
ハニー・アンド・スパイス
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悪い夢を見た――しかし淡い幸福に包まれていた。
彼女は別れ際の駅で言った。「離れたくない」
束縛したくない、嫌いになってほしくない。
将来のことを考えたい、明日のことは考えたくない。
バイバイしなくちゃいけない、離れたくない。
簡単に「矛盾」と片付けられるその気持ちは、しかし人間が生きていくことそのものであった。
生きた心地のしない、抜け殻の朝。
しかし前を進んでいくしかない、希望の朝。
ふわっとしたオムレツに包まれた、鼻をつく西洋わさびの辛さ。
甘い蜂蜜の中にたっぷり溶け込む、苦さを伴うシナモンの香り。
やさしさと哀しさ、甘さと苦さが残る朝。
現実を生きていくことは、地続きである。苦しみや悲しみを抱きながら、幸せを噛みしめて今日を生きる。
(自身のブログ『サードウェーブ系哲学的ゾンビ』より転載)
(Image:Sheila Scarborough, CC-BY 2.0)
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