太田プロで今何が起きているのか?

正解はズバリ、何も起こっていません。

太田プロは平常運転。

何なら、このコロナ禍で太田プロの文明度が上がったという噂まである。
太田プロはほんの数年前までファックスを使っていた事務所である。
手渡しだったギャラの支払いが振り込みになった。これは驚きである。文明開化である。まあ僕は手渡しが好きだったけど。
事務所も4月は丸々開いてなかったし、これからも事務所の在り方が良い方に変わっていきそうだ。



今日、先輩である『新宿カウボーイ』が太田プロを退社することを発表しました。
先日、かねきよさんから電話がかかってきた。太田をやめることについて色々な人に報告していたらしい。やはりちゃんとしているなあ、と感銘を受けた。

凄く前を向いていて、とても気持ちの良い電話でした。



かねきよさんとの電話といえば、僕には忘れられない感謝の思い出がある。




僕が25歳くらいの頃、よくテレビ番組のシュミレーションの仕事にいっていた。

シュミレーションとは、スタッフさんのリハーサルの為に、出演する芸能人の名前が書かれたプラカードを首からぶら下げ、その出演者のかわりに番組の流れを一度通してやることである。

何も仕事がない中、やさしい雨はこれに毎週のようにいっていた。
やさしい雨と新宿カウボーイと、もう今はいないんだけど、どてちんレンジャーというコンビがいてその3組はよくシュミレーションにいっていた。

まあ、こんな事を思うのはお門違いなのだけれど、本当にヤル気がなかった。
単なるアルバイトみたいなもんだし、カリカリしたスタッフさんからはゴミ虫のような扱いを受けるし、時間の拘束が半端ない時もあったし、事務所からは前日とかに急に明日行ってねとか言われるし。
ハッキリ言って、シュミレーションばかりしていると感情が死ぬというか、腐る。単純に売れてないのがいけないんだけど、とにかく腐るのである。


僕も多分に漏れず腐った。
しかし、どてちんレンジャーの野崎さんという方にある時ちゃんと叱られた。

「お前は一応芸人なのに何だその態度は。しかも太田プロから来てるんだから、お前の態度が悪いと太田プロに迷惑がかかるんだ。ちゃんとやれ!」と。


僕はカミナリにうたれた様な気分でした。全くその通りだったからです。
野崎さんは地元が川崎で、僕と一緒だし、東京アナウンス学院の卒業生でもあり直の先輩というか、お世話になっていたぶん言葉もすんなりと響きました。


そんな野崎さんは、やがて住居に侵入し逮捕されてしまいました。キャ。新妻さんもアナ学なので、ライブシーンではアナ学は泥棒養成所なんて揶揄されていますッ。
嘘です。僕しか言ってません。新妻さんは不起訴です。アナ学はとても立派な学校です!!アナ学万歳!最高!アナ学で本当に良かったッ!イェイ!!

ちなみに野崎さんは新宿カウボーイの石沢さんの元相方でもある。




まあ、とにかく野崎さんに叱られてからはシュミレーションも全力で取り組みました。はじめからそうしろ!と言われたらそれまでですが、全力で取り組みはじめると、他のみんなも全力で取り組みはじめて、僕らが全力だとリハーサルも捗るのかスタッフさんも段々とカリカリしなくなって、回を重ねる毎に待遇が変わっていって、最初は鞄や荷物は廊下の隅に邪魔にならないように置いていたのが、楽屋を用意してもらえるようになり、お弁当が出るようになり、さらに企画会議にまで呼ばれて新企画の実験というかそういうことまでするようになり、意見を求められたりして制作側に仲間入りみたいな感じになっていったのです。

や、どこで出世してんだよお笑い頑張れよ馬鹿。と言われればその通りなので、そんな事は言わないで欲しい。
それに、そこでの頑張りを認められて、夏のお台場冒険王などのブースでMCの仕事をまわしてくれたりした。

とにかく、やさしい雨、新宿カウボーイ、どてちんレンジャーが太田のシュミレーションの礎を築いたと言っても過言ではないのである。


余計なことすんなよ、と若手に思われそうだが。


そんな黎明期を乗り越えて仲間だと思っていたというか、僕は勝手にスゲー親しくなったと勘違いして、先輩であるにも関わらずかねきよさんに対して失礼なボケや弄りを連発していた。かねきよさんはとても優しい方なので、それに対していつも応えてくれていた。


ある日。特番のシュミレーションがあり沢山の芸人が呼ばれ、且つリハーサルの時間も大変長い現場があった。

僕はその日、超時間に渡りかねきよさんに対して失礼なボケや弄りを繰り返し繰り返ししつこくしていた。

もう一度言うけど、僕はかねきよさんの事が大好きで仲良くなっていたと勘違いしていた。

すると突然、ふざけんなお前もういいわ。と、かねきよさんらしからぬ低くドスの利いた声で言われ、空気が読めないというか察しの悪い僕はそれでもお構い無しにガンガンいった。
すると無視されて遠くの方にいってしまい、沢山芸人がいたので他の人と話したりして僕は気にも止めなかった。

シュミレーション終わりで、さすがにちょっとアレだったかな?と謝ろうと話しかけたら、話させてもらえずスーッと帰ってしまった。


そこにきて、ようやく僕はかねきよさんが本当に怒っていることに気付く。
うっわヤバ、ヤバ、と焦りました。


家に帰ってどうしたらいいか考えて、やはり一刻も早く謝ろうと電話をかけました。


すると、電話には出てくれて僕が謝ると「別に怒ってないから謝る必要あらへん」と冷静な感じで言われた。
ブチギレである。謝らせてももらえなかった。
かねきよさんは北海道出身だけど、大阪で修行をしていたので怒った時と女を口説く時だけ関西弁が出るのだ。

あんなに温和なかねきよさんをこんなに怒らせてしまい、僕は本当に反省して平謝りした。するとかねきよさんが「お前には愛がない」と教えてくれた。「お笑いは愛だ」と。お前の弄りは何だ?糞や。なんべん殺したろ思ったことか。と言われて、全然仲良くなってなかった!ワオ!


しかしかねきよさんの言うことは全て正しく、普通は、大人になったらそんな事を言ってくれる人はいないものである。

僕は反省していたはずなのに、いつのまにか感謝していた。

お笑いは愛だ!というのは、僕はかねきよさんから教わった。
すると作るネタにまで変化があらわれて、それまでたまにしか出れなかった事務所ライブにも普通に出れるようになった。

あの時怒ってもらって本当に良かった。


僕はかねきよさんだけじゃなくて、つうか、むしろ石沢さんのほうがいっぱいお世話になっているというか、ハッキリ言って石沢派なんですが、そんな新宿カウボーイが太田プロを辞めるというのは、やはり後輩達は寂しいですよ。まあ僕はお笑いをやめるからそんな事言う資格ないんですが。


まあ、凄く前向きな退社というかそんな感じだったんで、いちファンとしてはこれからも引き続き応援したいと思っています!お疲れ様でした!













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