森下

詩を書いて、暮らしています。モノクロフィルムで写真を撮って、イラストを描いています。

森下

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自作詩『家族』

『家族』 家族というのは悲しさの最小単位である 降りつもる雪のような悲しみがある 無邪気な日々は 心の奥底へと沈んでいったが ときおり滲みだしてきては 寂しく胸をし…

森下
3年前
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わすれもの

森下
5か月前

自作詩『つめたい朝』

『つめたい朝』 朝五時に 目が覚めてしまったので 散歩に出かける まだ夢を見ている体の一部が のんびりとあとをついてくる つめたい路地のあちこちに しずかな朝が置…

森下
1年前

自作詩『距離』

『距離』 距離が近くなれば 湿り気が増えるから 近づきたくないけれど 悲しさを感じるのは 離れがたいからだ 近づけないのは 悲しいけれど 引かれあう 仕組みの 星たち 一…

森下
2年前

自作詩『ウソ』

『ウソ』 ランドセルが走っていく 腕をフリフリ走ってく 赤信号につかまって ソワソワと悔しそう 青になった信号の下 パタパタパタと駆け抜けていく ランドセルの子ども…

森下
2年前
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自作詩『ただよう』

『ただよう』 どこにもとどまらず いつまでも漂って 価値のないやつと言われても 夢中で飛んでいる あとは消えるだけでも 知らないふりをして あっちこっちと 漂いつづけ…

森下
2年前
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自作詩『しとしと』

『しとしと』 夜は深い 血は暗い 目で語らい しとしと雨と闇となるまに 病みあがりの目にありあまるひかり 立ちのぼる先にまだ見ぬ月かげ ちからなき時にあてのない風…

森下
2年前

自作詩『川辺のセミ』

『川辺のセミ』 セミの声が響く 川の流れと車の走行音が 溶けていく午後 あのセミの声は何だろうかと 空に耳を傾ける 夏の声だろうか それとも聞かれたくない何かを 隠し…

森下
2年前

自作詩『雨音』

『雨音』 しめった空に雨雲がぶらさがる 夏の午後 ネコのあくびひとつで 崩れ落ちそうな雨の気配に 急かされる家路 玄関を開けて明かりをつける 大気が溢れて空が鳴る ほ…

森下
2年前

自作詩『忘れゆくこと』

『忘れゆくこと』 生まれてみると たくさんのことがあった 何もかもが大きかった 幼稚園の中庭では ブランコに揺れる巨人の影が怖かった 園舎の階段はそびえ立つ壁のよう…

森下
2年前
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お気に入りの色を決める。

「ひとコマの日々」と題して、毎日描いてきたペン画が、そこそこ溜まってきたので、パソコンで色をつけることにしました。 いきなり勝手気ままに色を塗っていくと、とっち…

森下
3年前
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あらためて、日々をかえりみる。

『ひとコマの日々』と題して、毎日1枚、その日のできごとを描いた絵の中から、気に入ったものを並べてみました。 過去の日々はどこかへ過ぎ去っていくようですが、どこへ…

森下
3年前
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自作詩『りんごの味』

自作詩『りんごの味』 リンゴを齧る 甘いような 酸っぱいような 瑞々しいような まさに林檎 のような 感じがする でもいったい これは何味だろうか? りんご味のジュー…

森下
3年前
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ひとコマの日々(288枚)

1日の思い出を「ひとコマ」にする『ひとコマの日々』が 288枚たまりましたので、並べてみました。 寝る前に、その日の印象に残っているできごとをひとコマ描く。 とくにな…

森下
3年前
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自作詩『通り過ぎた場所』

自作詩『通り過ぎた場所』 子どものころは 半径数メートルが 私のすべてだった ちいさな場所に世界が溢れて 毎日を過ごしていた 通学路では遊びを見つけて歩いた 道草の…

森下
3年前
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自作詩『雨の余韻』

自作詩『雨の余韻』 雨の日に 傘をさして歩くと ポツポツとした音が 体の内側へ落ちていく それは天からの おすそわけかもしれない わかりやすいやり方で いつもそうだっ…

森下
3年前
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自作詩『家族』

自作詩『家族』

『家族』

家族というのは悲しさの最小単位である
降りつもる雪のような悲しみがある

無邪気な日々は
心の奥底へと沈んでいったが
ときおり滲みだしてきては
寂しく胸をしめつける
それは生きようとする初期微動だ

昨日や今日の平凡な日常が
宝物であるというのなら
それは案外もろくて
壊れやすいものだ

そんな危ういものを抱えていると
知ってか知らずか生きている
無邪気な笑いがこみあげる

自作詩『つめたい朝』

自作詩『つめたい朝』

『つめたい朝』

朝五時に
目が覚めてしまったので
散歩に出かける

まだ夢を見ている体の一部が
のんびりとあとをついてくる

つめたい路地のあちこちに
しずかな朝が置かれている

ふと見あげると
水色の空に木々の梢がぴたりと貼りついて
ツバメは円を描いて飛んでいる

生け垣の光で頭がいっぱいになると
夢は崩れて溶けていった

なにも考えず
喫茶店に入って
窓辺に座って
熱いコーヒーを啜

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自作詩『距離』

自作詩『距離』

『距離』

距離が近くなれば
湿り気が増えるから
近づきたくないけれど
悲しさを感じるのは
離れがたいからだ
近づけないのは
悲しいけれど
引かれあう
仕組みの
星たち
一瞬

ぶっつかって粉々となって
ゼリーみたいな大気に鎮座

自作詩『ウソ』

自作詩『ウソ』

『ウソ』

ランドセルが走っていく
腕をフリフリ走ってく
赤信号につかまって
ソワソワと悔しそう

青になった信号の下
パタパタパタと駆け抜けていく
ランドセルの子どもたち
カーブの向うに消えてった

大人たちがつくりあげた
ウソみたいな朝は
時間どおりにチャイムが鳴ります
でもそれはウソ
かもしれない
まだ眠い
それがホントウ
かもしれない

いろんなウソが手をとりあって
世の中を動かしている

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自作詩『ただよう』

自作詩『ただよう』

『ただよう』

どこにもとどまらず
いつまでも漂って
価値のないやつと言われても
夢中で飛んでいる

あとは消えるだけでも
知らないふりをして
あっちこっちと
漂いつづける

ゆらゆらとして
評価もされない
地位もなければ
名誉などもない

かって気ままに
すき間からすき間へ
名もない美しさをたずさえて
流れていく

そうして

誰にも知られない
かすかな思いつきを
路地裏にばら撒いて
夜の星々の

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自作詩『しとしと』

自作詩『しとしと』

『しとしと』

夜は深い 血は暗い 目で語らい
しとしと雨と闇となるまに

病みあがりの目にありあまるひかり
立ちのぼる先にまだ見ぬ月かげ

ちからなき時にあてのない風を
過去のない空に忘れて流して

さらさら吹き散る砂の塔
ころころ転がるかりん糖
心の消え去る彼に問う

夜は暗い血は深い目で語らい
しとしと雨と闇となるまで

自作詩『川辺のセミ』

自作詩『川辺のセミ』

『川辺のセミ』

セミの声が響く
川の流れと車の走行音が
溶けていく午後

あのセミの声は何だろうかと
空に耳を傾ける
夏の声だろうか
それとも聞かれたくない何かを
隠しているのだろうか

あるいは何も鳴いていないので
私たちは夏の寂しさに耐えかねて
鳴り物を鳴らしはじめたのかもしれない

何が寂しかったのだろう
この蒸し暑いさなかに
黙って汗も流れて生きているのに

セミの声が私の胸をつきぬけて

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自作詩『雨音』

自作詩『雨音』

『雨音』

しめった空に雨雲がぶらさがる
夏の午後
ネコのあくびひとつで
崩れ落ちそうな雨の気配に
急かされる家路

玄関を開けて明かりをつける
大気が溢れて空が鳴る
ほっとして坐って菓子パンをほおばる
ささやかな昼時

パンのくずがこぼれて落ちて
大きな雨粒が
ゆっくりと
地面をたたきはじめる
あぁ濡れずにすんだ……と
誇らしげにパンを齧る

薄墨の滲んだような町に
ふと
子どもたちの声が響く

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自作詩『忘れゆくこと』

自作詩『忘れゆくこと』

『忘れゆくこと』

生まれてみると
たくさんのことがあった
何もかもが大きかった

幼稚園の中庭では
ブランコに揺れる巨人の影が怖かった
園舎の階段はそびえ立つ壁のようで
足を精一杯ふりあげてのぼった

大人用のイスに坐っては足をプラプラ遊ばせて
鼻歌まじりに思いつくままおしゃべりをした
口いっぱいにリンゴもほおばった
そうしてイスから落ちて泣いた
泣き顔はうそ泣きになって笑顔になった

いいこと

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お気に入りの色を決める。

お気に入りの色を決める。

「ひとコマの日々」と題して、毎日描いてきたペン画が、そこそこ溜まってきたので、パソコンで色をつけることにしました。

いきなり勝手気ままに色を塗っていくと、とっちらかっていくので、最初に色を決めてしまいます。今回は赤、黄、緑、青、紫の色相にそれぞれ明暗をつけて24色の色を決めました。

色を作るときのイメージとして、
・平凡な日常のフラット感
・ちょっとした楽しみのポップ感
を目指しました。
それ

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あらためて、日々をかえりみる。

あらためて、日々をかえりみる。

『ひとコマの日々』と題して、毎日1枚、その日のできごとを描いた絵の中から、気に入ったものを並べてみました。

過去の日々はどこかへ過ぎ去っていくようですが、どこへ過ぎ去ったのかは、わかりません。「日々」というものは、ひとつの直線の上に並んでいるわけではありませんが、こうして並べてみると、過去のあの日やあの日をいったりきたりできるようです。

そうしてみてみると、ある日とある日が繋がったり、重なり合

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自作詩『りんごの味』

自作詩『りんごの味』

自作詩『りんごの味』

リンゴを齧る
甘いような
酸っぱいような
瑞々しいような
まさに林檎
のような
感じがする

でもいったい
これは何味だろうか?

りんご味のジュース
りんご味のキャンディなど
世の中にりんご味のアレコレは数あれど
当のリンゴはりんご味ではない

リンゴを食べて
「あー、りんご味だ」
などと思ったことはない

甘酸っぱいだの
シャクシャクしているだの
思いながら
リンゴその

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ひとコマの日々(288枚)

ひとコマの日々(288枚)

1日の思い出を「ひとコマ」にする『ひとコマの日々』が
288枚たまりましたので、並べてみました。

寝る前に、その日の印象に残っているできごとをひとコマ描く。
とくになにもない日は、とりあえず食べ物の絵になったりします。

特別なことをするわけでもなく、普段どおりの日常を記していくのですが、しばらく続けてみたところで、ただの絵日記だと気づきました。

とくに「気づき」もなければ「ハウツー」もありま

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自作詩『通り過ぎた場所』

自作詩『通り過ぎた場所』

自作詩『通り過ぎた場所』

子どものころは
半径数メートルが
私のすべてだった
ちいさな場所に世界が溢れて
毎日を過ごしていた

通学路では遊びを見つけて歩いた
道草の黄色いたんぽぽは
別のたんぽぽを探す原動力となった
「この道はどこまでも続いている」
などとは思いもせず
道ばたに現れる黄色い花を
ただおもしろがっていた
私にとってそこは「道」ではなく
遊びの「場所」だった

大人になるにつれて

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自作詩『雨の余韻』

自作詩『雨の余韻』

自作詩『雨の余韻』

雨の日に
傘をさして歩くと
ポツポツとした音が
体の内側へ落ちていく

それは天からの
おすそわけかもしれない
わかりやすいやり方で
いつもそうだった

私が私になる前から
いつだってそうだった
だからおんぶにだっこで
この世に現れたのだ

 胸の底に静かに置かれた
 満たされない無数の空洞が
 古びた記憶の断片に
 そっと目配せをしている

 気にせずに行ってしまえ
 目の

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