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【前編】星野みなみは天才である

 天才という単語から連想される人物は誰だろうか。芸術家としてだけではなく多くの分野で功績を残しているダ・ヴィンチを挙げる人もいれば、相対性理論を提唱したアインシュタインという人もいる。そのアインシュタインはノイマンこそが天才だと評したといわれている。そして一部界隈では一人の少女が天才だと祭り上げられている。その人物こそ今回取り上げる星野みなみだ。

 そもそも天才とは何か。辞書で調べてみた。

普通の人にはまねのできない、すぐれた才能
(を生まれつき持っている人)。

 こちらは鈴木絢音先生がおすすめする『新明解国語辞典』から抜粋したものである。これを星野みなみに当てはめて考えてみる。たしかに彼女を「普通の人」と形容するには些か無理があるだろう。では星野みなみがどういった才能を持っているのか。今回はその前編。彼女の「かわいい」に焦点を当てていきたいと思う。


⊿ かわいいの解釈

「かわいい」の意味とは。今や国民的アイドルグループとなった乃木坂46のことを「かわいい」という人もいるが、その乃木坂46メンバーはバナナマンの日村勇紀を見て度々「かわいい」という。ときには食べ物を見て「かわいい」という人もいれば、道端に生えている苔を見て「かわいい」という人もいる。「かわいい」のゲシュタルト崩壊が起こる前に、再び新明解を手に「かわいい」を調べてみた。

無心に親に甘える子供のように、表情やちょっとしたしぐさなどにほほえましさを感じ、いつまでも見守っていたいといった感情を抱く様子だ。

 こちら一部抜粋。用例に星野みなみの名前が記載されていないことに疑問を感じつつも、納得感を得るには十分な答えが返ってきた。この語釈を星野みなみに照らし合わせてみると色々と合点がいく。彼女の一挙手一投足は多くの人の口角を上げさせる力を持っている。いや、正確には何もしなくても、研ぎ澄まされた人ならば、頭の中の世界で彼女を想像するだけで顔をほころばせてしまうことだろう。そして、そんな彼女の姿をいつまでも見ていたいと思うことは自然なことである。起きる。ご飯を食べる。星野みなみに癒される。お風呂に入る。寝る。なんの違和感もない。

※無心に親に甘える子供のような星野みなみ


⊿ かわいいの認識

 ここで彼女の天賦の才ならぬ天使の才について二つの疑問が浮かび上がってくる。

①上記の語釈は星野みなみにのみ当てはまるのか
②星野みなみのかわいさは誰にでも通用するのか

 この疑問の答えを探る前に、大人数アイドルの一つの特徴、ストロングポイントについて触れておきたい。それは様々な人の趣味嗜好にリーチできるということ。「⊿⊿はかわいいとは思わないけど、○○はかわいい。」「××の声はかわいい。」「□□の仕草はかわいい。」といったように、万人が好きになるメンバーはいなくとも、各々が心惹かれるメンバーと出会う機会が設けられている。それは乃木坂46においても例外ではなく、多種多様の、言い換えれば彼女たちを見る人の数だけの かわいい が存在しているのではないかと思う。

 つまり上述した①②の疑問の答えは どちらも「NO」。かわいいの捉え方には個人差があるため、星野みなみ以外のメンバーに かわいい を見出す人もいるし、星野みなみの かわいい が通用しない人も存在するということになる。そこで乃木坂46に関して次のような設問があったとする。

 Q.  かわいいメンバーといえば誰?

「霊長類最強の美を誇る 万物のビューティアイコン」とまで言われた白石麻衣の名前を挙げる人もいれば、一つひとつの挙動に擬音がつくかのような仕草を見せる松村沙友里の名前を挙げる人もいるだろう。秋元真夏に問えば自分の名前を真っ先に答えるはずだ。魅力的なメンバーが溢れているうえに、上述した個々人の好みから千差万別の答えが返ってくることが予想される。

 それでは次の設問の場合どうなるか。

 Q.  かわいいの天才といえば誰?

 不思議なことに答えは一致するはずだ。みな口を揃えて言うだろう。「星野みなみ」であると。多くのメンバーが存在し、多くのかわいいが存在し、多くのファンが存在し、多くの価値観が存在する。にもかかわらず彼女は「かわいいの天才」という二つ名を自分のものにしており、我々は「かわいいの天才=星野みなみ」という共通認識を頭に刻みこまれている。

※自分の存在を刻みこむ星野みなみ


⊿ かわいいのファクター

 ではなぜ我々は星野みなみを かわいいの天才 と呼ぶのか。1期生として星野みなみを身近に見てきた若月佑美は「アイキャッチ(瞳の中の光)」がポイントだと語り、高山一実は「つるつるの肌・うるうるの瞳・ぷるぷるの口元」が可愛いに直結していると分析した。

 個人的な考えとしては彼女の かわいい要素 が謎を解き明かすカギなのではないかと思っている。注目すべきは「かわいい」の語釈にある一文。

表情やちょっとしたしぐさなど━━━━━━

 この など が意味するもの。例えばビジュアル。例えば性格。例えば声。例えばリアクション。例えば言葉選び。不特定多数の人の琴線に触れることができる多様なかわいいファクターを備えているからこそ、星野みなみは「かわいいの天才」の敬称を得ているのではないだろうか。それぞれのかわいい要素を極めたスペシャリストでもあり、それら全てを包括するジェネラリストでもあるのではないかと思う。

 冒頭に紹介した「天才」の語釈を改めて見返してみると、「普通の人にはまねのできない」とある。乃木坂46 a.k.a. かわいい軍団 に所属している時点で、各メンバーを天才だと定義付けすることもできる。しかし各メンバーの かわいいレーダーチャート なるものが存在すると仮定したときに、かわいいのスペシャリストであり、かわいいのジェネラリストであり、かわいいのオールラウンダーである星野みなみ以上に多角形の面積が広くなるメンバーは存在しないだろう。これこそが彼女を天才たらしめる所以だと考えられる。かわいい軍団のトップオブトップに君臨する星野みなみの存在は、銀河系軍団におけるクリスティアーノ・ロナウドのようなものなのである。

※かわいいバロンドールを5回受賞した星野みなみ


⊿ かわいいの活用

  みなみじゃないと成立しないことがある

 齋藤飛鳥は星野みなみをこう評している。彼女でなければ成立しなことの例として、バラエティにおける立ち振る舞いが挙げられる。冠番組の『乃木坂工事中(乃木坂って、どこ?)』から、彼女にしかできない匠の技を振り返ってみよう。

 まずは『乃木坂って、どこ?』#74 の5thシングル ヒット祈願回をプレイバック。「誰がスカイダイビングを飛べきか」という討論企画が催され、メンバー投票の結果 秋元か星野のどちらかが上空4,000mから身を投げ出すことが決定した。そして最終選考の際、現在の心境を聞かれた星野が発した言葉は「やりたくな~い♡(原文ママ)」という居残り掃除を命じられたくらいのライトなものであった。番組にとって大事なコンテンツのひとつであるヒット祈願企画に対し、緊張感のかけらもない言葉を放ったにも関わらず、彼女はこの一言で多くの人の笑いを誘い、心を射止めた。

 続いて『乃木坂って、どこ?』#166 これまでの活動をおさらいする企画での発言。ここでは秋元が休業から復帰したときの話題になり、当時を振り返った星野は「(振り付けで他の人に比べ滞空時間が短い秋元に対し)ジャンプもできないかなって思った。」と語っている。一見すると辛辣なコメントのように感じるが、彼女が言葉を紡ぐと棘は抜け落ち、見事に笑いに転換されている。

 どちらにも共通して言えることは、かわいいの権化である彼女がギャップのある言動をとることで笑いに繋がるということ。「かわいい+生意気」「かわいい+辛辣」のように、何かに かわいいのエッセンスを加えて笑いに昇華させるというフォーマットが完成されており、この技術において星野みなみの右に出るものはいないと個人的には思っている。

 そして星野みなみの恐ろしいところは、上述した技術的なことを抜きにして、かわいいという武器だけでその場の流れを成立させてしまうところにもある。富士登山のヒット祈願で頂上の鳥居をくぐる際、「何をお願いすればいいんだっけ?」という天然っぷりを披露したり、クイズ企画で同じ回答を3回繰り返したり、鼻炎の幽霊に取りつかれたという荒唐無稽な話をしたり、MCのバナナマンに「『みなみちゃん』って呼んでほしい。」とお願いしたり…ただ彼女が自然体としてそこにいるだけで、記憶に残る名場面・名言をいくつも生み出してきた。

 また『乃木坂工事中』ではハンドボール、ラグビー、ハンモックなどを使い基礎的なフリ落ち技術を披露するなど、彼女のポテンシャルの高さを思い知らされることが多々ある。このように様々な角度から笑顔を届けてくれる星野みなみだが、そのベースに「かわいい」があるからこそ笑いの底上げがなされ、より多くの人を笑顔にできているのではないかと感じている。飛鳥が評した通り「他の人には真似できない」星野みなみだから成立する笑いが確実に存在するということだ。

※かわいいフリ落ちもできちゃう星野みなみ


⊿ かわいいの天才

 星野みなみの「かわいい」にスポットライトを当てて つらつらと語ってきたが、この4000文字は星野みなみの動画や画像を前にした時、なんの役にも立たないことが分かるだろう。言葉では説明できない魅力がそこには広がっているはずだ。次は後編。果たして「かわいい」という魅力だけで彼女の周りに人が集まっているのだろうか。そんなはずがない。次回は彼女の優しさ、「気遣い」について綴っていこうと思う。

 星野みなみは他のメンバーに比べて、ブログやモバイルメールの更新頻度が少ないことで知られている。しかし、これに不満を持つファンは多くない。それどころか30秒あれば目を通し終わるほどのブログが更新された日には、彼女のもとには万雷の拍手が降り注ぐ。当の本人はこの甘やかしともとれる対応に戸惑いを感じることもあるようだが、その姿すらも かわいいのだから手の打ちようがない。かわいいの鎧を身に纏い、我々の頬を緩ませ続ける彼女は今この瞬間も かわいいに違いない。星野みなみは かわいいの天才なのだから。

※がんばる活力を与えてくれる星野みなみ

2020年5月30日
エメりんご


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