと考えています。

終わりに

今回は、データ利活用実証の文脈からバリアフリーに関する取組を紹介させていただきました。最後に、「心のバリアフリー」について紹介させてください。
「様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことである。」と定義されています。(詳しくは、下記の福祉保健局のサイトをご参照ください。)

この中で特に印象深いことは、「困っている人に向き合うには、まずは本人の意向を確認し、どの様な支援が必要かを正しく理解する」という点です。
私たちは、デジタルデータを整備することを目指していますが、その先にいる障害者の声に寄り添うことを意識しながら、発展させていきたいと思います。