忘れない

『忘れない』

夜に咲いた華は

朝陽に眩しさに溶けて消えた


陽に抗った星は

夕陽の風に灰と化して消えた


それでも

そこにあった

消えてしまったけれど

そこにあったことを

私は忘れない


私が忘れてしまえば

そこに

無かったことにされてしまうから



亡くなるまで

一切語らなかった祖父は

満州で何を見て

何をしてきたのか

祖父は時々

夢でうなされていた


韓国の地で

元慰安婦を名乗り出た

お婆ちゃんの手を握りながら

この国がしたことを知った


沖縄の地で

「私は軍国少女だった」と語る

元白梅学徒隊のお婆ちゃんの目を見つめ

戦争の想像を超える悲惨さを知った


目を背けたくなる現実

耳を塞ぎたくなくなる現実


夢じゃない

幻じゃない

それは現実


そこにあったことを

私は忘れない


私が忘れてしまえば

そこに

無かったことにされてしまうから

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