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白毫騎士アルテミス

墨川黒江、28歳・処女。彼氏いない歴=年齢。職業はしがないOL。
職場は、大卒入社した三流会社"だった"……ほんの1か月ほど前までは。

精悍な黒鉄の白馬が咆哮を轟かせ、街路樹の落ち葉を巻き上げ駆け過ぎる。
トライアンフ・スラクストンR。直列2気筒エンジン、排気量1200cc。
黒江の痩身を覆うは、黒革のツナギと漆黒のシステムヘルメット。
「あ゛~ッ、あっぢぃ~」
ヘルメットの下で三白眼が細められ、だみ声の悪態がこぼれる。
理由は、両腿で挟んだエンジンから漏れる熱気のせい……だけではない。
「ンで10月も半ば過ぎたってのに、こんな暑いのかね。異常気象だよ」
ツナギの痩せた胸元に、ぶっとく巨大な銀十字ネックレスが揺れる。

ピーピーピー! ヘルメットに内蔵した無線機の着信音。
ザザッ!「クロエ、聞こえるか。こちら"ユニオン"、応答求む」
ピガッ!「こちら黒江。通信良好、どうぞ」
黒江は週末英会話で培った片言英語で返答。
ザザッ!「位置を確認した。3ブロック先を右折して直ぐ。”ヤツら”だ」
ピガッ!「Rog! 直ぐ向かいます」
ザザッ!「”目立たず、素早く、確実に”。なるべくスマートに頼むよ」
黒江の脳裏に通信相手の、ティモシー・ダルトン似の中年顔が浮かんだ。
ピガッ!「ルーキーに注文が多過ぎやしませんか。善処はしますが」
ザザッ!「君は選ばれたんだ。頼むよクロエ、英国の威信がかかっている」
ピガッ!「Rog! 英国、いつか連れてってくださいね」
黒江は皮肉笑いで通信を切ると、アクセルを吹かした。

通りで殺戮する軍服たち! 散乱する市民の屍!
黒江は渋滞する車列の隙間をバイクで通り抜け、通りに向かう!
システムヘルメットの下半分を上げると、ネックレスの銀十字を咥えた!
「神と女王陛下の威信にかけて……変身!」
白い稲妻めいて、空の彼方より飛び来る純白の梟!
黒江の全身が閃光を放ち、白い羽が舞い踊る!
羽の下から現れるは、純白の装甲騎士!

【続く】

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