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フリーライター/92年生まれ/兵庫県の山間部出身/短大でメディアとジャーナリズムを学ん…

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フリーライター/92年生まれ/兵庫県の山間部出身/短大でメディアとジャーナリズムを学んだ後、印刷屋さんからWEBディレクターを経験し、ライターへ/北千住のシェアハウスに住んでます。/地方のこと、ものづくり、社会福祉に興味あり。エッセイが得意です。

最近の記事

いずみちゃんのお悩み

工藤さんは私の働くWEB制作会社の部長だ。といっても私の直属の上司とは違って、別の部署の部長。 社長の思いつきで始まったシェアハウス式の社員寮で一緒に暮らしている。 会社の人と暮らすなんて、まっぴらごめんだ!と思っていたのに、のっぴきならない事情が出来て入居してしまったのだが、その話はまた今度にして、今日は同じ屋根の下で暮らす工藤さんのお悩みについて話そう。 工藤さんは女子でもなく男子でもないその中間の人。LGBTQの「Q」の人だ。木更津育ちのヤンキー気質で男前、優しく

    • 旅は博打。

      ほんの小さなことにキレる男が我が父「ゆたか」だった。 立て付けの悪いドアが上手く閉まらない。床に物が落ちている。細かい掃除が出来ていない。とにかく些細なことでいちいち腹を立てるのだ。 JRも通っていない田舎町のさらに山奥で育つ私たち三人兄弟に、少しでも外の世界を見せてやろうと、両親は毎年夏のボーナスで家族旅行に連れて行ってくれた。 しかし、旅行といえば今でも、「怒る父」をセットで思い出す。外の世界を見せることが目的の旅行で、小さな家族の世界を必死で守っていた記憶が蘇る。

      • 蒜山ジャージーヨーグルト

        「蒜山ジャージーヨーグルト」。 私を虜にして久しい、魅惑のヨーグルトだ。 牛乳は温めすぎると膜がはる。あの膜が張る現象を「ラムスデン現象」と呼ぶらしい。熱でタンパク質が固まったもので、体にとても良いらしいが、ぶよぶよしていて舌に残るので、私は少し苦手だ。 しかし、こちらの「膜」となれば大好物。 ここだけの話、消費期限をあえて過ぎさせて、「膜」が分厚くなり、凝縮したものを食べるのが密かな楽しみ。小さな罪悪感と共に、クリーミーな膜が舌の上で溶ける。但し、これが体験できるの

        • 犬連れバックパッカー シェルパ齋藤と愛犬ニホの旅物語

          私がまだ少女の頃、バックパッカーになりたかった。背中に背負ったバックパックひとつで旅をするのだ。 歩いて、歩いて、腹が減れば飯を食う。日が暮れたらテントを張って寝床をつくる、眠くなれば瞼を閉じて、日が昇り、辺りが白めばまた歩き出す。 なんてシンプルだろう。 四方を山に囲まれた田舎で、ややこしい思春期の人間関係に否応なしに巻き込まれ、悶々とした青い春を過ごす15歳の少女には、作中の世界がまるで別世界の様にとても健やかに見えた。こんな風に生きたい、こんな大人になりたいと、胸

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