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自分自身のコンパスで楽しい航海を

執筆者:光

外国人の元夫と離婚したのは、息子6歳、娘2歳の頃。

原因は元夫のあまりの身勝手さ。子どもたちに愛情はある。ただ父親としての覚悟がなく、安定した仕事も住む場所も決まらない。そして何事もひとりで決めて事後報告。

子どもを抱えて日本と海外を行ったり来たり、振り回されてきた。何度も子供たちの為にと踏みとどまった。我慢を続けてきた。もう限界だとほぼ心は決まりつつも、最後にもう一度希望を持って寄り添ってみよう、そんな中に最大の裏切り、無責任さを突きつけられ、離婚を決意した。

すでに日本にいた為、アルバイトもある、保育園も行ける、実家にも住める。ライフラインは確保できていて、先の見えない状態での海外生活より安心だった。

ひとり親として生きていく覚悟が決まってから、心は楽になった。家族や友達、相手の両親でさえ私の味方だった。これがベストだと応援してくれた。

ただ、元夫は納得がいかず、攻撃が始まった。

私のしている事は違法だという弁護士からの手紙、私のSNSにログインし誤解を招くような投稿、離婚後の様々な条件を自己決定し文書で送付。私にとっては全て脅しのようで、不安と恐怖で心が縮んだ。友達からの着信があるだけで、心臓がドキドキし怯えていた。元夫への不信感や恨みは増していき、私の心の扉は完全に閉ざされた。

幸い英語ができる両親が壁になり、私は安全な場所で平穏な日常を取り戻していった。アルバイトをいくつか掛け持ちしながら、忙しい日々を元気に過ごしていた。

ただ、子育ても仕事も毎日必死、聞かん坊の長男に手を焼きつい声を荒げてしまう事も少なくなかった。

人生を失敗してしまったという感覚が、いつもどこかにあった。

方位磁針もない船頭さん不在のボートで荒波を航海している気分だった。

短大を卒業して企業に就職し、安定した収入と楽しいアフターファイブで充実していた20代。ある意味レールの上を歩いて来た私が、初めて道を踏み外した感覚だった。仕事もアルバイトで、20代の頃より収入が低く、自信を喪失していた。

自分以外の世の中の人たちが、とても有能に思えた。町にあるポスターを見れば、才能のある方が作ったデザインなんだなぁ、TVを見れば、編集など裏方のお仕事でさえ、能力が羨ましいなぁと無力感を感じた。

自分はどこへ進んでいるんだろう。まるで漂流しているようだった。

それでもできる事を日々やっていった。目の前の事をこなしていくだけで、あっという間に時は経ち、子どもたちもどんどん成長していく。

そんな中、世の中がコロナ禍となった。様々な制限で大変な面もあったが、嬉しい事がたくさんあった。私の人生を変えるキッカケも、この時期にうまれた。

オンライン講座だ。身支度も移動も必要がない、子育て中の親にはもってこいだ。

様々なイベントや講座に出逢った中で、シングルマザー向けのセルフケアがあった。はじめは少し緊張したが、優しい先生が受け入れてくれ、他の参加者の方たちも温かく、安心できる場所がそこにはあった。ストレッチで身体を伸ばし、対話の時間にママたちとおしゃべりし、心も身体も軽くなった。

大きな収穫は、今まで自分のケアをおざなりにしてきた事に気づいた事。

もっと自分を大事にしよう。必死にタスクをこなすだけでなく、自身の内側に目を向けよう。

まだまだ忙しいながらも、ふっとそこに意識を戻す事ができると、確実に日々が変わっていった。仕事も生活も変わっていないが、気づけば自信を取り戻している。

驚いたのは、自分の意識だけではなく、自分が変わることで周りにも変化が起きた事。

元夫への恨みがいつの間にか消えているかも、と感じていたその頃、彼から手紙が届いた。自分のしてきた事への反省や謝罪の言葉。これまでで初めての事だった。

絶対に許せない、一生会う事も話す事もないだろうと心を閉ざしていた私が、いつの間にか扉を開き受け入れていた。前までなら手紙を開く事すらなかっただろう私に慈悲の心が芽生えていた。

4年ぶりに元夫とコンタクトをとり、オンラインで話した。そこには親子4人の笑い声があった。空白の4年間を埋めたその瞬間に心動かされ、画面から離れて密かに涙した。

自分を整え、目の前の事に感謝をして機嫌よく過ごしていると、違う世界が見える。

自身の外側だけ見て必死に過ごしていると見過ごしてしまう世界だ。

この経験を通して、心も身体も整えるセルフケアの大切さを身に染みて感じている。

ノンストップで進む、行き先もわからない航海はキツく苦しい。時々止まって休憩し、周りの美しい景色に気づく。そうやって自分に栄養を与えながら笑って進んでいきたい。

そんな航海ならきっと楽しく続けられるだろう。

1人でも多くのシングルマザーがセルフケアに出会い、少しでも楽な世界に生きられる事を心から願っている。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。このエッセイは、NPO法人シングルマザーズシスターフッドのMother's Dayキャンペーンのために、シングルマザーの光さんが執筆しました。
このキャンペーンでは、ひとりとして同じ人はいない、個性あふれるシングルマザーたちのかけがえのない素顔を祝福し「自分を大切にすること」「セルフケアの大切さ」を呼びかけています。「こういう支援て大事よね」と応援してくださる方にはぜひ、ご寄付をお願いしております。ぜひ、Mother's Dayキャンペーン応援ページもご覧ください。

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