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擬似親塾

 まぁ、勉強を教えてるのか、知識を伝達してるのかと聞かれたら知識を伝達しているって感じですね。勉強って自分が動いてやるもので、暗記とか、計算とか、聞いてるだけだと勉強じゃないと思うんですよ。聞きながら要約してるなら勉強だと思うけど。だから塾講師は知識の伝達になるってことで。勉強っていうと、生徒の行動をこちらが制御して、このように動けーってやらないと勉強にならない気がするんですよ。コントローラーで動かしてるみたいな。まぁそりゃそうだってなりますよね。でも、面白いことに最近は勉強を教えてる割合が増えてるんですよ。

 つまり、行動まで扱ってるってことです。こりゃ面白い状況で、人が人をコントロールしてるんで、側から見たら機械いじりをしてるんじゃないか、人権を無視するなって言われそうなんですよ。知識の伝達が知識という音やプロセスを左耳に通して、右耳から抜けさせるようなオリンピック競技に立候補できる精密なそして微調整が必要なスポーツと化してきています。これだと定期試験で点数は取れません。保護者様から「金払ってるのに点数が上がらないなんてどうなってんだ」と電話がきます。来塾されます。お宅のお子様は「オリンピック競技にはもってこいの素質があります。私と組みませんか?」と申し出てもきっと保護者様には意味がわからないでしょう。

 そんなこんなで、これだと塾が潰れてしまいます。集客にはやはり結果が出る塾という金バッチが必要ですから、なんとかしなければなりません。塾業界はこのオリンピック競技の対策として様々な策を練っています。当塾では「生徒管理」をします。知識の伝達から勉強を教える、言い換えると勉強をするように生徒のプログラミングをするとなります。なるほど、だからプログラミングが熱いのですね!

 「生徒をプログラミングするとは何事だ」とお叱りを受けそうですが、保護者様も願ってるのではないでしょうかね?「うちの子やる気スイッチが入らなくて〜」「どうしたら勉強しますかね」「自習室に監禁して下さい」など、我が子を勉強にセットしたい願望が如実に現れているお言葉を頂戴しております昨今です。機械のプログラミングと生命体の人を合わせると一見非人道的な考えでけしからんとなりますが、スーパーのレジと一緒で、自動化して楽をしたいというのが本音じゃないかなと感じますよ。やはり、保護者様も人ですから自分が楽したい、思いのままに動いてもらいたいってのが本音です。面倒臭いことはマジで面倒と感じますよね。

 このようなお客様の切実なお願いから塾業界も進化してるんです。知識の伝達だけだと古臭い塾、廃れる塾になっちゃいます。自然淘汰されたくないですから、どうやって進化しようかなと考えるわけです。はい、「管理塾」となりました。自ら行うはずの勉強を塾が「代わり」にやってあげるよって宣伝するんです。これは、これは効果抜群で保護者様は苦悩から解放されるということで、我が子をさっさと塾に入れるべく新規契約に走ります。

 初めの入塾の動機は「管理してくれる」に魅力を感じているだけです。結果が伴わなければ退塾となります。でも考えてみて下さい。管理するってことは、学校の教師や定期試験、生徒の性格や能力を講師側が全て把握しなければならないわけです。ここまでやるから対策としては相当な量で、結果は出ます。知識の定着量まで管理もしますんで完璧。こりゃ、講師の負担が一気に増えました。給料は変わりません。あれれ、と。

 結果が出て管理までする塾なんてそうそうないですから、上手くいきますよ。管理の度合いにもよりますが、指標としては、保護者様の要求が家庭内部の内容まで来たら管理は成功です。例えば、「家では〇〇な感じで私の言うことなんか聞かないので先生の方から言ってくれませんか」って。子育て代行ですよ。信頼を得る代わりに労働が増え、給料は上がらない。だって、お金の徴収は授業料とプリント代とかだけですからね。子育て代行料はとってないんです。管理体制にすればこうなるのは当たり前ですよね。

 とまぁ、保護者様からすれば、授業料だけで我が子の勉強管理だけでなく、我が子に教え諭す家庭内問題まで取り扱ってくれるんで、儲けもんです。一石二鳥なんて古臭い、一石も超極小石で鳥も鷲とか鷹を取っちゃったてな具合です。講師はアップアップで溺れる寸前。
 
 

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