誰もが安心して参加できる場を目指して
毎年秋に札幌市中心部で開催されるNoMaps。
今年「アンチハラスメント ポリシー」を策定されたとのこと。
北海道内のビジネスイベントでこのような取り組みは初めて、ということで、策定までの経緯やそこに込められた想いをお聴きしました。
インタビュー
廣瀬 岳史さん(NoMaps実行委員会事務局長)
大学卒業後、民間企業を経て民間シンクタンクに入社。以降10年に渡り、道内自治体の政策立案や地域活性化事業の運営等に従事。その後、現場により近いまちづくり系の会社に籍を移して、地域活性化や地域人材育成事業の企画・運営などに携わる。
2016年、NoMapsの前身の一つである札幌国際短編映画祭関連の調査業務に携わったことを契機に、NoMapsに立上げから参画し、産官学の多様な主体が関わる事業の調整役を担う。2017年4月より現職。
――改めて、NoMapsとは、どんなイベントなのでしょうか?
NoMapsは、ジャンル・年齢・性別関係なく、「新しい社会やワクワクする未来を自分たちの手で作る」という思いを持つ方々が集まり、交わるイベントです。
毎年秋に札幌市中心部で「同時多発的に」かつ、「ジャンルを問わず」展開しており、ここをきっかけに新しい取り組み(コラボレーション)を起こしていくための『複合型フェスティバル』です。
期間中の5日間、札幌市中心部の各所で様々なジャンルのトークセッション、ライブ、イベント、ミートアップを開催しています。
――このたび「アンチハラスメントポリシー」を策定された経緯を教えてください。
NoMapsの認知度が上がり、参加者も増えてきた中で、「ハラスメントに起因するトラブルが起こらないよう、きちんと対応しなければ」という話があがってきたんです。
NoMapsに限らずですが、ビジネス界隈ではマッチョな体育会系のノリが残っていたり、女性や若い人が参加しにくい場もまだまだ多いように感じています。年代やジェンダー、立場の違いから、悪気なく相手を傷つけてしまうといった声も聞こえてきていました。
多様な展開を見せるイベントだからこそ、そういうことも起こりうると思いますし、NoMapsは北海道の中では間違いなく“一つ先を走っているイベント”という認識もあります。
「ここはNoMapsが先頭を切って行動しないと、このあと後ろに続かないよな」といった責任感みたいなものもあり、策定することを決めました。
――策定までの道のりの中で苦労したこと、大切にしたい思いを教えてください。
アンチハラスメントポリシーが「制約」になってしまうことはできるだけしたくないと思っています。
様々な業界の人たちが関わり合っていく取り組みだからこそ、「どういう表現や体制だったら、みんなが自分らしく参加できる環境が守られるか?」かつ、「それぞれがリスペクトしあい、誰もが嫌な思いをしないような形で運営できるのか?」という、「相対するけれど、共存させたい思い」についてずっと悩み、考えていましたし、このことがとにかく大切だと思っています。
それを形(文章)にし、関わる皆さんにとって自分ごととしてもらうためにはどうすればよいかと、色々な方にご相談し、話し合いながら、策定しました。
――今後このポリシーを実際に運用していくことになると思いますが、このポリシーが参加者にとってどのような存在になればいいと思いますか?
「誰かの制約になってほしくない」という想いと「誰かの安全を守る」を実現していくことは、NoMapsの行動規範にもある「不確かで曖昧な世界」ともリンクする部分があると思います。
「曖昧だからこそ、みんなで作っていける領域なんだ」と、みんなでポジティブに在り方を考えながら、運用していきたいと考えています。
――アンチハラスメントポリシー策定以外にも、多様な方々の参加を意識した取り組みをされていますよね。
理事の女性割合を増やすといった取り組みも、アンチハラスメントポリシー策定と並行して行ってきました。
それまでは「適切な方を選んだら、男性ばかりになっている」と思い込んでいましたが、実際に女性候補者を上げていくと、北海道内には豊富な経験のある女性の適任者が多くいることに気づきました。
「女性のリーダー・役職者とかを増やしたいんだけどいないんだよね」といった声って多方面からあるんですけれど、「こういう風にしていこう!」という覚悟があれば、見え方が変わってくるんだな、と実際に取り組んでみて痛感しました。
また、ダイバーシティやジェンダーに関連するような企画も増えています。
今年初の試みとして、NoMapsのメイン会場であるCONFERENCEエリアの交流ラウンジスペースを、9/13(金)は【NoMaps DE&Iラウンジ】と位置付け、多数実施されるセッションの空き時間などを活用して、DE&Iに関連したトークセッションを展開する予定です。
他にも、ジェンダーに関連するプログラムや、託児も予定していますので、ぜひご参加いただきたいです。
◆ジェンダーに関連するプログラム
◆託児キッズプログラム
――NoMaps2024開催まであと少し。皆さんに何か伝えたいことはありますか?
まずはとにかく一度NoMapsに来てほしい、ということです。
今年は、NoMaps Kidsや託児の取り組みも始まります。
参加しにくい、参加に心理的・物理的なハードルを感じるといった方がどうしたら参加しやすくなるか、ということをいつも考えています。
それが解消できるハードルなのであれば、できるだけ取り払っていきたいので、ぜひ声はたくさん欲しいです。
そして、一緒にこのイベントを作っていってほしいです。
NoMapsは、そもそも何をするかも自分たちで作れる場であるので、「こんなことやりたいです、こんな風にしていきましょう」といった思いを柔軟に受け止めたいと思っています。
NoMaps実行委員のお二人からも、イベントへの女性の参画と「アンチハラスメントポリシー」についてコメントをいただきました。
■黒井 理恵さん
昨年、本イベントで「スタートアップとジェンダー」のセッションを担当したところ、さまざまな立場の女性たちから「期待している」「ありがとう」の声をもらいました。ハラスメントのない社会に異論のある人はいないでしょうが、現実は相手を下に見た言動が無意識に行われたり、それに我慢している人がいるのだと思います。自分の言動を公正な未来にアジャストしていくきっかけとして、NoMapsのこの提言はとてもパワーがあると感じています。
■四宮 琴絵さん
去年の段階で「女性登壇者を増やしたい」「もっと女性が参加できるNoMapsにしたい」という話話を頂き、「女性が参加しやすいNoMapsを作る」気持ちで、実行委員に入らせてもらいました。このアンチハラスメントポリシーを策定するにあたり、検討会議の中で自分自身のバイアスを感じることも多々ありました。自分以外の様々な人に対する尊厳を最大限に尊重するNoMapsとなり、ノーハラスメント世界を牽引するNoMapsになっていきたいと思います。
廣瀬さん、黒井さん、四宮さん、ご協力ありがとうございました。
開催まで、あと2週間を切りました。
ぜひ、イベントに足を運び、地域の未来に向けた対話に皆さんも参画してください。
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