見出し画像

2030年までの10年が勝負。脱炭素化へ3つの提言

ダボス・アジェンダ2021にて小泉環境大臣が、日本の脱炭素化に向けた3つの政策ポイントを提示しています。メディアではあまり詳しく取り上げられないのでご紹介します。


以下、ダボス・アジェンダより。

世界は今なお、コロナと気候危機という二つの危機に直面しています。こうした時代の転換点に立つ今こそ、私たちはより持続可能で強靱な経済社会へとリデザイン(再設計)していかなければなりません。そのために、日本は今、「脱炭素社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型社会への移行」という「3つの移行」に挑戦しています。


昨年10月、菅総理大臣は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指すと宣言しました。「グリーン社会の実現」は、政権の中心課題に位置づけられ、「積極的に温暖化対策を行うことが、産業政策や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる」ということがうたわれました。

さらに11月には、衆議院・参議院の本会議において、気候非常事態宣言が決議されました。これは、日本において、気候変動対策の強化について党派的対立はないことの表れです。安定性と継続性によって、誰が政権を担っても、気候変動政策が揺るがないということは、日本の強みだと言えます。

私自身、これまで政府の目標引き上げや、石炭火力発電の輸出政策の転換を訴え続けてきた一人として、今回の宣言に大変身の引き締まる思いです。2050年までのカーボンニュートラルを実現するには、将来のイノベーションをただ待つことは許されません。再生可能エネルギー、電気自動車をはじめとする、今ある脱炭素技術を徹底的に世の中に普及させることが重要です。2050年カーボンニュートラルに向けては、「2030年までの10年が勝負」という思いで、日本が今取り組んでいる「脱炭素への移行」に向けた政策強化について3点、ご紹介します。

▼ カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラル (carbon neutral、炭素中立) は環境化学の用語の一つ。 何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、という概念。
参照:Wikipedia

環境省_2050年カーボンニュートラルの実現に向けて


3つの政策強化ポイント

1. 政府レベルでの政策の強化

1点目は、政府レベルでの政策の強化です。まず、地球温暖化対策推進法の改正の検討を進め、2050年カーボンニュートラルを法律に明記することを目指します。これにより、その法的な根拠を明らかにし、政策の継続性を確保するとともに投資の予見可能性を高めます。地域での再エネ導入促進に向けた自治体の目標設定や認定制度も導入します。

また、カーボンプライシングについては、総理の指示の下、経済産業省と連携しながら検討を進めており、2月1日に中央環境審議会での議論を再開しました。幅広い立場の様々な観点からのご意見をいただきながら、成長戦略に資するカーボンプライシングについて、間口を広く構えて、建設的な議論を進めていきたいと思います。

さらに、2050年カーボンニュートラルに向けた具体的な行程を検討するため、現在、地球温暖化対策計画の見直しを行っています。COP26までに、より意欲的な2030年温室効果ガス排出削減目標を表明することを目指します。

▼ COP26とは?
第26回気候変動枠組条約締約国会議(The 26th session of the Conference of the Parties) 2020年11月に開催を予定されていたが、昨年4月に延期が決定。2021年11月1~12日に開催されるよてい。


2.自治体と企業の動き

2点目は自治体と企業の動きです。2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」は、私が環境大臣に就任した直後は4自治体だったのが、現在約230自治体となり、人口規模では1億人に迫っています。

こうした自治体の「宣言」を「実現」につなげるため、地域の計画作りや人材育成など、自治体の直面する課題について一気通貫でソフト・ハードの両面から支援して脱炭素地域を創出していきます。東京都や埼玉県で、カーボンプライシングの1つである排出量取引制度が既に導入されていることは心強い動きです。

さらに、菅総理の指示で設置された「国・地方脱炭素実現会議」の場も活用しながら、2050年を待たずに、2025年までの5年間の集中期間に、既存の脱炭素技術をパッケージで導入することで、脱炭素実現の先行モデルを各地に創り出し、その後、次々と地域の「脱炭素ドミノ」を起こして行きたいと思います。

企業の動きも加速しています。我が国のESG金融の規模はこの3年で6倍も増えました。企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する枠組みであるTCFDの日本の賛同企業数は世界第1位です。また、日本では、企業の内部で炭素の排出量に価格付けすることにより、脱炭素投資や対策を推進する仕組みである「インターナル・カーボンプライシング」を導入している企業が80社を超えるなど、脱炭素経営の取組は着実に進んでいます。

こうした取り組みを後押しするとともに、ローカルSDGsの実現に向けた地域金融機関による「ESG地域金融」など、ESG金融の普及・展開も促進していきます。


3.ライフスタイルの変革 

3点目は、ライフスタイルの変革です。2050年カーボンニュートラルを実現するには、経済・産業構造に加え、私たちの暮らしのあり方、例えば衣、食、住、移動のあり方など、すべてを変革する必要があります。

日本は、再エネと電気自動車を一挙に普及させる取り組みを開始しました。先日成立した補正予算でも、「動く蓄電池」としての電動車に対し、購入者に再エネ電力100%調達を条件として、購入支援額を倍増することを盛り込みました。

例えば、電気自動車に対して環境省の補助と東京都の補助を合わせると80万円プラス60万円で最大140万円の補助になり、一般的な電気自動車が400万円なのが260万円で大体ガソリン車並になります。再エネ電力とセットで電動車の導入を支援するのは日本で初めての取り組みです。また、環境省が所管する国立公園などにおける電動車の駐車料金の無料化や充電設備の設置を今年、率先して開始します。

このように、我が国の脱炭素に向けた政策の継続性や予見可能性を高め、気候変動政策を強化していきます。コロナと気候危機、この2つの危機を乗り越え、巨大な脱炭素市場をめぐる大競争時代を勝ち抜くために、いまこそ力を合わせて、持続可能な世界の実現に向けて、経済社会のリデザインを共に進めていきましょう。

Shinjiro Koizumi
Minister of the Environment, Ministry of the Environment of Japan


環境省Youtube

定期的に環境省から、会見の内容や動画がアップされているので、リアルタイムで知りたい方や詳しく見たいかたはぜひチェックしてみてください!


「サステナブル LIFE マガジン by If will」では、国内外のサステナブル、エシカル、環境・社会問題の気になるNewsをピックアップ。関連する情報を発信していきます。[知る・考える・取り組む]If willが提案するサステナブルライフ。

サステナブルなアイテムのセレクトストアIf willが運営するマガジンです。


よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは、If willが拠点とする フィリピンへ、孤児院や社会活動のための寄付とさせていただいております。