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DJブース構築 3:DJブースにおけるオーディオのセッティング

前回までで一通りの機材とDJブースそのものができてきました。
これでとりあえず最低限の音がなる状態となるわけです。
ここからは「では、実際にどういう音を鳴らしたいのか?」という探求に入っていきます。

また、此処から先はかなり思想や経験等色々な問題を抱えており、私もオーディオに関してはそこまでの知識を有しているわけではないのであっさりと最低限の好みの"音"まで追い込む道筋を立てる。というのを現在の目標としています。
また、DJブース音響なのでどちらかというと「現場」基準となっておりいわゆるピュアオーディオの方とはちょっと調整の方向性が違っています。

「これは最強の音響ですよ」といえるようになることは一生ないと思いますので、日々あれこれ足したり引いたり微調整したりを繰り返しながら今後も引き続き調整を繰り返していくものと思います。

私のオーディオに対する基本方針は「味付けはオプションで」です。
あっちこっちで味付けの濃いものを使ってしまうとハチャメチャになってしまって沼るので、”大まかに”フラットでシンプル・クリーンな構成で一旦音を作りそこに足りないと感じる部分にフォーカスして味付けをしていくことを方針としています。(そこまで大金持ちではないので、できる範囲でやっていく。というのが最も重要ですね)


メインスピーカー

Electro Voice EKX-15P

我が家のメインスピーカーは昔小さなクラブの運営を手伝っていた頃にメインで使われていたスピーカーを閉店の際に引き取ったものを利用しています。
Electro VoiceのEKX-15Pというちょっと古いDSP内蔵のパワードスピーカーです。
私は後述のスピーカープロセッサーを入れているのでDSPいらないし、DSP内蔵のくせにアナログインしかないしで微妙なところはありますがいったんこちらを利用しています。
音の傾向としては多少固めですが、普通に充分良い音だと思います。15インチですので低音のボリュームも充分です。

メインスピーカーをどこに設置するか。というのはインテリア的にも、音的にも非常に悩ましいところですが私はDJブースの後ろの壁沿いに少し(1m弱)離してスピーカースタンドで設置しています。が、見た目がいまいちで気に入っておらず今後変更していくと思います。
部屋自体が長方形で平行面だらけでかなり反響し定在波が非常に多い状況であり多少簡易的なベーストラップを設置して耳障りな反響を少しだけ減衰していますがポリウレタン製の簡易的なものなのでベーストラップとしての吸音性能は悪く中域〜高域あたりだけ吸ってる印象ですし、見た目も安っぽくて微妙です。(黒いスポンジベタベタ貼るのはよく見ますが、性能も悪いですし何より見た目が悪いのでいやですよね)

当地ではロックウールにクロスを張った吸音パネルをオーダーしてもかなり安い(600x1,200x50mm で3,000JPYくらい)ので、そういうものや木で作った拡散パネルを組み合わせて今後も引き続き調整をしていきたいところです。

スピーカーは現在現場向けのSRとなっていますが、住宅街にある家のガレージなのでそこまでの爆音を出すわけではなく(大体80~90db程度)見た目や音の方向性などを考えても我が家のDJブースであればビンテージ系のスピーカーが良いのではないかと思っており、現在タンノイかAltecのビンテージモニターを検討中です。(中古市場に良いものが出てくるのを探し中)

パワーアンプ

現在のスピーカーはパワードなので特にパワーアンプを導入していませんが、一般論として…
何も考えずによくあるプリメインアンプのLINE INに入れるのはおすすめしません。DJミキサーがいわゆるプリアンプの役割を果たしていますので2重でプリアンプが入ることになってしまいますし、バランス入力対応のものの方が良いですのでDJブース用のアンプはやはりできるだけシンプルなパワーアンプであるのが良いと思います。
ただ、自宅用であればパワーはそこまでいらないので業務用のパワフルなものは不要でD級(TEACが気になります)、予算に余裕があれば富豪系A級パワーアンプ(MchintoshやAccuphaseなど)でよいのかと思います。ミキサーとプロセッサーで調整できるのでボリュームノブもいらないですね。

サブウーファー

家に転がってたパワードのサブ、微妙です

ダンス・ミュージックにとって低音、50Hz以下の低音というのはとても重要です。
DJブース音響としてはやはり通常のリスニング環境よりも低音をある程度出したいものです。
大音量を出すわけではなくあくまでメインスピーカーの低音部分を補って上げる程度なので18inchなどのでっかくパワフルなもので床を揺らすようなものはなくてもよく、10inchとかのものでも十分なのかな。と思っています。場所も取りますしね。(諸説あり)

また、環境による問題で大きな音を出さないにしてもメインスピーカーとは別にサブウーファーを設置してメインスピーカーの負荷を下げてあげたほうが中域〜高域のドライブをしやすくなり音が良くなる面もあります。
ウーファー2台ステレオで置く場合とウーファー一台での運用でまた調整の難しさは変わってきますが、我が家はウーファー一台でいわゆる2.1ch構成で運用しています。

スピーカープロセッサー

これも以前手伝っていたクラブの遺物

スピーカーとサブ、その他いろいろな要因に対して調整をかけていこうと思うとEQだけでは足りず、クロスオーバー・EQ・位相・ディレイなどの調整がしたくなります。
そこでスピーカープロセッサーがあるとかなり調整がらくになります。
調整の仕方については後述しますが、BehringerやDBXのものであれば数万円で購入できるのでとりあえず入れちゃうとあれこれ調整を繰り返していくよりも結果安く音の追い込みができると思います。
(写真にはGEQやコンプのラックが写っていますが現在は使っておりません)

問題としては通常スピーカープロセッサーは内部的にデジタル処理を行うためかならずここでAD/DA(デジタル・アナログ/アナログ・デジタル)の変換が発生します。
オーディオにとっては本来AD/DAのポイントが少ないほうがよいのですがプロセッサーを追加することでAD/DAのポイントが増えてしまいます。

DJブースで一番AD/DAのポイントを減らす方法はギリギリまでデジタルで引き回すことです。
Pioneerなどのミキサーはデジタルin/outを搭載していますので
CDJ -> Mixer -> Processer まで完全にデジタル信号でルーティングすることができるので最後の最後、パワーアンプにいれる直前に好みのDACを入れるだけで1箇所だけでのDA処理になります。(レコードをつなぐ場合も入口で一回だけのADですね)
しかし、私はアナログ・ミキサーを好んで使っている + XDJ700はデジタルアウトがない。という2つの大罪を背負っているためアナログ信号出しになるためかならずスピーカープロセッサーで一度AD/DAされてしまうのです。まぁそれでもあれこれアウトボードつなげて接点が増えるよりはマシかなとも思いますし、その不安を圧倒的に上回る利便性があります。

ディレイはなし、周波数バランスは割り切ってGEQを別で入れるなどで考えればアナログのチャンネルデバイダーなどでも対応できると思います。
これにより接点は増えますがAD/DAのポイントを減らすことも可能です。

モニタースピーカー

ミラーボールも大事です

自宅DJブースにおいて最も重要なのはどう考えても外音よりDJブース内の音響です。
普通の自宅であればメインスピーカーの音も充分聞こえるとは思うのですが、DJミキサーのブースアウトで音量を個別に調整できたりDJブース内に特化した音響の調整ができるので置いてしまえばスピーカーの設置などの自由度もあがり外音との調整が楽になります。

あとは夜中などに小さな音量でやる際にもモニタースピーカーだけで音を出すなども手軽に選択できます。
まぁ、予算と好み次第ですがモニタースピーカーがあると本格派っぽさが出ると思います。我が家ではちょっとオーバースペックですがスタジオで以前使っていたNeumannのKH80DSPを利用しています。

各種アウトボード類やメインミキサーが必要か?

プロセッサーの上に鎮座するAmateras Neveくん(Carnhill Stereo Line Transformer)

先述の通り、スピーカープロセッサーがあると音響調整がかなり楽になりますのでおすすめです。
良いミキサーと良いアンプ、良いスピーカーを使っているので余計なものを挟みたくない!という強いこだわりがある方以外は基本的に入れちゃうとよいです。とくにスピーカーと別にサブを入れる場合はクロスオーバー調整は必須になりますのでチャンネルデバイダーくらいはあったほうが良いでしょう。

DJミキサーの後ろに卓ミキサーを入れたい方も多いでしょう。マイクやサンプラーなどの入力チャンネルを増やすことができます。
私は以前いれていましたが卓ミキは外しました。なるべくシンプルにしたいからです。
もし、デジタルアウトが搭載されたDJミキサーで運用する場合は今ならYAMAHA DM3を入れたいところです。内部でデジタルエフェクターがインサートできるのでEQやリミッターだけでなく下手くそなDJのときに威力を発揮するダイナミックEQ及びマルチバンドコンプなんかを入れる事ができますしDM3で信号まとめてデジタル信号でスピーカープロセッサーに信号を入れることができます。
ルーティングの自由度が上がりますね。

あとは味付け系のアウトボード(トランスや真空管の味をつける系)、コンプレッサー・リミッターなどを好みで入れていくのもまた、楽しいでしょう。

私は一旦デジタルくささを抑えて音がまとまったりするかな?という気分で、以前スタジオ側で使っていて家に余っていたNeveくんというCarnhillのトランスを通すだけ。という宗教系機材を最後に通しています。
Alpha Thetaの新しいロータリーミキサーにMarin Airトランスが搭載された。と聞いて真似してみた次第です。
シンプルに2dbほど音が大きくなり、倍音が付加されます。

以前サイン波をReampしてトランス通ししてみた際の測定結果、倍音が付加されています

電源周り

謎中華アイソレーション(?)電源タップ

電源はこだわり出すとキリがありません。
私が住んでいるエリアは220vですので電圧は申し分ないのですが電柱から家の中まで電線は直結、家の中は驚くほど粗雑な工事が行われ壁から浮いている壁コンセント、穴はあるけど結線されることのないグランドな、漏電による火事待ったなしのビニテ配線、220vってこんな細いケーブルで引き回していいんだっけ?と不安になるような非常に細いケーブルで家中引き回されており電源ノイズは多く不安定になりやすい状況です。
DJブース周りは電源、オーディオなどで非常にケーブルが多くなりやすくグランドループが起きやすい環境ですので一応すべて中華製の安いトランス電源タップを利用して最低限のアイソレーションはしています。
また、当地のコンセントはグラグラで抜けやすい形をしているので一部電源ケーブルをOYAIDEなどに変えてガッチリ刺さるものにしていますが音質というよりは事故防止の観点が大きいです。

予算があれば今後全体的にFurmanなどの220v対応クリーン電源などを入れたいところですが現状は入れていません。(220v対応FurmanはなぜかインレットがC13という特殊形式で専用ケーブルしか使えなくて不便です…)
クリーン電源やアウトボードなどを入れる場合、DJブースの棚の中の一つを潰してラックマウントができるようにしても良いかもしれませんね!

全体のルーティングとケーブル

なるべく図にまとめておくことで配線を変えるときにわかりやすいです

ここまでのルーティングをまとめると上記の図のようなルーティングになります。
図では現在計画中のパワーアンプとメインスピーカーが分かれる構成になっていますが現時点ではパワードスピーカーを利用しています。
メインスピーカーにはプロセッサー側でEQもリミッターも設定しているため非常にシンプルですね!ちなみにDJミキサー以降はすべてMOGAMI 2534 x NeutrikのXLR/TRSというお手頃且つスタンダードなケーブルでバランス接続となっています。
DJミキサーからアンプまで床を這わせたり壁側を這わせたりしていると思ったより長いケーブルが必要になったりします。現在は8m長のバランスケーブルを2本使っているのでケーブル代も案外馬鹿になりません。
今後は、モニタースピーカーに余っているステレオGEQを一つ挟もうかなぁ〜と考えております。

その他

当初、同記事内で計測マイクを利用した実際のスピーカープロセッサーの調整を記載していましたが流石に文章量がえげつなかったので別記事に移行しました。

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