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藤井聡太二冠の発言に覗く、成長メンタルの秘訣 ~梅原大吾・ドゥエック~

藤井聡太二冠が、苦手とされる豊島竜王を破り、王位戦を一勝一敗のタイとしました。

前半では豊島竜王有利とされていながら、粘り切っての勝利です。先手番だった1戦目の負けもあり、精神的にも厳しいものがあったと思います。そんな彼の将棋に対する姿勢がよく表れた発言がありました。現代最強とも称される、渡辺明名人をストレートで破った時の言葉です。

結果ばかりを求めていると、逆にそれが出ないときにモチベーションを維持するのが難しくなってしまうのかな、というふうにも思っているので。結果よりも内容を重視して、やっぱり一局指すごとに改善していけるところというのが新たに見つかるものかな、と思うので。やっぱりそれをモチベーションにしてやっていきたいというふうに思っています


この発言を聞いて思い出したのが、プロゲーマーの梅原大吾選手です。

梅原選手は著書『勝負論 ウメハラの流儀』において、このように述べています。

勝負である以上白星であるに越したことはないが、本当の問題は、それらが連続的に自分の成長につながっているかどうかだ。大きな矢印が右肩上がりでいるかどうかである。僕は、この状態を『勝ち続けている』と考える

両選手に共通しているのは、「一戦一戦の結果にとらわれすぎるのではなく、長期的な向上を目標に取り組んでいく」という部分です。

こうした姿勢に関する研究といえば、成功心理学の古典でもある、キャロル・S・ドゥエック博士の著作があげられると思います。

ドゥエックは、人間のタイプを以下のように大別しています。

硬直マインドセット:才能や特質は変化しないと考え、努力を厭う。失敗は才能が欠乏している証である。他人に「天才」「有能」と評価されることを喜ぶ。結果にのみ執着し、負けたら無意味。

しなやかマインドセット:才能は磨けば延びると考え、学び続けたいと願っている。失敗も向上のための機会と捉え、人間は努力によって変われると知っている。結果だけではなく過程も重視する。

明らかに両選手は「しなやかマインドセット」を備えています。これが成長の鍵ではないでしょうか。結果のみを見て一喜一憂するのではなく、あらゆる機会に向上の糸口を探そうとするのです。

筆者は教育に関わる中で「失敗を過度に恐れる」学生たちが非常に多いと感じています。社会情勢や経済状況も原因でしょうが、硬直マインドセット由来の人間に対する決定論的な見方もその理由の1つではないかと思うようになりました。

「今回の試験で落ちるようでは自分はダメ人間、永遠に落ちこぼれの烙印を押される」そんな考え方ではガチガチにならないほうがおかしい。しかし「結果が悪くとも、よくなかった点を見つけて改善に役立てよう、自分がミスしやすい部分を理解しよう」という向き合い方であれば、間違いを過度に恐れなくなりますし、結局そのほうが実力も発揮できるわけです。いつも緊張で実力が発揮できないという人も、こんな風に考え方を変えれば改善するかもしれません。

また、人間は変化できると正しく認識し、向上を目標に長期的な視点で取り組んでいく姿勢は、スキル上達のみならず人間関係などにもよい影響があるのではないでしょうか。

藤井二冠に話を戻せば、話題になった連勝記録が途絶えたときもこのように話していました。

「率直に、敗れたことに対する悔しさというのもありましたし、終局直後はその気持ちが一番でしたけど、後から思えば、それもプロの厳しさを見せられた、いい経験になったなと思っています」

悔しさはある。しかし、結果にとらわれすぎず、敗北を糧として学んでいく。藤井二冠の今後の活躍も楽しみですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

mangara(@mangara08)

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