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日々のエッセイ

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2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。
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#田舎暮らし

ヤギとニワトリと憧れのピクニック

ヤギとニワトリと憧れのピクニック

暑くもなく寒くもない、11月のある日の午後。

いつものように庭に出て、ヤギとニワトリたちと遊んでいた。とても気持ちが良い天気だった。青く澄んだ空は、ずっと見上げていたい色をしている。

この日は少し特別だった。

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ニワトリは水浴びをしない代わりに、砂浴びをする習性がある。腐葉土のように少し冷たく、しっとりサラサラした土が好きみたいだ。この日もそんな絶妙なスポットを勝手に見つけては楽しそ

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旅に出たい欲の変化について

旅に出たい欲の変化について

以前と比較して「旅に出たい」という欲がなくなってきている。

これまで旅が大好きで、国内は44県(徳島、愛知、富山以外)、海外は12か国(アメリカ、カナダ、イタリア、タイ、ラオス、カンボジア、スリランカ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、韓国、台湾)を訪問した。

特に大学生になると、アルバイトをしてお金を稼ぐことを覚え、暇さえあればシフトを入れては旅に出る、というのを繰り返していた。当時付き合

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電子書籍の出版と夏の思い出

電子書籍の出版と夏の思い出

2023年8月15日、電子書籍を出版した。

こう書いてしまうと簡単なのだけど、この21字の一部始終にはたくさんの時間と想いを注ぎ込んだため、そのことについて書いてみたい。

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電子書籍の出版については、実は昨年から漠然と考えていることだった。なんなら生きているうちに何かしらのかたちで自書を出版したいというのは、もっと前からの夢であった。

それを実現させようと思えたのは、他ならない飼いヤ

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鴨と過ごした三十日

鴨と過ごした三十日

庭で偶然カモの卵を発見し約三十日が経過した頃、予定通りにカモの親子は引越していった。正確には引越しの現場を見てはいないから、無事にヒナが孵ったのか、水辺に到着できたのかどうかは定かではない。

ただ産毛と思しき柔らかな羽が巣に残されていただけで、それ以降は一切姿を見なくなった。鶴の恩返しではないけれど、絵本の物語に出てくる動物みたいにいつの間にかスッと消えてしまった。

草原のかげにそっと隠れて卵

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鴨の巣作り

鴨の巣作り

庭で鴨の巣を見つけた。恐らくカルガモの巣だと思われる。その出会いは偶然で、まさかこんなところに!という具合で発見した。

春以降、命の芽吹きを感じずにはいられない日々が続いている。それは庭の草花を見ていても思うことだし、生き物の卵や赤ん坊が色々な場所で生まれていることからも思うこと。

この4~5月は偶然にも知人の出産報告も多く(これは人間の話)、新しい命について考えさせられている。そしてひたすら

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移住うつと産後うつは似ている

移住うつと産後うつは似ている

30代になり、身近な人が出産する場面が増えてきた。私自身はまだ子供を産んだ経験はないけれど、学生時代を一緒に過ごした友人が「お母さん」になることで、もろもろの興味は湧いてくる。妊娠ってなんだろう、出産ってなんだろう。

それらについて調べていくうちに、「産後うつ」のことを知った。妊娠出産は奇跡の連続で非常におめでたいことだし、華やかな面に注目されることが多いと思う。でも実は、離婚するタイミングで最

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湖への寄り道

湖への寄り道

「今日の山と空、絵画みたいだよ」

まだ薄暗い早朝に家を出たわたしたちは、同じタイミングで同じことを思ったらしい。

前日の大雨が関係しているのか、滅多に見ることのない風景が広がっていた。水墨画で描かれたような黒い山。その後ろには、薄い水色の空と雲。この地域にそんなものはないはずなのに、雲がまるで山脈のように見えた。

「少し立寄ってみようよ」

わたしたちは湖畔に車を停車し、しばしその風景を眺め

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焼き芋の時間

焼き芋の時間

自分一人だったらやろうと思えないことも、自分以外の人がいるならやろうと思えることがある。

例えば「夜ご飯を作る」という作業は、一人だったら雑になるか、もしくはやらない可能性がある。作らなきゃ、食べなきゃ、という気持ちがそもそも起こらないのだ。何にも縛られないことは自由でもあり、虚無にもなり得る。

自分以外の人の存在があるからやる。流されているようで、実はとても大きなモチベーション。

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読み耽る秋

読み耽る秋

どこからともなくハエがやって来る。寒さが苦手な彼らはこの時期になると、知らぬ間に家へ忍び込んで羽音を鳴らしている。パソコン作業をしていると、髪の毛や手に止まってくる。サッサと払いのけ、また作業に戻るの繰り返し。

「今の時期はしゃーねえんだよ」

いつも野菜や果物をお裾分けしてくれるお隣さんが言った。困った顔をしていると、大体見抜かれている気がする。

ここのところ、秋とも冬とも言えない毎日が続い

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桃の恩送り

桃の恩送り

恩送りとは一般的に、誰かから受けた恩を直接その人に返すのではなく、別の人に送ることを言うそう。

恩送りがたくさんの人たちに意識されれば、世界にはハッピーな人が増えるだろう。とはいえ、特にその言葉を意識していなくても、自然と恩送りをしている場面はきっと溢れている。

恩送りで大切なのは、「本当に心がこもっている」ことだと思う。

例えば誰かに物をあげるとして、相手のことをよく考えて買った物や、自分

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梅雨明けの草花摘み

梅雨明けの草花摘み

傍から見たら「そんなことやって楽しいの?」と思われることでも、実際手を動かしてみると、思いのほか楽しいことがある。

身近な作業でも改めてきちんと丁寧に向き合ってみると、なるほど新たな発見がある。

大切なのは「全集中」すること。

さり気なく鬼滅ネタ(漫画全部読んじゃった)を入れてみたけれど、冗談ではなく真面目な話で。身近なことにとことん真正面から向き合ってみると、意外な充実感が得られる場合があ

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違和感と小休止

違和感と小休止

なんか違うかも?という違和感を抱くことはよくある。些細なことから、重大なことまで。

しかもその違和感というのは、繰り返すことが多いように思う。しばらく忘れていたことでも、ひょんなことがきっかけで違和感と再会を果たすことがある。

違和感は悪いものに思えるけれど、実はそうでもなくて、自分の考えや生き方を再認識する際にも役立つ。軌道修正もできる。例えば、とある場所へ行って違和感を持てば、そこは自分の

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傘に蛙も乙なもの

傘に蛙も乙なもの

知らない間に「期待」している。人に、物に、出来事に、繰り返しやってくる日々に。

なんだか前に進めない、気分が乗らないというとき、大体はこうやって「何か」に期待している。そしてその期待は満たされずに終わっている。

でも、無意識に期待していたんだと、そう気が付くことが出来たらラクになる。期待を認識できたとき、自分の目の前にはただ「事実」があるだけで、それ以上でもそれ以下でもないことを改めて理解する

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人生は自分との約束

人生は自分との約束

幸か不幸か、日常的に自分以外の誰かと関わりながら生きている。人間は社会的動物だのなんだのって、耳にタコができるくらい聞いてる。

学校の先生に成績をつけられたり、クラスで順位が出たり、合格・不合格に晒される機会が多かったり、常に「他人から評価されること」が当然のように育ってきた。他人がOKと言えば喜び、他人がNOと言えば悲しむ。

でも、人生はそうじゃないんじゃないか。

自分自身の中に行動基準や

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