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「電波の道」を見える化する、電波実測調査とは?

 皆さん、こんにちは!ネットワーク推進課です。
 今回は、今年度当課が都内各地で行っている携帯電話の電波実測調査について、具体的にどのような調査を行っているのか、その中身をご紹介したいと思います!

電波実測調査について

電波実測調査とは? 
 ある地域において、携帯電話の電波の状況を知りたい場合、どのようにすれば良いのでしょうか?通信事業者各社が公開しているエリアマップでは、シミュレーション等によりそのエリアの電波状況を算出しています。 
 一方で、測定用の機器等を用いて現地で実際に電波の状況を測定し、取得したデータをもって電波状況を調査することを実測調査と呼びます。
 実測調査においては、専用の測定機器だけでなく、普段私たちが使っているスマートフォンを利用した方法でも測定を行うことが可能であり、今年度の調査(以下「今回の調査」という。)では、実際に市販のスマートフォンを活用して電波状況の測定を行っています。

実測調査のメリット
 
スマートフォンで実測調査を行うことで、電波の強さだけでなく、実際に通信を行った場合の通信速度も測定することができます。 
 また、同じスマートフォンでも、利用するツール(アプリケーション)を使い分けることによって、後述する2つの測定を併せて行うことが可能です。
 調査結果についても、実際に私たちが普段利用しているスマートフォンを測定機器として使用しているため、スマートフォンでデータ通信を行う際に比較的なじみのある尺度や単位を用いて表すことが可能となり、結果を一般利用者にも比較的分かりやすい形で示すことが可能となっています。

エリアカバレッジ走行測定とは?

 調査対象エリア内において、どの地点でどの種類の電波(5G、4G、3G)がどれくらいの強さで受信できているかを測定するのがエリアカバレッジ走行測定です。
 電波の強さについては、スマートフォンの画面上部に表示されるアンテナマークの本数がある程度の目安にはなっていますが、キャリアや端末ごとにそれぞれ「しきい値(どれくらいの電波強度ならアンテナ〇本にする 等)」に違いがあり、測定結果は、一般的にdbm(デシベルミリワット)という単位で表現されます。

測定方法

①測定データの取得
 
今回の調査では、スマートフォンが受信している電波の強さを一定時間(数秒)ごとに取得できる測定ツールを利用して測定を行っています。 
 スマートフォンで測定ツールを起動し、適切にデータが取得できるよう設定した上で、正常に動作していることを確認します。 
 測定ツール動作中は、一定時間ごとに次のようなデータがスマートフォンに累積されるようになります。

{位置情報(経度、緯度)、時刻情報、電波の強度(dbm)、 電波の種類(5G or 4G or 3G or 圏外)}

※説明のため簡略化しています。

 この状態で調査対象エリア内を移動することで、エリア内の各地点における電波強度データが累積されていきます。
 この時、スマートフォンが「待ち受け(アイドル)」状態のままだと、正確な測定データが取得できない可能性があるため、スマートフォンが常に通信している状態となるように、Web会議アプリ等の常時通信を行うアプリケーションを別途動作させる必要があります。
 今回の調査では、生活圏を結ぶ重要なインフラである各自治体等の国道、都道及び一部市町村道を調査対象エリアに設定し、車両を使って道路上を走行しながら測定データの取得を行いました。

走行測定用の機器(4キャリア分のスマートフォンを利用)

②測定データの可視化
 
実測により取得したデータのうち、5G、4G、3Gそれぞれのデータがどの程度の割合含まれているかを集計し、その割合を算出するとともに、各データを、緯度・経度情報を基にして、通信規格(5G、4G、3G)ごとに色分けした上で地図上にプロットを行います。
 個々の測定データはあくまで一地点での電波状況を示したものに過ぎませんが、移動しながら取得した大量のデータをひとつの地図上にプロットすることで、その範囲内での電波状況を地図上に可視化することができます。

測定データの地図上へのプロット
※過去の調査時(TOKYO Data Highwayサミット第2回資料より抜粋)のもの

スループット定点測定とは?

 スマートフォンで通信をする際の「通信の速度」を測定するのが、スループット定点測定です。
 通信速度は、一定の時間にどのくらいの量のデータを受信(送信)できるかで優劣を比較する場合が多く、具体的には、"10 Mbps"といった形で表記します。後半の"bps"は、"b
it Per second"の略で、"1秒間に〇bitのデータを受信(送信)できる"ことを表しています。bitはデータの量を表す言葉で、スマートフォンを含むコンピュータ上で扱える最小のデータ量が1bitとなっています。
 また、bの前のMはデータの単位で(他にもKとかGとか色々あります。)、ざっくりいうと、1,000 bit ≒ 1 Kb 1,000 Kb ≒ 1 Mbといった換算になっています。
 前置きが長くなってしまいましたが、この単位時間におけるデータ転送量を測定するのがスループット定点測定となります。

測定方法

①測定データの取得
 
今回の調査では、避難所や防災支援拠点となる官公庁を中心に調査対象エリア内の施設を選定し、各施設の周辺(原則屋外)において測定を行いました。
 通信速度の測定ツールは様々なものが公開されていますが、内部のつくりがそれぞれ異なっており、同じスマートフォンでも異なるツールを使った際には少なからず結果も異なってきます。
 通信速度には様々な要因が関係してくるため、例え同じツールを使ったとしても、測定ごとに結果が大きく異なっていることも珍しくありません。
 実際の調査時には、誤差の影響を一定程度排除するため、同じ地点で受信・送信それぞれ複数回の測定を実施しています。

②測定データの可視化
 
今回の調査では、各施設で受信・送信それぞれ3回ずつ通信速度を測定し、その平均値をその施設での測定結果としています。また、調査対象施設全体での電波状況の傾向を表すために、「箱ひげ図」と呼ばれるグラフを採用しています。
 「箱ひげ図」は、ばらつきのあるデータを分かりやすく表現するのに適したグラフであり、測定結果の最大値、最小値、中央値、平均値等をひとつのグラフ上に表示することが可能となっています。
 上述のとおり通信速度は水物的な側面があることから、このように複数の統計量で結果を表示することが適しているとされています。

 本記事でご紹介した電波実測調査の調査結果については、今後、順次デジタルサービス局HPで公表予定としております!

「つながる東京」見える化の取組について

 電波実測調査を含め、都では現在、当局が実施している様々な施策を可視化し、HPを通じて皆様へお届けする「つながる東京」見える化の取組を進めております。
 現時点で公開しているものも含め、取組の一部についてご紹介いたします。

①ワンストップ窓口進捗グラフ
 
現在都では、5Gアンテナ基地局等の設置を加速化させるため、行政財産(アセット)の一部を基地局設置用に開放し、本物件に対する通信事業者等からの申請や問合せ等に一括して対応するための窓口(ワンストップ窓口)を設置しています。
 本取組を通じた5Gアンテナ基地局等の設置状況について、進捗状況をHP上で公開しています。

 なお、アセット開放及びワンストップ窓口については、以下の記事でも紹介しております。

②アセットデータベースマップ及び区市町村別5G基地局マップ
 ①の取組で開放しているアセットについて、アンテナ未設置のアセットの所在を地図上にプロットし、都内にどのように分布しているかを可視化した「アセットデータベースマップ」を整備し、本年8月からHP上で公表しています。

都保有アセットデータベースマップ(ArcGIS)

 また、併せて、都内各自治体の5G基地局数の情報を地図上にマッピングし、都内の5G基地局整備の進捗度合いを可視化した「区市町村別5G基地局マップ」も整備し、同じく本年8月からHP上で公表しています。

東京都区市町村別5G基地局数マップ(ArcGIS)

③スマート東京先行実施エリア電波測定結果
 今年度、スマート東京先行実施エリアの一部において、上述した電波実測調査を実施しております。調査結果については、今後、デジタルサービス局HPで公表予定としております。

おわりに

 今回の記事では、都が現在取り組んでいる電波実測調査を含め、様々な可視化の取組についてご紹介させていただきました。
 引き続き、都内の通信環境の更なる向上に向けて、各施策を推進していきます!