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恩師とサーカスと私

ふと、恩師であるT先生が勧めてくれた一冊の本を思い出した。


大学受験が終わったころ、今までのお礼と報告をするためT先生のもとを訪れた。法学部に合格したことを伝えると、法律とはちょっと違うけれど少しは参考になるかしらと、米澤穂信の『王とサーカス』を勧めてくださった。(あるいはおすすめの本を教えてほしいと、自分から乞うたのかもしれない。)

『王とサーカス』
雑誌の事前取材のためカトマンズへやってきた、フリーの記者である太刀洗万智は王政廃止の遠因となった王族殺害事件に遭遇する。当然、彼女は事件を追うことになるが、取材のために接触した軍人が何者かに殺されてしまう。
2001年6月にネパールの王宮で実際に起きたナラヤンヒティ王宮事件を背景に、太刀洗から取材を受けた軍人が殺害された事件と、その殺害事件の記事を書く太刀洗の懊悩を描いた作品である。

(ダ・ウィンチニュースおよびwikipediaを改編)

米澤穂信の作品はそれまでに読んだことがなかったし、ジャーナリズムについて何の知識も持ち合わせていなかったが、「ジャーナリストにとっての正義とは?」という作者のメッセージは心に突き刺さった。先生がそれを意図して勧めてくれたかどうかはわからないが、少なくともこれから法律を学ぼうと志す生徒に十分なほど影響を与えたことは確かである。


陳腐化した「サーカスの演し物(だしもの)」は増加の一途を辿り、次から次へと消費されてゆく。このまま「消費者」側に居続けるのか。それともこのエンターテイメントに一石を投じる者になるか。

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