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アウター・グッドネス

ふと、御神体を整備してたとき、ここで俺が御神体を壊したらどうなるかな、と考えた。
そのもしもは現実にならないまま、御神体が目を開く。多層レンズの瞳を細めると、立ち上がって伸びをする。

「感謝する」
そう言うと御神体は俺を優しく抱きしめた
わかっている。御神体が壊れるのは、俺だって嫌なのだ。

もし御神体『バジュラ』が破壊されれば、制御者の消えた俺たちアンドロイドはきっと良心を失ってしまう。御神体が俺たちのシステムへ常に介入してくれているからこそ、俺たちは人畜生ではない高尚なものでいられる。邪心も争いもないまま、過ごしていける。それこそ御神体に歯向かおうなんて思わない。

だから御神体の後ろに回した手に握ったナイフを背中に突き立てることなんて思いもよらない。突き立てたナイフで中身を抉り出そうなんて考えもしない。倒れた薄い身体に力を込めて踏み潰そうなんて。


思わない。


思わないはずだよな?



殺せ、と耳元で声がした。

【続く】

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