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「インテル入ってる」が世界に広めた、イングリーディエント・ブランディングとは?

本日紹介するのは、近代マーケティングの父フィリップ・コトラーと、マーケティング界の名門フォルツハイム大学のファルチ・ヴァルデマール教授による名著『コトラーのイノベーション・ブランド戦略』です。

本書は、「顧客が、市場において他社製品ではなくあえて貴社製品を買い求め、さらに他社製品よりもより高い価格を進んで支払うようになるための戦略」を、イングリーディエント・ブランディングという手法を中心に指南した専門書です。


圧倒的優位性のある部品や成分で、ブランド価値を飛躍させるイングリーディエント・ブランディング

かの有名な「インテル入ってる(インテル・インサイドキャンペーン)」は、ブランディングの一ジャンルを生み出すほどのインパクトがありました。

それは、イングリーディエント・ブランディング(別名:成分ブランディングインブランディング)と呼ばれるジャンルです。


イングリーディエント・ブランディングとは、ある部品や成分が業界における圧倒的な競争優位性を持ち、そのブランド価値を高めることを指します。

インテルの他にも、ゴアテックスやドルビー、VISAなどが、イングリーディエント・ブランディングを代表するブランドだと言われています。

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これらのブランドに共通する要素は以下のとおりです。

・部品または成分が十分に差別化されていて、消費者にとって持続的な価値を生み出していること。

・部品または成分が製品の機能にとって中核的役割をしていること。

・川下の工程にある企業もイングリーディエント・ブランディングへの取り組みを支援していること。

・最終製品も高いブランド価値を求めていること。また、その製品提供において差別化を可能にすること。


イングリーディエント・ブランディングの歴史は長く、20世紀前半に化学メーカーとして成功したヘキストとビーエーエスエフが起源とされています。

しかし、何と言っても80年代のインテル・インサイドキャンペーンがこのジャンルを露わにしたのです。


「インテル入ってる」の衝撃

インテル・インサイドキャンペーンは、日本でも「インテル入ってる」という、なんとも最高な音の響きを持って日本語化され、多くの人が知ることになりました。今でもインテルが入ってるパソコンは性能が良いというイメージを持っている人も多いと思います。



投資家の反対を押し切り、大規模なキャンペーンを決行

本書では、インテル・インサイドキャンペーンがどのような成功をもたらしたのか、詳しく解説されています。

当時、500万ドルの売上だったインテルは、110万ドルもの投資を行って3年以上もかけてこのキャンペーンを行いました。

多くの投資家たちは反対しましたが、それを押し切り、結果は歴史が証明しているように大成功を収めました。

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コトラーは、本書でイングリーディエント・ブランディングの理論を説明し、インテル・インサイドキャンペーンの詳細な分析を行っています。

そのほか、日本のシマノをはじめとする他の成功事例も紹介しています。


自転車界のインテルと呼ばれたシマノ

シマノはイングリーディエント・ブランディングを成功させた日本を代表するグローバルブランドです。

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シマノは堺の町工場から自転車界のインテルと呼ばれるまでに急速な成長を遂げ、70%のマーケットシェアを誇る自転車部品の一流ブランドとなりました。

1921年に島野庄三郎が大阪、堺市に創設。堺は鍛冶屋の中心地でした。

庄三郎は鉄工所の見習いとなり、自身の会社をスタート。当初はホイールをつくっていましたが、1956年に変速機の生産をはじめます。これが業界で圧倒的な競争優位性を誇る成分ブランドとなります。

10段ギアの変速を可能にするシステムは、さらに改良されアメリカでもすぐにスタンダードとなります。

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市場での力を増しながらも、シマノは絶対に自転車本体をつくりませんでした。

決して顧客と競合してはならない」というのが創業者が伝えていた言葉だといいます。このおかげもあって、シマノはイングリーディエント・ブランディングで大きな成功を収めたのです。


イングリーディエント・ブランディングの理論が1冊でわかる

この本は隅から隅まで学ぶことができます。なんといってもイングリーディエント・ブランディングを方法として紹介してくれているのがうれしい。
 
 
目次を見れば、その内容が一目瞭然です。


第1章 イングリーディエント・ブランディング
 1.1 イングリーディエント・ブランディングとは何か?
 1.2 新しいブランド戦略?
 1.3 この本で期待しうること

第2章 インブランディングの理論的基礎
 2.1 インブランディングの理論的基礎
 2.2 インブランディングの原理
 2.3 インブランディングの必須条件
 2.4 利益とリスク

第3章 インテル・インサイド — インブランドの成功事例

第4章 社内でのインブランディングの実行
 4.1 ブランドコンセプトの重要性
 4.2 インブランディングのブランド概念
 4.3 戦略上の選択肢
 4.4 コミュニケーション・ポリシー

第5章 インブランディングの成功例
 5.1 自動車部品
 5.2 繊維産業における繊維ブランディング
 5.3 ガラス:エッセンシャル コンポーネント
 5.4 食品業界の例

第6章 成功したインブランドの詳細な実例
 6.1 テフロン:インブランディングの基本
 6.2 ドルビー:イノベーションで産業界をリード
 6.3 テトラパック:機械メーカーが著名に
 6.4 ビトレックス:ネットワークアプローチの実行
 6.5 シマノ:潜在的なインブランディング
 6.6 マクロロン:先端材料
 6.7 DLP:顧客満足の徹底
 6.8 ショット・セラン:差別化による成功
 6.9 マイクロバン:納得のいく測定

第7章 インブランドのマネジメントとその評価
 7.1 インブランドのマネジメント
 7.2 ブランド評価の原理

第8章 成功したインブランディングの全体像
 
 
この1冊を読めば、イングリーディエント・ブランディングの全てがわかると言ってもいいほど、内容の濃い本書。

経営者の方や製品・サービス開発の責任者の方に、是非ともおすすめしたい1冊です!


「インテル入ってる」については、こちらの記事でも解説していますので、よろしければご覧ください。


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