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ありがとうミスター社会人野球

「絶対に今年の開幕ゲームは東京ドームに行こう」

2024年の幕が開けた1月下旬、トヨタ自動車の佐竹功年投手が「この夏の都市対抗野球をもって現役を引退する」と表明した瞬間の動揺は今でも忘れられません。

佐竹投手の略歴や功績、歩んできた道のりは公式の文献がきっとたくさん世に出回っているので割愛します。

自分が佐竹投手を初めて生で見たのは2019年の都市対抗野球準決勝・東芝戦。当時も30代後半に差し掛かっていた"ミスター社会人野球"のマウンドさばきを東京ドームの特等席で拝めたことは一生忘れないと思います。クローザーとして最後の打者を抑えた瞬間、自分よりも一回り以上も歳上の方が全身で喜びを表現する姿に"社会人野球の魅力"と"都市対抗野球の重み"を学びました。(あの時はNPBでも活躍した佐竹投手の大学の後輩、細山田コーチとバッテリーを組んでいたのも長くアマチュア野球を愛する1人として痺れました…)

主要大会の直前や各種インタビュー等で「社会人野球の魅力を伝えたい」と話していたことに感化され、自分も野球好きの端くれとしてここ数年はSNSなどで社会人野球について発信する機会が増えました。都市対抗野球で広がった仲間の輪もあり、自分はファンとして佐竹投手に魅せられた1人として社会人野球の魅力や奥深さ、夏の祭典と称されるアマチュア最高峰の舞台・都市対抗野球をより多くの人に伝える、触れてもらうことが「自分の人生の使命のひとつ」だと勝手に自負してます、勝手にですが…。
プロ野球やアマチュアの他のカテゴリーにはない"大人たちが必死に戦う姿"に自分自身も胸を打たれ、活力や勇気をもらいました。特に都市対抗野球は社名やチーム名の前にチーム所在地の市町村がコールされ、その名の通り地域の誇りやプライドを胸に宿して選手たちは東京ドームで戦います。スタンドには多くの人が応援に駆けつけ、華やかな応援でチームを後押しする姿も"都市対抗野球ならでは"という感じがして、一度球場に足を運んだら病みつきになると思っています。

そんな社会人野球、都市対抗野球の魅力を教えてくれた佐竹投手の最後の夏。前年度優勝のトヨタ自動車が大会初日の開幕戦に出てくるので佐竹投手の登板に関わらず、その日だけは絶対に東京ドームに行こうと決めていました。

試合は1点を争う緊迫した投手戦、佐竹投手の出番は0対0で迎えた9回表二死一、三塁の絶体絶命の場面でした。ゆっくりとマウンドに向かっていく姿に気付いた瞬間の大歓声、そして自分自身も無意識に「わぁ~!出てきた~!」と絶叫してしまったことも思い出に残りそうです(苦笑)

大会直前に各種メディアで引退直前の特集が組まれている中で佐竹投手がおっしゃっていた印象的だった発言があります。

「投げたくないですよ…(登板前は)いつも緊張してます」

高校、大学を経て社会人でも数多くの大舞台を経験してキャリアを築いた大投手が口にしたその言葉にスーパースターの"人間らしさ"のようなものを感じました。

佐竹投手の登板で絶体絶命のピンチを乗り切ったトヨタ自動車はその裏の攻撃で虎の子の1点をもぎ取ってサヨナラ勝利、5年ぶりに都市対抗野球のマウンドに帰ってきた佐竹投手は勝ち投手に。

佐竹引退は7月30日以外ありえない…そう期待をしたもののトヨタ自動車は2回戦で敗退。試合から数時間が経ち、ミスター社会人野球の引退を実感すると自然と涙が溢れました。もっとマウンドでの姿を見たかった、あの時に見ておいてよかった…そして改めて佐竹功年に教えてもらった社会人野球の魅力を多くの人に伝えたい、様々な想いが交錯しながら「今の気持ちは文字に残しておこう」とnoteを書いた次第です。

忘れられない夏の思い出がまたひとつ増えました、ミスター社会人野球への感謝の気持ちでいっぱいです…次は名門のユニフォームに再び袖を通してチームを率いる姿が見れるといいなぁ…。

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