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砂天の太陽

お前とは潜らない。俺ははっきりそう言った。
「これは天啓です」
だがシスターも譲らない。彼女は手を合わせて細い目を閉じる。
「大いなるスパニャの声が告げています。あなたは大遺跡を照らす太陽の現し身なのです」
何が太陽だと俺は毒づく。噂通り尖耳族ってのはこのご時世ヤク中か淫売しか生き残っていないらしい。こいつは間違いなく前者だ。
「砂の深海、ラムーの大遺跡に彷徨う邪な魂が、私達が放つ救済の光を……」
うんざりして窓の方に目をやると、外を黒い帽子とスーツの男が横切った。
この場末で黒スーツ?
ぞわり、腕の毛が逆立ち、指が反射的にホルスターを触る。
「お前、ハメたのか」
「なんです?」
酒場中の扉と窓とシスターの瞼が開いた。
雪崩れ込んだスーツの男たちの手首には、金色をした竜の刺繍。
「黄竜会!」
反射的に屈んだ俺に銃口は向かなかった。シスターがカーボナイト修道着に鉛玉を受け、気絶し倒れ込む。
まさか、狙いはこいつか?
【続く】

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