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社史は「いっちょうら」

持っている衣服の中で一着しかない上等なもの。

社史づくりは、編集者によって仕上がりがまるで違う。また、会社側の担当者によっても、仕上がりが変わる。当然ながら予算の違い、資料の有無、制作期間といった状況など、同じ状況はない。会社が違えば、やっていることも全然違う。

社史は多くても10年に1回つくられるかどうかの一品。何がしたいかを明確にさせていきながら、何ができるかを考えていく。社史は、半永久的に残るものなので、今の関係者だけではなく、10年後、20年後の経営者や社員に対しても理解、納得できるようにしていくのが求められる。そのために、専門的になりすぎず、どう表現して伝えていくかが編集者の考えどころになる。

編集者から言わせてもらえば、そこが面白いところでもあり、経験を活かせるところでもある。そう、同じことはできないけど、同じような手法はできる。手持ちの素材をどう組み合わせ、効率的に進めていくのかが、編集者のカンコツになるのだと思う。その一つひとつの判断が、少しずつ仕上がりを変えていく。

とはいえ、決定するのは会社。社史という枠組みのなかで、規定外の変化はなかなか求められないのも現実としてある。オーダーメイドなのだから、求められることに最善を尽くし、最終的な判断は会社にゆだねる。

社史の発行部数は300~500部程度。

むかしの社史は上製本というまさにハードな「本」が多かった。バブル期に多くの社史が発刊されており、豪華かつボリュームのあるものが一つのステータスでもあったようだ。当時の印刷技術を考えると、かなり高額になっただろうなとは思う。最近では比較的コンパクトな冊子タイプが主流で、ページ数も100頁程度で、それほど重くはない。いい意味で、ユーザーフレンドリー。

また、いまどきの印刷技術はかなり高度になって高額なものもありつつ、量産タイプはかなりコストが低い。さらに、用紙も多種多様にあるので、ちょっとした見た目や感触に工夫を凝らすこともできる。が、このギャップは、一般の人にはなかなか受け入れがたいもので、微妙な違いは無いに等しく、安かろう、良かろうということになりがちなのが玉に瑕。

社史もひとつの本なので、絵本とまではいかなくとも、せっかく少部数で融通はききまくる。なればこそ、印刷・製本の工夫を凝らした一品ものにしていけば、より上等なものになるのになぁという願望。