佐々木、イン、マイマイン を観た

という映画を(1月頭とかに)観ていました。おそらく人生をかけて愛してしまうだろうな。原作(?)になったとされる小説も読んで、「自分」を形作るあらゆる文化や作品への敬意を感じました。


20代でこの映画に出会ったけれど、きっとこれからの人生の折々で振り返って、その時々で受け取り方や印象が変わるのだと思う。いつだって何かしらの形で響くのに、響き方が違うことが、個人的には良作の必要条件だと思っている。


話が逸れてしまいました。
以降内容に触れて記します。


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タイトルに「佐々木」ってあるぐらいなんだから、この「佐々木」が主人公なんだろうなぁと考えていた私は甘い。
たしかに佐々木は主人公と言えるのだろうけど、この映画は、私みたいに短絡的に落ち着くんじゃなくて、悠二から見た佐々木を丁寧に描くことで間接的に佐々木が主役として印象付けられている。(気がする)


夢を追う、という事実は美しく語られがちだけれど、そこに内包されるのは特段美しい事実や感情だけではない。そういうことは大人になる、歳を重ねたり人生経験が増えるほど嫌でも突きつけられる。
そこにある少しのプライドや、笑ってごまかして関係性をゆるやかに繋いでいくこと、伝えるべきことは伝えたり、自分にだけは弱さも汚さも隠せないこと。心と関係性の機微をはっきりと、でも繊細に紡ぐやりとりがあった。

「今」の描写のあとに、「あの頃」と「今」が比較対照的に繰り返され、少しずつ溶け合うように「この瞬間」に近づいていく。

お調子者キャラで笑われにいく佐々木の一面に触れながら侵さない悠二、どこまでも不器用で、近づいては遠ざけるような佐々木。(彼はおそらくそうすることでしか自分を守れない。)
悠二にとって佐々木は「近くにある別の人生」だったのかもしれないと思う。


(この辺りから少し語彙力低めでいきますね。)


悠二が元カノとなし崩し的になりそうになるところは、原典をすごくリスペクトした描写なのか~の小説を読んで理解しました。全体的に小説のほうをストーリーの骨子にしてる印象はあった(もちろん話や登場人物は全く違うけれど)、最初に渡される台本もロンググッドバイだったような…。
あそこの情けない煙草吸う姿すごく人間らしくて良かったです。

舞台の練習シーンの楽屋かなにかみたいなところで監督さんらしき人としていた会話がものすごくよかった。「人はひとりでいるときだけが寂しいんじゃなくて、誰かと一緒に居るときでもちゃんと孤独を感じる生き物だよ」という言葉は、心を灯してくれる言葉だなと思った。

友人とその友人が好きだった女の子が結婚して、暮らしと赤ちゃんがいる描写で、泣き止まない赤ちゃんに対して次第に悠二が謝りながら涙を流していくのは、それに対してどこまでもどこまでも、掻き消されてゆくだけの(あの頃の佐々木の)涙を思ったからでは、と感じひたすらに感動しました。映画やドラマで滅多に泣かないのにこの時だけは泣いてしまった。

通学路に使ってた「あの道」を、喪服で逆走するの本当に素晴らしい演出だと思う。
「あの時」は戻らないけど、あの時出来なかったことを拾いに行くことはできる。そこに対して「弔い」を差し込むのが本当に最高です、ありがとうございます。その逆走の時の台詞が一番好きです。一言一句覚えたい。台本売ってほしい。


印象的で「あ~~好きだ~~」と思ったシーンも言葉もカットもたくさんありすぎるのに、時間が経っていることと語彙力の無さで表現しきれません。追記しまくる記事になるとおもう。絶対に円盤出してほしい。(円盤買いました。家宝にしている。)

大人の耳には聞こえない低周波の音で会話する、ゾウの赤ちゃん?が言いたいことってなんだろう。



愛しすぎてこれ以上の言葉を尽くせない。とにかく観て欲しい。でも大切にしまっておきたい気持ちにもなる映画です。焦燥、「あの頃」がある人に刺さる映画な気がします。


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