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食文化のあれこれ

日本は「日本食」という食文化で知られていますが、実際に長年旅をしていると東西南北、ありとあらゆる地域において様々な食文化があります。
ただ、近年、メディアなどによる「東京=日本の食文化」という流れが強く、おかしな統一感が一般化しており危機感を覚えることが多いです。

そこで、日本の食文化について少しだけ述べてみたいと思います。
もちろん、「食」は好みの問題であり、あくまで私の個人的な感想であることをあらかじめお断りしておきます。
また文化である以上、食は変化するものでもあるので、全てを否定しているわけではありません。

日本にはラーメン文化があります。
本来、中国から伝わってきたものですが、日本で独自に発展を遂げました。
アジア諸国では日本のラーメンが人気の料理となって久しいと思います。
しかし大昔のブーム以来、ずーーっと何十年も気になっていることがあります。

それはラーメンがスープ料理になっていることです。
私はラーメンは麺料理だと思っています。
しかし、ありとあらゆるメディアでは、ラーメンの最大の魅力はスープにあるというような紹介がなされています。
みなさん、手打ち麺のラーメンをご存じでしょうか。
確か山形県では手打ち麺のラーメンが多いと聞きましたが、手打ち麺のラーメンは一般的なラーメンと比較してその旨さは圧倒的です。
手打ち麺はスープうんぬんの比較レベルではなく、もはや絶対的な旨さに影響を与えるレベルです。
ところがメディアにおけるラーメンの紹介や、ラーメン通の話には麺が手打ちであるかどうかといった話はほぼ出てきません。

不思議です。

本来主役である麺の話ではなく、ほぼ全部スープの話なんです。
こういった妙な逆転現象は、ほかにもあります。

例えば「たいやき」。
必ずたいやきの紹介では、尾っぽまであんが詰まっているかどうか、どのくらい沢山あんが詰まっているか、そういう内容が重要視されています。
しかし、私はたいやきはあんを食べるものではなく、本来、ガワの部分をあんの味付けで美味しくいただくものだと思っています。
尾っぽの部分も、あんは必要ではなく、ガワのパリパリとした風味を楽しむもので、そもそもあんがどれほど多く詰まっているかなんて全く重要ではないと思っています。
あんで膨れ上がって、うっすーーーいガワのたいやきが、メディアではもてはやされているのですが、もはやそれは「たいやき」ではなく「あん」を食べているだけだと思います。

これに似ているのが「シュークリーム」です。
シュークリームは、本来、シューをクリームの味付けで楽しむものですが、やはりどれほどたくさんクリームが詰まっているか、多くの人にとってはそこが重要みたいです。
持った瞬間にクリームの重みがずっしりくるような、クリームがこれでもかと詰まったシュークリームこそが、一流であると紹介されます。

それならクリームだけ買って食っとけ!

なんて思ったりもします。

この例にちなんであんパンやクリームパンも同じです。
パンの持つ旨味なんて、ほぼ無視です。

さらには「あん餅」も同じです。
私は自他共に認めるほどの米と餅好きでして、全ての食材の中で最も美味しいものは「米」と答えるほど、米と餅が好きです。
あんだらけで餅がうっすーーいやつは、ほんとに許せません。
あんだらけの餅は食べた瞬間に「うっ!?」ときます。
まるであんだけを手に取って大量に食べているようで、餅の旨さなんかほとんどないのです。
あん餅の主役は「餅」です。
思うに、餅の純粋な甘みを感じることのできる人が減っているのではないか?米だけを食べたときに、米の甘みを感じれない人が増えているのではないか?
そんな不安を抱くのです。

料理はバランスが全てだと思います。
日本料理の凄さは、その洗練されたバランス感覚にあると思うのです。

極端に甘いだけ、辛いだけ、濃いだけ、多いだけ、そういった料理は誰でも作れます。
しかし様々な旨味を絶妙なバランスによって仕上げるのは、一握りのプロにしかできないことです。
近年、この絶妙なバランスを感じる力が、日本人は落ちてきているのではないかと危惧しています。
地方に行くと、実に興味深い、絶妙で複雑な、もしくは微妙でシンプルな味付けの風土料理がたくさんあります。
しかし、現代の人は、これらの旨さを感じるのが難しくなっているようで、「何が美味しいのかわからない」という人が多数いるようです。
旅を楽しむには、味覚を鍛えることが必須です。

例えばご飯の炊き方ひとつをとっても、鹿児島では少し水っぽく炊かれることが多いのですが、そういった変化を文化として感じることができるかどうか、そこが旅を楽しむポイントのひとつになってきます。

是非とも地方をたくさん旅して、東京以外の食文化に触れて、日本の食文化の奥の深さを感じて欲しいと思います。


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