『家族』 家族というのは悲しさの最小単位である 降りつもる雪のような悲しみがある 無邪気な日々は 心の奥底へと沈んでいったが ときおり滲みだしてきては 寂しく胸をし…
『つめたい朝』 朝五時に 目が覚めてしまったので 散歩に出かける まだ夢を見ている体の一部が のんびりとあとをついてくる つめたい路地のあちこちに しずかな朝が置…
『距離』 距離が近くなれば 湿り気が増えるから 近づきたくないけれど 悲しさを感じるのは 離れがたいからだ 近づけないのは 悲しいけれど 引かれあう 仕組みの 星たち 一…
『ウソ』 ランドセルが走っていく 腕をフリフリ走ってく 赤信号につかまって ソワソワと悔しそう 青になった信号の下 パタパタパタと駆け抜けていく ランドセルの子ども…
『ただよう』 どこにもとどまらず いつまでも漂って 価値のないやつと言われても 夢中で飛んでいる あとは消えるだけでも 知らないふりをして あっちこっちと 漂いつづけ…
『しとしと』 夜は深い 血は暗い 目で語らい しとしと雨と闇となるまに 病みあがりの目にありあまるひかり 立ちのぼる先にまだ見ぬ月かげ ちからなき時にあてのない風…
『川辺のセミ』 セミの声が響く 川の流れと車の走行音が 溶けていく午後 あのセミの声は何だろうかと 空に耳を傾ける 夏の声だろうか それとも聞かれたくない何かを 隠し…
『雨音』 しめった空に雨雲がぶらさがる 夏の午後 ネコのあくびひとつで 崩れ落ちそうな雨の気配に 急かされる家路 玄関を開けて明かりをつける 大気が溢れて空が鳴る ほ…
『忘れゆくこと』 生まれてみると たくさんのことがあった 何もかもが大きかった 幼稚園の中庭では ブランコに揺れる巨人の影が怖かった 園舎の階段はそびえ立つ壁のよう…
「ひとコマの日々」と題して、毎日描いてきたペン画が、そこそこ溜まってきたので、パソコンで色をつけることにしました。 いきなり勝手気ままに色を塗っていくと、とっち…
『ひとコマの日々』と題して、毎日1枚、その日のできごとを描いた絵の中から、気に入ったものを並べてみました。 過去の日々はどこかへ過ぎ去っていくようですが、どこへ…
自作詩『りんごの味』 リンゴを齧る 甘いような 酸っぱいような 瑞々しいような まさに林檎 のような 感じがする でもいったい これは何味だろうか? りんご味のジュー…
1日の思い出を「ひとコマ」にする『ひとコマの日々』が 288枚たまりましたので、並べてみました。 寝る前に、その日の印象に残っているできごとをひとコマ描く。 とくにな…
自作詩『通り過ぎた場所』 子どものころは 半径数メートルが 私のすべてだった ちいさな場所に世界が溢れて 毎日を過ごしていた 通学路では遊びを見つけて歩いた 道草の…
自作詩『雨の余韻』 雨の日に 傘をさして歩くと ポツポツとした音が 体の内側へ落ちていく それは天からの おすそわけかもしれない わかりやすいやり方で いつもそうだっ…
森下
2020年6月5日 23:09
『家族』家族というのは悲しさの最小単位である降りつもる雪のような悲しみがある無邪気な日々は心の奥底へと沈んでいったがときおり滲みだしてきては寂しく胸をしめつけるそれは生きようとする初期微動だ昨日や今日の平凡な日常が宝物であるというのならそれは案外もろくて壊れやすいものだそんな危ういものを抱えていると知ってか知らずか生きている無邪気な笑いがこみあげる
2023年11月24日 00:38
2022年7月27日 21:31
『つめたい朝』朝五時に目が覚めてしまったので散歩に出かける まだ夢を見ている体の一部がのんびりとあとをついてくる つめたい路地のあちこちにしずかな朝が置かれている ふと見あげると水色の空に木々の梢がぴたりと貼りついてツバメは円を描いて飛んでいる 生け垣の光で頭がいっぱいになると夢は崩れて溶けていった なにも考えず喫茶店に入って窓辺に座って熱いコーヒーを啜
2022年2月1日 00:35
『距離』距離が近くなれば湿り気が増えるから近づきたくないけれど悲しさを感じるのは離れがたいからだ近づけないのは悲しいけれど引かれあう仕組みの星たち一瞬ぶっつかって粉々となってゼリーみたいな大気に鎮座
2021年11月28日 21:45
『ウソ』ランドセルが走っていく腕をフリフリ走ってく赤信号につかまってソワソワと悔しそう青になった信号の下パタパタパタと駆け抜けていくランドセルの子どもたちカーブの向うに消えてった大人たちがつくりあげたウソみたいな朝は時間どおりにチャイムが鳴りますでもそれはウソかもしれないまだ眠いそれがホントウかもしれないいろんなウソが手をとりあって世の中を動かしている
2021年11月8日 22:39
『ただよう』どこにもとどまらずいつまでも漂って価値のないやつと言われても夢中で飛んでいるあとは消えるだけでも知らないふりをしてあっちこっちと漂いつづけるゆらゆらとして評価もされない地位もなければ名誉などもないかって気ままにすき間からすき間へ名もない美しさをたずさえて流れていくそうして誰にも知られないかすかな思いつきを路地裏にばら撒いて夜の星々の
2021年11月8日 22:24
『しとしと』夜は深い 血は暗い 目で語らいしとしと雨と闇となるまに病みあがりの目にありあまるひかり立ちのぼる先にまだ見ぬ月かげちからなき時にあてのない風を過去のない空に忘れて流してさらさら吹き散る砂の塔ころころ転がるかりん糖心の消え去る彼に問う夜は暗い血は深い目で語らいしとしと雨と闇となるまで
2021年10月3日 14:15
『川辺のセミ』セミの声が響く川の流れと車の走行音が溶けていく午後あのセミの声は何だろうかと空に耳を傾ける夏の声だろうかそれとも聞かれたくない何かを隠しているのだろうかあるいは何も鳴いていないので私たちは夏の寂しさに耐えかねて鳴り物を鳴らしはじめたのかもしれない何が寂しかったのだろうこの蒸し暑いさなかに黙って汗も流れて生きているのにセミの声が私の胸をつきぬけて
2021年10月2日 15:20
『雨音』しめった空に雨雲がぶらさがる夏の午後ネコのあくびひとつで崩れ落ちそうな雨の気配に急かされる家路玄関を開けて明かりをつける大気が溢れて空が鳴るほっとして坐って菓子パンをほおばるささやかな昼時パンのくずがこぼれて落ちて大きな雨粒がゆっくりと地面をたたきはじめるあぁ濡れずにすんだ……と誇らしげにパンを齧る薄墨の滲んだような町にふと子どもたちの声が響く
2021年8月16日 21:14
『忘れゆくこと』生まれてみるとたくさんのことがあった何もかもが大きかった幼稚園の中庭ではブランコに揺れる巨人の影が怖かった園舎の階段はそびえ立つ壁のようで足を精一杯ふりあげてのぼった大人用のイスに坐っては足をプラプラ遊ばせて鼻歌まじりに思いつくままおしゃべりをした口いっぱいにリンゴもほおばったそうしてイスから落ちて泣いた泣き顔はうそ泣きになって笑顔になったいいこと
2021年5月8日 00:26
「ひとコマの日々」と題して、毎日描いてきたペン画が、そこそこ溜まってきたので、パソコンで色をつけることにしました。いきなり勝手気ままに色を塗っていくと、とっちらかっていくので、最初に色を決めてしまいます。今回は赤、黄、緑、青、紫の色相にそれぞれ明暗をつけて24色の色を決めました。色を作るときのイメージとして、・平凡な日常のフラット感・ちょっとした楽しみのポップ感を目指しました。それ
2021年4月22日 23:52
『ひとコマの日々』と題して、毎日1枚、その日のできごとを描いた絵の中から、気に入ったものを並べてみました。過去の日々はどこかへ過ぎ去っていくようですが、どこへ過ぎ去ったのかは、わかりません。「日々」というものは、ひとつの直線の上に並んでいるわけではありませんが、こうして並べてみると、過去のあの日やあの日をいったりきたりできるようです。そうしてみてみると、ある日とある日が繋がったり、重なり合
2021年4月21日 17:54
自作詩『りんごの味』リンゴを齧る甘いような酸っぱいような瑞々しいようなまさに林檎のような感じがするでもいったいこれは何味だろうか?りんご味のジュースりんご味のキャンディなど世の中にりんご味のアレコレは数あれど当のリンゴはりんご味ではないリンゴを食べて「あー、りんご味だ」などと思ったことはない甘酸っぱいだのシャクシャクしているだの思いながらリンゴその
2021年4月18日 20:18
1日の思い出を「ひとコマ」にする『ひとコマの日々』が288枚たまりましたので、並べてみました。寝る前に、その日の印象に残っているできごとをひとコマ描く。とくになにもない日は、とりあえず食べ物の絵になったりします。特別なことをするわけでもなく、普段どおりの日常を記していくのですが、しばらく続けてみたところで、ただの絵日記だと気づきました。とくに「気づき」もなければ「ハウツー」もありま
2021年4月16日 21:39
自作詩『通り過ぎた場所』子どものころは半径数メートルが私のすべてだったちいさな場所に世界が溢れて毎日を過ごしていた通学路では遊びを見つけて歩いた道草の黄色いたんぽぽは別のたんぽぽを探す原動力となった「この道はどこまでも続いている」などとは思いもせず道ばたに現れる黄色い花をただおもしろがっていた私にとってそこは「道」ではなく遊びの「場所」だった大人になるにつれて
2021年3月13日 20:17
自作詩『雨の余韻』雨の日に傘をさして歩くとポツポツとした音が体の内側へ落ちていくそれは天からのおすそわけかもしれないわかりやすいやり方でいつもそうだった私が私になる前からいつだってそうだっただからおんぶにだっこでこの世に現れたのだ 胸の底に静かに置かれた 満たされない無数の空洞が 古びた記憶の断片に そっと目配せをしている 気にせずに行ってしまえ 目の