石油会社のシェルは、なぜ貝殻のロゴなのか?
シェルの貝殻は、日本と深い関係がある?
シェル(SHELL)と言えば、遠くからでもひと目でわかる貝殻のマークがシンボルとなっています。
石油事業、日本でもガソリンスタンドで有名なシェルですが、どうして貝殻がモチーフに選ばれているかご存じでしょうか?
その理由には、日本が大きく関係しているのです。
横浜の海岸で拾った貝殻を加工し、英国で売り捌く
シェルはオランダに本拠地を置くロイヤル・ダッチ・シェルの国際グループ企業。
そのロイヤル・ダッチ・シェルの前身にあたるのがサミュエル商会です。
創業者のイギリス人、マーカス・サミュエルは18歳の時に横浜の港に降り立ちます。
サミュエルは高校を卒業したときのプレゼントとして、父から極東へ行く船の片道切符を渡されたのでした。
彼は無人小屋にもぐり込んで毎日、漁師たちが海岸で砂を掘っている姿を眺めていました。
そして、漁師たちが貝を食べ終わったあとの貝殻を拾ってみると、その美しさに魅了されます。
これをボタンやブローチに加工したら、イギリスで売れるかも。そう考えたサミュエルは、タダ同然で拾い集めた貝殻を加工し、イギリスにいる父に送りました。
サミュエルの目論見どおり、美しい貝殻の加工細工は飛ぶように売れ、複数の店舗を展開するほどビジネスは成長。サミュエル商会を立ち上げ、その勢いのまま輸出入事業を始めると、これまた成功し、一代で大きな財を成します。
そしてマーカスの息子たちの世代になる頃から、今のメイン事業である石油事業に乗り出したのです。
「初心を忘れない」という気持ちを、社名とロゴに込める
サミュエル商会は石油事業の社名を決める際、サミュエルが貝殻を販売していた頃の初心を忘れないように「シェル」という言葉を入れ、ロゴマークには貝のデザインを用いました。
初代ロゴはリアルなムール貝でした。
ムール貝からホタテ貝へ。そして、どんどんシンプルに
デザインがムール貝からホタテ貝に変更されたのは、1904年のこと。「ペクテン」と呼ばれるホタテ貝の種類から、「ペクテンマーク」と呼ばれるようになりました。
ペクテンマークは長年の間にその姿を少しずつ変化させています。
1915年には色のついたバージョンが初めてカリフォルニアのガソリンスタンドに登場し、1940年代からは「SHELL」の文字が貝殻の中に描かれるようになります。
1950年代から、貝殻のデザインはシンプルになっていきます。
そして、1999年。ブランド認知が世界的に広まったことを受けて「SHELL」の文字はロゴから消えました。
ブランド名がなくても誰もがシェルだと認識できるペクテンマークは、世界の偉大なシンボルマークのひとつだと言われています。
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