011 酔うするに、……自分だろ。

(やおい注意)

俺は――
俺は今まで酒に頼らずとも酔える男がいることを知らなかった。そう。今の今までだ。

「だから! シツコイんだよ。お前わッ!」
「どうしてだい、君のそのプルメリアの花のようなくりんとしたかわいいその瞳がメドゥーサのごとく僕を見てしまうようなことなんてなにも口にしてはいないよ」

(キィイイイー……ッ!)

「かっ、カワユイいうなッ! この変態っ! 酔っ払いっ! 馬鹿野郎ッ!」
金切り声を上げて、これでもかと心の底からこの男を罵倒した。

「君! 駄目ではないかっ!」
反対に、怒鳴り返される。勢いに気圧されて黙ってしまったら、さあ大変。

「君のそのマシュマロでできたそのやわらかそうな口唇から、麗しくない暴言が紡がれるなんて……! この僕の、まばゆく太陽やきらめく月を想うように君を想う、清らかかつ美しい純心な気持ちがそれで片付いてしまうと言うのかい……?!」
まず……、一人称がこいつにぴったり似合っていて気持ち悪い。

しかも、言っていることがどう考えても、話し言葉じゃない。……おかしすぎる。会話をする気がないのか。お前さんはシェイクスピアの門弟か。口がマシュマロでできてるわきゃないだろうが!
そして、根本的に間違っていることは俺が……男だっていうことだ。

「あのなあ~! 俺はお前のこと好きにならないし、こういうの迷惑なんだよ!」
「なぜだい、いとしいモナムール! 」
「愛しの二回言うな!」
「言いたりないぐらいだああああッ……! 僕はね、君をはじめて見た瞬間、雷神トールのハンマーで僕のガラスのハートが打ち砕かれたようだったのだよ! 恋をしたのさ、ふふふ!」

「……」
付き合ってられん。
結局、自分に酔っているんだろうなあ、こいつって。
……そう思ったのは、やつが、俺がいない方向をみて、愛を叫んでいたからだった。



※お題011「酔い」

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傾向として、一風変わった感じ(SF・ファンタジー寄り)の話が多め。微グロ・やおい(BL)もあります(表記有)ので、お読みの際はくれぐれもご注意願います。

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