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悪魔憑きのヴィヴィアン

マリオン。まだ俺が少年だった頃、将来を誓い合った少女。
「ヴィヴ、悲しいけど今日でお別れよ。破産しちゃったの、うち」
俺より一歳年上のマリオンは、悲愴を精一杯の微笑みで包んで俺に語った。

二十年の歳月は永遠めいていた。
全ては忘却の泥濘に埋没していた、はずだった。
『許してヴィヴ M』
マリオンの肉筆。たった一言の、殴り書きの手紙。
俺はモーテルの一室に立ち尽くし、荒れ果てた室内を見渡した。
手紙を裏返す。
『ヴィクター・ベンジャミン?』
知らない名前だ。一体誰の?
「私さ」
開け放たれた革鞄に、一匹の野兎。
言葉を話した野兎は、見る見る内に巨大化し、大人の男の姿を成した。
「アー……失礼。服が、必要なようだね」
ウサギ頭の男、ヴィクター。
彼はおどけて肩を竦めると、パチンと指を鳴らした。
瞬間、導火線に火が点いたように――全身が燃え上がる!
「ARGHHH!」
何だ何だ何だ! 何が起こってやがる!
「契約の儀式さ。俺は悪魔だからな」

【続く】

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