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+レンズ1本で始める、野生動物撮影  <レンズ編> #08

今日はめずらしく、撮影機材のお話です。
「野生動物写真って、撮ったことないけど始めてみたい」という方に、是非読んでいただきたい記事です。特に、普段一眼で撮影を楽しんでいる方。レンズ一本あれば世界は変わる。動物撮影の世界って、実は、そんなに遠い世界じゃないんです。

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△ アナグマ。少し山に入れば出会える、遠い様で、身近な野生動物 △

大砲のような大口径レンズを手に、自然を求めて遠い撮影地へ…。
野生動物の撮影って、そういうイメージがあるのかもしれません。
でも、このマガジン"自然写真家のnote"でお伝えしてきた通り、
実はあなたが暮らす街中でも、すぐそばに自然や野生動物を見つけることはできるはず。

そして、次に機材。動物撮影にはやはり望遠レンズは欠かせません。
望遠レンズって、大きくて高価…。ハードル高いイメージありますよね。
高価で高性能な大口径の超望遠レンズがあればもちろん、画質的には申し分ないのですが、デジタルカメラの性能が飛躍的に上がった昨今、比較的安価な望遠ズームレンズでも、充分に動物撮影を楽しむことができるんです。
普段、スナップやポートレイトを楽しんでいるカメラに、一本の望遠レンズをつければ、見える世界・被写体が全く変わってきます。そんな別世界を味わうのも、レンズ交換式カメラを使いこなす一つの醍醐味でしょう…!
というわけで、まずは機材のことから、お話ししてみましょう。

■ なぜ大口径超望遠レンズが必要だったのか

動物撮影において、乗り越えるべき大きな障壁が2つあります。
まず一つめは距離。当たり前ですが野生動物は警戒心が人間や、一緒に暮らすペットなどの動物に較べて非常に強いです。だから近づくのが難しい。小鳥の様な小さな被写体を大きく写そうとするなら、尚更です。反対にクマなどの大型動物であれば、危険を避けて距離をとる必要がある。もちろん彼等動物たちにプレッシャーを与えずに撮影するという気遣いも必要です。そんなわけで、500mmとか600mmとか、長い焦点距離が必要なんですね。
とうわけで、見た目も長いレンズが必要になってくるわけです。

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△ 薄暗い条件の中、大口径超望遠レンズ(500mm/F4)で撮影 △

そして二つめは
動物の活動が活発になるのは多くの場合「薄明薄暮」といわれる薄暗い時間帯。まぁ、平たく言えば明け方と夕方ですね。魚釣りをする人はよく言うんですが「朝まずめ」と「夕まずめ」って、魚が釣れる時間帯なんですよね。動物たちが活発になる。それから時間帯だけじゃなくて例えば森の中での撮影だと、日中でも木々の梢に陽の光が遮られて薄暗い。
しかし筒の長い望遠レンズは設計上、暗くなりがちです。そこを解決するために、ちょっと専門用語なんですが「解放F値」が明るいレンズが必要になってくる。ものすごいザックリ言ってしまうと、薄暗い中でもたくさん光を取り込めるように、レンズを大きくした設計ということ。
そういうわけで長いレンズが、さらに太くなって大口径超望遠レンズ、デカイ!となってしまうわけです。値段もデカイです。

ちなみに上のインスタグラムの写真、左が現在僕のメインレンズである500mm/F4という大口径レンズ、右は70-200mm/F2.8というレンズですが、これからご紹介する、もう少し焦点距離の長い望遠ズームも同じようなサイズ感だと思ってくださって、だいたいOKです。
サイズの差、激しいですよね。お値段もです。汗)

■ デジタル化が可能にした、新しい動物撮影

大口径超望遠レンズの大きさ、高価さは、動物撮影の敷居を、とてもとても高いものにしていました。ですが今なら、そういったレンズが無くても、ある程度の動物撮影は可能になりました。それはなぜか。

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△ 後述する望遠ズームレンズ(80-400mm)で撮影したもの △

やはりこれもデジタル化の恩恵なのですが、革命はまず、カメラのボディ側に起こります。フィルム時代は原則固定だったISO感度というものをスイッチひとつで自在に変えられるようになり、これが撮影を変えます。
感度、ざっくり言うと光に対する敏感さで、高感度になると少ない光でも敏感に感じ取って、明るい写真にすることができるんですね。その代わりノイズが出る。モノクロとかでよく見る、ザラザラしたヤツです。ところがテクノロジーの進歩は、そのノイズを抑え込み、高感度で低ノイズの写真撮影を可能にします。
だったら、でっかくて明るいレンズじゃなくても良い感じに撮れるじゃん?というのが今の時代なのです。
さらに、安価で焦点距離の長い(望遠効果の高い)ズームレンズが発売され、より動物写真は身近になりました。動物撮影は、一部の人のものではなくなってきたのです。

■ 動物撮影の第一歩に最適な「望遠ズーム」とは?

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というわけで、望遠ズームレンズとその作例をご紹介していきましょう。
まずはこの写真。都内の河川で見つけたカワセミを撮影したものですが、どうでしょう?解像度しっかりしていませんか?望遠レンズの課題は画質と焦点距離(望遠効果)。構図の良し悪しは撮り手のウデなのでともかく 汗)、ボヤけたり遠すぎたり、そんな風に見えなければ、合格です。使ったレンズはニコンの200-500mm/F5.6というレンズです。

上記リンク先には作例もあるので、ぜひ覗いてみてください。
お値段ですが、それはこちらで。

特別シビアな状況じゃなければ、これで充分、高いレベルでの野生動物撮影が楽しめると思うんですよね。
お値段高いですか?確かに普通のレンズに較べればちょっと高いかもしれませんが、望遠の中では格安の部類に入ります。そして、今までとは全く違う撮影の世界が手に入るので、そう高すぎることはないでしょう。

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これは北海道での撮影ですが、こちらも200-500mm。価格が何倍もする大口径レンズに、さほど見劣りしないと個人的には思えます。

それからもう一つ。

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これも都内というか、自宅のそばで撮影したもの。
メジロの毛並み?羽?も良く解像しています。使ったレンズはこちら。

80-400mmということで前述のレンズより少し短く、お値段も高くなりますが、画質の良さに加え、80mmからとズーム域は広く、風景などにも重宝します。

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200-500mmが発売される前は、僕もこの一本で何でも撮っていた記憶がありますね。とにかく汎用性の高いレンズです。

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ちなみに、ズーム域の広いこのレンズは、被写体との距離が目まぐるしく変わるクルーズ船での撮影に向いています。あっという間に近づいたり遠くに去ったり、シャチは動きの速い被写体。こういう場合にも便利なレンズなんです。

遠い被写体を少しでも大きく写したい場合、狙う被写体が小鳥などの小さなものが多くなりそうな場合は200-500mm、景色なども視野に入れて幅広く撮りたいなら80-400mmといったところでしょうか。
全く新しい世界に第一歩を踏み出すことを考えている皆さんには、お値段的にも安価な200-500mmがオススメかもしれません。

もちろん、この2本のレンズは、僕自身の撮影機材としてもバリバリの現役です。先に述べたように被写体との距離が目まぐるしく変わる場合や、移動距離が長く、テント泊での撮影など、軽量化が必要な時に重宝しています。
軽くて扱い易いというのも、手振れに注意が必要な望遠レンズでの撮影には強みになります。2本とも長く使えるレンズと言えると思います。

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ちなみに望遠レンズがあれば、こんなシチュエーションでも、重宝します…。もちろん僕も、家庭内では撮影係。笑)

そうそう、僕はニコン使いですが、他のメーカーさんでも、もちろん望遠ズームレンズはラインナップされています。

キヤノンの100-400mm、ソニーの200-600mmなどが先に挙げたニコンのズームレンズに相当しますね。

…しまった、レンズの話してたら、それだけでこんな文字数になってしまいました…。ということで、今日はこの辺でまとめます。笑)

いかがでしょうか。本格的な動物撮影を始めるのにまず必要なのは
あなたが今お使いのカメラに一本レンズを足すことだけ
です。
たしかに奥深い世界かも知れません。でも高い山ですが、登山口は開けています。是非ぜひ検討してみてください。

次回は、実際に初めての望遠ズームでの撮影の仕方・被写体別のコツなどをご紹介できればな、と思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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