中庸に生きる


1. 孔子の言う中庸とは、両端にある考え方の間を取るといったことでなく、正しく考えるという人間の能力自体の価値の救助・回復に対するねがいである、という旨の小林秀雄の評論をかつて読んだ事がある。


小林秀雄といえばかつての日本を代表する評論家。そして難しい文章を書く事で知られている事もあって、自分の読解力では正直読んでいても分らないことだらけ。でもこの文章に関してはスッと腹に落ちたことを今も覚えている。

2. この中庸を経営者として自分なりに解釈するに、①自分の置かれている立場や状況を把握し、②自分の立ち位置を決めた上で、③経営判断を行うのではないかと考える。

以下詳しく述べる。

(1)まず①について。

自分の置かれている立場や状況を把握するとは、ブログで今まで度々述べてきたようにSWOT分析等を使って世の中の政治・経済・社会・テクノロジーといった会社の外部の環境や人・モノ・カネといった会社の内部資源を把握することをいう。

(2)次に②について

自分の立ち位置を決めるとは①の分析を行った上で、企業ドメイン・事業ドメインを規定することをいう。

企業ドメインを規定するということは、展開していく事業の範囲、あるいは組み合わせを規定するということであり、企業としてのアイデンティティを規定することをいう。

事業ドメインの規定とは、その事業自体の範囲を規定することである。具体的にはどのような消費者をターゲットにし、どのようなニーズを満たしていくのかを規定する事である。

そのためのツールとして、どんな顧客に、どんな機能を、どんな技術で提供していくのか、という3つの次元をもとに設定していくエーベルの3次元枠組を使っていく。

(3)最後に③について

これに対しては、時代の流れと自分のポジションとの関係を踏まえて、攻め時と守り時を判断するということだと思う。

この点に関してドンキホーテの創業者である安田隆夫氏も攻めるときはこれでもかと言う程徹底的に攻め、守る時は下手に動かず「見」を決め込むメリハリが大切だと著書「安売王一代」の中でおっしゃっている。

経営判断とはつまるところ、攻めと守りのタイミングをどう考えるかに尽きると思うのである。


3. 自社に関しては、今は守り時だと思う。へたに新規事業に手を出さず、内部固めに勤しむ。具体的には経営者交代に伴う社内体制を整え、採用戦略やキャッシュフローの改善に重点を置く。また経営者個人の経営知識やスキルをアップさせる。

このブログで経営に関して御託を並べているのも経営知識の定着を図るため(笑)。

なのでまだ新たな上記ドメインを規定するには早すぎると考えている。

そうやって体力を温存し、しかるべきときにがんがん営業をかけ、新規事業を立ち上げるなど攻めの姿勢に転ずる。今は世の中を観察しながら、そのためのタイミングを図っているところ。


4. AIに象徴されるテクノロジーの劇的な進歩とか既存のビジネスモデルの機能不全が盛んに喧伝されている今だからこそ、この中庸と言う言葉が問われているのではないか、と思うのである。

http://www.yoka-security.co.jp

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