【書評】方法序説

約100ページの薄い本です。私の読解力が不足しており、読む時間を要しました。

方法序説 (著者:デカルト。訳者:谷川多佳子)岩波文庫 青613-1
すべて良書を読むことは、著者である過去の世紀の一流の人びとと親しく語り合うようなもので、しかもその会話は、かれらの思想の最上のものだけを見せてくれる(13ページ)

デカルトは1596年生まれのフランス人です。この本でデカルトと語り合いたいです。

ただ前例と習慣だけで納得してきたことを、あまり堅く信じてはいけない(18ページ)

デカルトは、全ての分野の研究を行った結果、多くの疑いと誤りに悩まされました。私は、全ての分野の研究を行っていませんが、書籍や研究結果を盲信することなく、疑いの目を持っておきたいです。

一個人が国家を、その根底からすべて変えたり、正しく建て直すために転覆したりして改造しようとすることは、まったく理に反している…けれども、わたしがその時までに受け入れ信じてきた諸見解すべてにたいしては、自分の信念から一度きっぱりと取り除いてみることが最善だ(23ページ)

社会などの全体の変化は少しずつ行い、個人の考えはダイナミックに変化させるということ。社会人としては、業務の継続性があるため、少し良い改善方法があっても直ぐには変えないこともあります。

おびただしい規則の代わりに…次の四つの規則で十分だと信じた。第一は、わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないこと…第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの…必要なだけの小部分に分割すること。第三は、わたしの思考を順序にしたがって導くこと。…最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。(28•29ページ)

研究の原則が書かれています。業務で調査や検討を行う際、チェックしています。ただし、現実には分からないところも多く、その部分は分からないと認識した上で、上司に報告しています。

いくら良いものでも、われわれの外にあるものはすべて等しく自らの力から遠く及ばないとみなせば、…いわゆる「必然を徳とする」ことによって、病気でいるのに健康でありたいとか、牢獄にいるのに自由になりたいなどと望まなくなる。(38ページ)

自分で変えられないことを、望んでも仕方ない。自分ができる範囲で変えていくという考えは、現実的で理解しやすいです。

かれらはイメージを思いうかべてでなければ何も考えない習慣にとらわれてしまい—これは物質的事物に特有な思考法だー、イメージを思いうかべられないものはすべて、かれらには理解できないと思われる(52ページ)

論理思考の結果として、デカルトは完全性を持った神を認識しました。ここが、一番理解が難しかったです。デカルトが神を認識した理由は分かりましたが、私は完全体としての神を認識していません。

反対に、原因のほうこそ結果によって証明されるのである。そしてわたしはそういう諸原因を仮説と名づけた(100ページ)

仮説という概念が、ここで出てきた。工学系の研究において、最も重要な概念と思っています。


この記事が参加している募集