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次世代ウェルネスソリューション構築に向けた2つのモデルプロジェクト支援を行いました

 皆さんこんにちは!今回は、昨年度実施した次世代ウェルネスソリューション構築支援事業の実証実験についてご紹介させていただきます。
 次世代ウェルネスソリューション構築支援事業では、健康・医療分野のデータを活用した都民の健康増進に関する新たなサービス、予防研究に関する先行的なプロジェクトを支援し、データの利活用モデルを構築するため、2つのモデルプロジェクトの実証に取り組みました。

KDDI株式会社・豊島区を中心とした実証

 東京都は高齢者数や高齢化率が増加傾向にあります。高齢者は様々な健康課題を抱えやすいため、東京都の一人当たり医療費も増加を続けています。東京都の高齢化率はこれからピークを迎えるため、今の内から若年世代も含めた健康増進施策を進める必要があります。

図1

出所)第三期東京都医療費適正化計画(平成30年度~令和5年度)

 一方、高齢化が進む中で、高齢者の一人暮らし世帯が増えることも予測されています。外出機会の減少などを通じ、いわゆる「社会的孤立」が発生しやすい環境が想定されるため、自治体や地域住民が一体となった取組が求められています。
 特に今回の実証地域となった豊島区は、平成27年国勢調査によれば、75歳以上の高齢者人口に占める一人暮らしの割合が37.0%(全国平均19.8%)と高い状態にあります。そこで今回、KDDI株式会社が代表団体、豊島区・株式会社ARISE analytics・エーザイ株式会社が参加団体となる体制で、区民の健康増進と社会的孤立の解消を目的とした実証を、令和2年11月16日から令和3年2月26日まで行いました。
 実証では高齢者から若年世代までの幅広な区民を対象とするため、スマホ用の健康管理アプリ「ポケットヘルスケア」をご利用いただきました。まずはアプリの機能をご紹介します。

健康状態を自動で記録

 健康活動を支えるためには、まず自分の健康状態や日々の健康活動の状況を把握することが重要です。そのため、日常の歩数・体重や健康診断結果を記録する機能をアプリに搭載しました。歩数は、スマホを持ち歩くだけで自動的に記録されます。また健康診断結果は、手元にある結果の紙をスマホのカメラで撮影することで、自動で読み取れるようになっています。

図2

図3

健康意識の向上や健康活動をサポート

 健康を維持するためには、自分の状態を把握した上で、健康意識を高めたり、健康的な活動を続けていくことも重要です。ポケットヘルスケアにはそのための様々な機能が搭載されています。
 たとえば健康診断結果を記録すると、各種治療ガイドラインに沿った生活習慣病(脂質異常症・高血圧・糖尿病)のリスクを表示して、健康意識の向上を促せるようになっています。
 また、日々の歩数の記録や健康活動を行うことで達成されるチャレンジ機能も搭載されています。1日の目標歩数を達成したら10ポイント、1週間の間に毎日目標歩数を達成したらボーナスで40ポイントなど、健康活動を行うとポイントが貯まります。これを100ポイント貯めると、コンビニ等で利用できる電子ギフトが当たる抽選に参加でき、健康活動を継続するインセンティブとなります。
 このほか、アプリのお知らせ機能を利用して豊島区が主催する健康関連イベントの情報配信も行ったり、エーザイ株式会社が提供する『のうKNOW』というサービスで「記憶する」「考える」「判断する」などの脳のパフォーマンスをチェックできるようにするなど、区民の健康増進活動を多角的にサポートしました。

図4

体調が悪くなった場合の活動もサポート

 ポケットヘルスケアでは、こうした健康時のサポートだけでなく、体調悪化などのいざという時の活動もサポートできる機能も搭載しました。そのひとつがAI受診相談*です。
 「頭が痛い」などの気になる症状を入力し、いくつかの質問に回答していくと、適切な受診先や関連する参考情報が提供されます。提示された診療科から豊島区の医療機関の検索結果を表示し、受診を促して病気の早期発見につなげることなどを目指す機能として提供されました。

図5

* Ubie株式会社が提供する「AI受診相談ユビー」にポケットヘルスケアから接続

スマホアプリによる総合的な健康支援の提供を通じて

図6

 希望者は誰でもアプリをダウンロードすることができ、実証用のコードをアプリに入力して実証に参加しました。コードを入力した参加者数は最終的に3,000名を超えました。
 実証参加者の年齢層で最も多かったのは50代(30.4%)、次いで30代(18.5%)・40代(18.2%)という結果でしたが、60歳以上も合計で18.8%の割合を占めていました。スマホ利用を前提としたアプリでの実証でしたが、若年世代から高齢者の世代まで幅広くご利用いただける素地があることが分かりました。
 次に参加者の利用状況を見てみます。たとえば、実証期間中の1日あたり平均歩数は、男女ともに全国の平均歩数を超える結果となりました。もちろん実証の参加者の健康意識がもともと高いという可能性もありますが、アプリを通じた健康活動の促進も、一定の効果をもたらしたのではないかと思われます。

図7

 また、実証参加者へのアンケートを取ってみると以下のような回答が得られました。スマホアプリを通じた総合的な健康活動支援は、一定の成果が得られるものであると考えられます。

◎主なアンケート回答結果
・「このアプリを利用して健康意識が高まった」という回答が71.6%
・「健康活動を通じたインセンティブ付与はモチベーション向上に繋がった」という回答が89.3%
・「このアプリを継続利用したいと思った」という回答が91.4%

今後に向けて

 コロナ禍で外出が制限されるなど、個人の健康維持活動にも影響が出てきています。手元のスマホアプリが、日常の健康活動からいざという時の医療体験までを総合的にサポートし、区が提供する健康関連イベントのお知らせなども行うことで、その環境の改善につなげられる兆しが見えた実証だったと考えます。
 今後は、さらに機能も追加していきつつ、より多くの地域や住民の方にご利用いただくことで、社会全体の健康増進に貢献していきたいと考えています。

図8

日本電気株式会社を中心とした大田区の実証

 今世の中では、医療費の増大に伴って、予防医療や介護予防に向けた、都民一人ひとりの主体的な健康づくりによる健康寿命の延伸が求められています。そういった中で、エビデンス(データ)に基づいた診療行為や健康事業、さらには政策展開が一体となった産官学による取組が課題となっています。
 今回の実証では、産官学連携による都民の健康のためのウェルネスサービスの実現と、データを活用するためのプラットフォームの社会実装に向けて、大田区エリアをモデルに、日本電気株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、株式会社ローソン、東邦大学医学部衛生学教室が共同で実証を行いました。

 実証は、実施内容に合わせて3つのプロジェクト(以下、PJ)に分けて行いました。

図9

1年目実証の概要(イメージ)

 PJ1 エリア分析とウェルネスサービスのニーズ探索では、保険統計データやコンビニの購買統計データを活用して、大田区を18地区に分割した場合の地区ごとの特性を解析し、可視化を行いました。

【コンビニでのとある食品販売数に関する地域差マップ】

図10

 企業のデータを活用することで、行政のデータだけでは把握できない地区の特性を明らかにすることが出来ました。今後のビジネス展開に向けては、ここでみられた地域差が、実際に地域のどのような健康状態と関連するか、またどの項目の関連がより強いかについて検証する必要があります。
 今後の実証では、東邦大学と大田区が共同研究で行っている行政データの解析結果の一部を活用して、大田区内18地区における住民の生活様式と疾病状況等の地域相関分析を進める予定です。

 PJ2 モニタリングデータを活用した新規ウェルネスサービスの検証では、2つのサービス検証を行いました。
 1つ目は、ケアマネジャー向け介護サービス検証です。
 ケアマネジャーのモニタリング業務に役立てるサービスの商用化に向けて、要支援・要介護者のお宅に電力センサー等複数のセンサーを設置し、それらのセンサーデータから、宅内行動の可視化を行いました。

図11

モニタリングサービスの画面イメージ

 ケアマネジャーによる月1回の訪問時のヒアリングではわからない個人の24時間の生活行動を、睡眠、トイレ、調理準備、入浴、洗濯、テレビ、エアコン、外出として、取得したデータから可視化することができました。
 また、この可視化サービスの有効性を検証するとともに、生活リズムと生活習慣病等の疾病との関連についての研究も行い、糖尿病の方の生活行動と血糖値、身体活動量の関連の可視化が出来ました。
 今後の実証では、プレサービス提供(モニタリングデータを活用したケアプラン作成支援)を行い、利用者満足度と介護事業者の業務効率化の効果検証を実施する予定です。

 2つ目の新規ウェルネスサービス(インソールサービス等)検証では、整形外科疾患を抱える方の社会復帰と再発予防につながるサービスの検討に向けて、歩行分析センサー等で収集したモニタリングデータを活用した歩容(歩き方)の研究を行いました。整形外科で手術を受ける方を対象として手術前後に歩容測定を行ったところ、歩容に性別差や年齢差があることが示唆されました。
 今後の実証ではさらにデータを蓄積して解析し、手術前後の歩容の変化や手術後の歩容改善に関連する因子、さらには院内歩行と自宅歩行の違い等を研究する予定です。

図12

整形外科を受診された方への配布セット

 PJ3 データ活用プラットフォームの構築検証では、ウェルネスサービスを実現するデータ活用プラットフォームの実現を目指し、健診結果や各種統計データを用いた動向調査から開始し、調査結果を元に、ビジネスエコシステムやシステム化の検討を行いました。ビジネスエコシステムとは、健康を目的とした人や企業、官、学など多数の要素が、相互に作用し形成される、ウェルネスサービスを実現する事業モデルのことを、ここでは指しています。

図13

ビジネスエコシステムの仮説

 今回の検討を通して、データ活用プラットフォームの実現に向けては、サービスと連携したシステム化検討や、立案したビジネスエコシステムの仮説を元にした全体像のスキーム作りと実現性の検証が必要であることが分かりました。今後の実証ではこれらの点について検証を進めていきます。

 今年度2年目となる実証ですが、全体として、サービス事業者の自律的な事業継続を複数事業者が連携して支援する “ビジネスエコシステム”の醸成を目指し、新PJ1~3をより連動させる形で検証を行う予定です。引き続き、都民の健康のためのウェルネスサービスの実現を目指してまいります。

図14

2年目実証の概要(イメージ)

最後に

 都内での次世代ウェルネスソリューション構築支援事業の実証についてご紹介してきました。これらの実証で達成できたこと、もっと挑戦したかったこと、様々ありましたが、どちらの実証実験関係者の創意工夫と情熱で、社会実装に向けて大きな一歩を刻むことができました。
 デジタルサービス局では、これからも、デジタルの力で社会を変える取組を支援していきたいと思います。