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「ひとり時間」を副業(生産行動)に振り替えると中高年男性の定年後は劇的に変わる

公園のベンチでひとり、何をするわけでもなく長時間座っている高齢男性。図書館に行くと新聞雑誌コーナーで終日過ごしている高齢男性。ホームセンターで配偶者の荷物持ちとして付き従う高齢男性。よく見かけますよね、そういう光景。これらは、ともするとあなたの未来そのものです。

自分はそうならない、と今は思っているかもしれない。けれども、ただ真面目に組織に勤め、「それなりの」給与を得て、家族を養い、定年まで勤め上げるごく普通の生き方のみを選択すると、ほぼ確実にこのような未来が現実のものとなります。(特に男性の皆さん)

「会社の仕事」というのは会社が雇用してくれている間だけ無条件で与えてくれました。仕事を、何もしなくても得られていたのです。代替に私たちが提供する労働時間の対価として、給与が毎月決まった日に、請求しなくても自動的に銀行口座に振り込まれまる、それが1970年代の高度経済成長期を境に主流となった「雇用」という働き方のシステムで、現在約85%の方が該当しています。

一方、家庭に目を移してみましょう。ご家庭をお持ちになることを選択しお子さんのいらっしゃる方は、子供の学校行事、習い事の送り迎え、受験に関する様々な手続きや成長と共に変化する買い物のお手伝いなど多忙を極めていることでしょう。家族での揉め事も含めて幸せな時間です。でも家庭での役割は、子どもの自立と共に終わります。自分の期待役割がまた一つ、失われます。

60才もしくは65才まで働き、定年退職したとしましょう。好きな趣味や旅行やゴルフに、存分に時間を使えます。そして、長くても3ヶ月で飽きます(と多くの先輩方が仰っています)。会社時代の同僚や後輩に連絡し、ご飯を共にすることもあるでしょう。最初は付き合ってくれます。2回目は相手に予定があるそうで、また今度となります。3回目以降は誘いづらくなり、相手から連絡が来ることはありません。会社を通じた知人は、よほど気の合う少数の仲間を除いては、あくまでも勤務している期間限定なのです。

旅行も、最初は配偶者が付き合ってくれるでしょう。でも、2回3回と同じでは飽きます。配偶者は以前からそうしていたように、友人や地域の気の合う仲間と出かけることを優先し、あなたにはそんな仲間はいません。自宅でひとり時間を過ごすことが増えるでしょう。そして、閉塞感を感じ、冒頭に書いたように公園のベンチや図書館に向かうことになるのです。

今現在、休日をどのように過ごしていますか? 買い物や映画や旅行や食事などが多いでしょうか。趣味のある方は何らかの習い事に参加したり、スポーツをしているでしょうか。必要ですし良いと思いますが、それらはいずれも「消費行動」です。お金を支払う立場として商品サービスの提供を受けている、もしくは時間という資産を消費しているだけです。

当たり前のことですが、あり余る時間を「消費行動」のみで過ごすのは限りがあります。定年後に収入が減れば使える資金も減りますし、何よりも重要なのは、そもそも消費することによって得られる「充足感」というのはごく一時的なもので、効果が継続しないのです。前からずっと欲しかった高級車を買ったとしても、3ヶ月後には新鮮さは失われ、最新の情報端末を手に入れたところで単に動画や配信を見たりゲームをするだけでは、たいした充足感を得続けることは難しいでしょう。物足りない日々をただ過ごすことは苦痛に感じ、会社で働いていた頃の忙しい時間を懐かしく振り返るのです。

これから社会に大量に放出される勤めを終えた中高年男性の過ごし方は、社会を変えるインパクトがあります。孤立や孤独からストレスの蓄積とクレーマー行動につながる現実もあります。逆に、何かを生み出して相手から感謝される「生産行動」の術を見出した方は、それまで得た経験や肩書きを一度放り出して、ゼロから社会に適応していくことができます。かつて赤ちゃんが公園デビューしたように、中高年男性は60〜65歳にもう一度本当の意味で社会にデビューする経験をするのです。

視点を会社側に移します。これから退職期を迎える大量採用世代、その後の氷河期世代の人数は非常に多く、企業にとって人件費の負担となっています。65歳までの再雇用義務や、70歳までの努力義務が政府から企業に課されていて、いかにして早期にかつ円満に社外へと転身してもらうかが、人事部の至上命題になっています。その表れが「キャリアの自律」を促す、組織に頼らずに自分のことは自分で計画する責任がある、という昨今の流れにつながっています。

ジョブ型時代のキャリア自律とタレントマネジメント

上記のレポートはリクルートマネジメントソリューションズ社から2022年3月に発行されたもので、前述した企業人材をとりまく現状や、施策としての選択型HRM(人材マネジメント)について記載しています。組織に残って欲しいのは本当の意味での専門スキルを持った人材のみであり、その課程として「ジョブ型雇用」が存在しています。一方で、ジョブ型雇用の課題もあり、人事部が専門スキルをきちんと見極め定義付けできるかどうかが、機能するか否かの最初の分かれ目になります。

必要な「ジョブ」は組織によって異なり、必要とされる人材も異なります。当たり前のことですが、人事部が知らない専門スキルはジョブ型に定義されません。以前の記事にも書きましたが、多くの企業の人事部職員自身の育成に課題があり、制度設計を外部のコンサル会社や人材支援会社に任せ、専門家として自社内で施策立案できる人材が減っていることも大きな課題です。

そして「副業・兼業」に関しての企業の歩みはこれまで遅々として進まなかったのが現実です。安倍内閣の2017年に副業・兼業に関する検討会を組成し提言がまとめられ、翌2018年初頭には「新モデル就業規則」の目玉として「副業・兼業の禁止⇒承認および推進」に大きく舵が切られました。即反応し積極的に副業人材を活用した一部の企業を除き、多くは「働き方改革の潮流のなかで世間並の対応をとった」に過ぎない(上記レポートP.11より)のです。

それが最近になり一転し、キャリア自律の一つの具体的な選択肢として「副業・兼業」を認める傾向が出て来ました。「自分の期待役割」を社外で、社会で発揮することのステップとして副業経験を活用するという視点が生まれています。副業により自信と実力を身につけ、定年よりも早期に組織を離脱し、組織と個人がお互いにハッピーで円滑な「卒業」を目指すことが理想的な形なのかもしれません。

しかし多くのサラリーマンは、「仕事の作り方」を知らずに数十年を組織の中で育っています。レールの上を上手に歩き、組織の中で「調整」に手腕を発揮し出世を果たすなどの経験は、個人事業においては利益を生まないスキルであり、残念ながら価値の高いものではありません。

それよりもいかにして「小商い」の力を身に着けるか、言い換えると「コンテンツを自分で生み出し、販路を開拓し、顧客を獲得し、オウンドメディアを通じて社会へ発信する」ことです。自分の期待役割を得て、新しいレール(事業領域)を自ら切り拓き、個人のブランディングを行うことが必要なのです。

その手っ取り早い訓練であり実践機会が、副業・兼業による「個人事業の創業」になります。ひとり時間を消費行動ではなく「生産行動」に振り替えることで、十分に時間を確保することが可能です。それを支援してくれる組織は多くあり、例えば中小企業庁の運営する中小機構の「BusiNestやTIP*S」、東京都の「Startup hub tokyo」など、他にも各市町村にある創業支援施設や民間の創業支援オフィスなど多数あります。

まずそれらに足を運んでみると、実際に副業や独立したフリーランスとして活躍している人の動き方を肌で感じることができます。そのイキイキとした表情や聴こえてくる会話から、感情的に刺激を受けるでしょう。副業を具体的に進めるためには、関心のある事業分野の公開セミナーに参加して情報を得ることも有効です。

この記事では典型的に環境変化に戸惑いがちな「中高年男性に向けて」という形で表現していますが、本質的には自ら何かを生み出したい人にとって性差はありません。私の周囲にも多くのオリジナリティを発揮している女性の皆さんが多数いらっしゃいます。むしろ、女性の方が変化へ舵を切る行動力は高く、心配が少ないように感じています。

そうして少しずつ、アンテナの立て方が変化していきます。勤め人と事業者の情報感度は天と地の差があります。良い悪いではなく、定年後を見据えた自分の事業を作ることを目指すなら、そのアンテナを30代40代から磨いておき、行動を始めることが有効です。早ければ早いほど選択肢は増えますが、たとえ60歳からのスタートでも遅くはありません。学び、アウトプットする意欲さえあれば誰でも実現できることなのです。

とはいえ、スモールビジネスの立ち上げから順調に、早期に収益化を実現し、それが単年ではなく継続していくことの難しさは実践者の誰もが感じていることであり、私自身もその一人です。スキルノートは創業から10年を迎えますが、一昨年あたりからようやく「自分だけが知っている秘密」のようなスモールビジネスのコツをつかむことで、少しづつ機会に恵まれるようになり、また稼働単価も上昇しました。

それは決して自分の力だけではなく、常に動きもがいている中で手を差し伸べてくれた多くの事業者仲間やクライアントの方々、新しいはたらき方に挑戦する想いに賛同してくれる個人の皆さんの共感によるものです。「ひとり時間」にやりたいことがどんどん増えていき、自らの期待役割が広がることで、自然と日々の充足感につながっていきます。

この記事を偶然目にして、半ば自らが否定されるような気持ちで反感を抱きつつも「自分が対象者かもしれないな」と感じた皆さんが、小さな一歩を踏み出す刺激になればと思います。そのための支援を、これから更に品質を上げて提供していきます。2023年、まだお会いしたことのない「これから始める」皆さんとの出会いを心待ちにしています。

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