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グルジアでバレエを観劇【グルジア酔いどれ夜話/Siontak】

第十七夜

2015年4月に呼称をグルジアからジョージアへと変更した、南コーカサスの国。日本ではあまり馴染みのないこのジョージアへ、シルクロード旅行中にたどりついたSiontakさんのコラムです。ジョージアとはいったいどんな国で、どんな生活をしているのか!?

第2、4火曜日更新
<著者:Siontak>


子供のころに飛び込みをやっていたことがある。といっても営業とか駅のホームから飛び込むやつではない。高いところからくるくる回ってプールに飛び込むスポーツ競技のことで知らない人に説明するのが難しい。

百聞は一見にしかず。飛び込み競技とはこんなやつ。僕にもこんな少年期があったのか‥

競技人口が少ないこともあって僕の先生はオリンピックに4回も出たことのあるすごい先生だった。日体大にある飛び込み競技専用のプールに通って練習していたのだけど、これが屋外プール。夏の間は真っ黒に日焼けしながら飛び込み、秋からは併設のお風呂で身体を温めながら飛び込む。それも10月まで。それ以降はとてもじゃないが寒くてやってられない。

冬はどうするのかというと、先生が毎冬僕らをプールを使わない他競技のクラブに胸を借りに行くように手配してくれていた。
「この中から好きなとこに習いに行きなさい」
先生が挙げた競技は3つ。器械体操、トランポリン、そしてバレエだった。冬の間、飛び込みの代わりに体操やトランポリンを習うわけは子供でもわかる。大きく分ければ同じジャンルのスポーツといって差し支えないだろう。宙返りや空中での方向感覚はどれにも通じる。

でもバレエはよくわからなかった。そもそもバレエとはなんだろう? スポーツなのかダンスなのか? それとも芸術? 少なくともオリンピックの競技種目にはないぞ。全身タイツみたいのを穿いて踊るやつだろう?そんなの恥ずかしい!!

バレエは常に手の先から足のつま先まで全身の姿勢に集中しなければいけない。飛び込みも同じで一番大事なのは姿勢なんだと先生は言っていたのを覚えている。
先生はとてもバレエを習わせたかったようだけれど僕は嫌がって毎冬バレエを選ばなかった。バレエを観に連れて行ってもらったこともある。たしかくるみ割り人形。始まってすぐ寝てしまった。今思い出しても申しわけない気持ちになる。

こうして僕は子供の頃にバレエにふれあうチャンスをもらっていたのにそれを避けてしまってそれ以後も一度もバレエにふれぬまま中年になってしまった。

それがグルジアに住み始めてバレエを見に行く機会に恵まれ、居眠りどころかある種の感激につつまれて観劇することになろうとは思わなかった。

というわけで今回はグルジア国立バレエ団の公演を見に行ってきた話です。

(ちなみに撮影禁止のため、劇中の写真はありません。)

バレエを観に行こうと思い立ったきっかけのひとつは今年、トビリシの国立オペラ・バレエ劇場の改修が終わって6年ぶりにリニューアルオープンしたこともある。この劇場は由緒正しき建築でロマノフ王朝時代の1851年に建てられた。隣国のアルメニアやアゼルバイジャンの国立劇場に比べてやや小さいのも、逆により古くに建てられたからだと言ってグルジア人は鼻を高くする。1851年というと日本に黒船が来るより前からグルジア人はバレエをやってるわけか。ヨーロッパに比べればそれだって遅いのだろうけど。
改修された劇場の内装は古びた色合いは消え去り、塗りたての新品感が鼻につくがそれでも見ておいて損はないぞ、と誰かに教えられた。劇場の中というのはバレエなりオペラなりチケットを買わないと入れない。社交場でもある劇場は内装も凝ったつくりをしてるのだろう。たしかにちょっと見てみたい。

劇場外観。上記のニュースによれば劇場総改修費は4000万US$(約45億円!?)かかったとか… 経済的に豊かな国ではないグルジアにとっては物凄い費用だがそこにグルジア人の思い入れがうかがえる

もうひとつのきっかけはニノ・アナニアシヴィリ。グルジアという国を知ろうと思ってネットで情報を集めたことのある人はどこかで一度や二度は名前を目にしてるんじゃないだろうか。リンク先のWikipedia記事にあるとおり、ニノ・アナニアシヴィリは世界的に有名なバレリーナで現在はグルジア国立バレエ団の芸術監督を努めている。日本のバレエファンにも大変人気だそうで日本のさる旅行代理店はニーナに会いに行こう!ツアーをウン十万円で組んだりしているとか。余談になるけど日本語や英語での彼女の表記はニーナ(Nina)だがグルジア語ではნინო(Nino)で二ーナと言っても通じない。 

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