宇野常寛 「遅いインターネット」から考察する現代社会と相場への取り組み

最高に面白い本を読みました。
2年ほど朝のワイドショー「スッキリ」にコメンテーターとして主演していた宇野常寛氏が書いた「遅いインターネット」という書籍。
自身で評論家と名乗っているがよくこの人がテレビをクビにならなかったなぁと思っていたらどうやらしっかりクビになったようですね(笑)
それはそうだろうと思います。

編集を担当した箕輪厚介氏との対談番組があまりにくだらなくて最高の楽しくて興味を持ったのがきっかけでした。(今でもその動画はYouTubeで確認できます)

私がよく言っている
「SNSというネットテクノロジーに対して人間の文化水準が追い付いていない」
という主張をもっと深く明快にそしてそれをいかに解決するか、までは書いている素晴らしい書籍です。

私が足りていない思考の言語化を完璧にしてくれている一冊です。
そしてあまりにタイムリーなコロナ騒動。
今の日本の現状をこの本の考察を通してみるとめちゃくちゃ面白いです。
更には相場に対する態度というものまで考察を深めることが出来ます。

「インターネットというものをワイドショーとしてしか使われていない」
という指摘から始まる本書。
そしてフェイクニュースというものは無くならない、と断じその理由を
「フェイクニュースは欲望だから」と説いています。

我々はこれまで「読む」ことから「書く」ことへと思考を深化させていくのが普通だった。
それがネットとSNSの普及により「読む」という行為より先に「書く」ことから始まっている。
そしてさも自分の意見のように他人の意見をリツイートしシェアする。
そこには速すぎるネットの弊害があり、その何も思考していない欲望としての発信がボトムアップによって力を持ってしまう世の中になってしまってるのは極めて危険だ、という内容になっています。

私が現代社会に対してたびたび主張している
「馬鹿の意見が通りやすくなった社会」
という表現をもっと多くの人が受け止めやすい形で極めて論理的に説いています。

戦時中によく合った「無責任の体系」を作りやすいのがSNSだと。
つまり上からのトップダウンではなく下からのボトムアップによる空気の醸成が起こりやすい状態がどれほど危険か。

半世紀以上前の思想家である吉本隆明の3幻想を引き合いに出して現代のSNSと比較しているところは圧巻でした。
「自己幻想」「対幻想」「共同幻想」という3幻想を軸に語られるその思考過程は素晴らしいです。
そして、以前であればトップダウンによる「共同幻想」からの自立が課題であったのに対して現代社会はこの3幻想がSNSによって接続されてしまい他の幻想を足掛かりにして共同幻想からの脱却を図ることが不可能になってしまっている、という展開は震えがくるほど素晴らしかったです。
自己幻想はプロフィールによるFacebook
対幻想はメッセンジャーによるLINE
共同幻想はタイムラインによるTwitter
この3幻想の独立性が崩壊してしまっているがゆえに、上からのトップダウンではなく下からのボトムアップによるバカの共同幻想による支配が起りやすくなっていいます。

物凄くタイムリーは話題としては「検察庁法改正に反対します」というツイートが一気に広まったことですね。
朝日新聞が撒き散らしたフェイクに近いトピックスに対して戦略的に芸能人たちを使って仕掛けさせた人間たちは「何も考えずに発言する芸能人たちがどう動くか」を最初から分かって仕掛けているわけです。
こんなことはちょっと立ち止まって考えたらリツイートするような内容じゃないことは分かるはずなんです。
明らかに強大で暴走しやすい法律の立て付けになっている現在の検察という組織状況の是正を行うために役立つ法改正にもかからわず、こんな朝日のフェイクにあっという間に引っかかる人たちが沢山いるわけです。
流石だったのはワイドナショーで発言した指原さんですね。
「上から降りてきましたが私はよく分からなかったので発言を控えた」これが自分の頭で考えることが出来る「遅いインターネット」の使い方に適した態度です。
もちろんどんな人でもこんなデマに引っ掛かってしまうことはあります。
今回見事だったのはきゃりーぱみゅぱみゅさんですね。
彼女はうっかりツイートしてしまった後にさっと削除しました。
これが出来るかできないかが「損切りできる人とそうじゃない人」の明確な違いです。
間違えたポジションを獲ったら素直に謝りを認めて切る、ことがとても重要なわけですがきゃりーぱみゅぱみゅさんはおそらく相場をやっても勝つと思います。
ところが一度自分が起こした行動を軸に己の思考をあとから矯正して合わせてしまってずっと損切りできない人というのが存在します。
こういう人は絶対に相場でも勝てません。

こんな法改正で検察という強大な権力など1ミリも揺らぎません。
そして民主主義の用の中に置いてただひとつ監視の目がおかれていないのが「検察」という組織であり、みずからが望めばどれだけでも暴走できる組織であることを我々は忘れてはいけません。(実際何度も証拠の捏造をしたり暴走をしています)
そして今回の法改正を求めて法案の骨子を作っているのは検察そのものだということも忘れてはいけません。
ましてや先進国で他の組織からの抜擢もなくすべてが内部昇格によってトップが決まる検察という組織など日本以外に存在しないことも指摘しておきます。
つまり他の組織からの抜擢を内閣が任命することすらできない、というのが現在の検察の人事です。
ということを少しだけでも調べたらこんなツイートが広まるわけがありません。
実際90%以上のツイートがフェイクだという判断をされてTwitter社から削除されていることを知っておく必要もあると思います。
本書の中で指摘されていることそのものがこういう形で起こっているわけです。

でもよく考えたら朝日新聞というのは戦前と立場を変えて全く同じことをしている事がよく分かります。
戦争中は戦争を煽りに煽りまくって国民を扇動していきましたが、今立場を変えて必死に国民を扇動しようとしています。
いったいこの新聞社は何がしたいんでしょうか(笑)
すでにこの問題は1月末に指摘していたジャーナリストの須田慎一郎氏は「朝日新聞は検察人事に介入するのを止めろ」と断罪していました。

こんな一連の状況を「完璧にど真ん中を射抜いている」というのが本書です。

今回の一連のコロナ騒動で一番滑稽なことは、安倍総理の動きが遅いだの決断が遅いだの言い続けている人たちが、日本の法律上の立て付けが緊急事態が起こった時に総理に権限が集中するようになっていないことを知りもしないことです。
そして、もっと滑稽なことは、憲法9条の改正とともに先進国で唯一緊急事態条項が明記されていない憲法を変えていこうと唯一必死に頑張ってきた総理大臣がやろうとしていたことを散々邪魔してきた奴らが今安倍総理を責めていることです。
まさにこんな時を見越して「緊急事態条項を付け加えさせてくれ」と散々説いていた人が今の総理なことを分かっていない人たちが「動きが遅い!」と責めている・・・自分たちの責任だとは露とも思っていないんですよね。
アメリカやイタリアのような状態にもし日本がなっていたら彼らは「自分たちの責任だ」とは絶対に思わないでしょう。
本当に日本人がこのウイルスに対して強くてよかったと心底思います。

私も安倍政権がコロナ対策の会見で「マスク二枚配る」と言ったときには馬鹿にしていましたが、だんだんその狙いが分かってきました。
私のお客様に全く別の場所で郵便局にお勤めの方が二名いらっしゃいます。
その二名ともに教えてもらったことがとても怖いことで
「昨年の秋から冬にかけて倉庫に入りきらない量のマスクを中国に送らなければいけない時期があった」と言っていました。
つまり中国は最初から分かっていたわけです。
昨年中国が買い占めたマスクの量は20億枚以上という事がもう分かっています。
そしていま彼らが何をやっているかというと全世界150か国に対してマスクを送ってさも救世主のようにふるまっているのです。
それを「マスク外交」と揶揄されていますが馬鹿にできない効果を上げていて特にイタリアは中国に正式に感謝の意を表明しています。
つまり安倍政権は国民に馬鹿にされようが「そんな舐めたことは日本には通用しませんよ」ということを中国に対してメッセージを送ったんだと解釈すれば納得がいくようになりました。
もちろんこれは私の私見ですが、もし仮にそうだとしたら安倍政権はなかなかやるなと思います。

ちょっと立ち止まって考えてファクトとファクトを繋ぎ合わせていけば自分なりの思考で自分の答えが出せるようになる。
これが「遅いインターネット」が提示する姿だろうと思いました。

ただし高速でインターネットに接し続ける人たちは減りはしない現実を踏まえて本書では
「民主主義を半分諦める」と説いています。
「半分諦めながらも暗礁に乗り上げたシステムなんだというニヒリズムも捨てる」という宣言をしている事に好感を持ちました。

著者の宇野常寛氏が進めている「遅いインターネット計画」というものに参加していくことを私も決めました。

本書が面白いのは
「走る、ランニングす」
という自分の趣味とインターネットというものに接続するスピード感や自由度というものを繋げていることです。
これによって一気に身近な問題としてこの主張が実感を伴って迫ってきます。

憲法9条に対するここまで辛辣ででき書くな主張も初めて見ました。
「国軍として規定する以外選択肢はない」としながらその前提として
「つまらない自己憐憫の物語に対する徹底的な軽蔑とアメリカという必ずしもその子を愛するとは限らない義父への依存からの脱却」が必要としている。
素晴らしい名文だと思います。


相場の世界では一昔前と比べれば、極めて簡単に速く「接続される」ようになったからと言って勝つ人間は結局100人に1人だという真理は変わりません。
マーケットで勝つ方法や自由と手に入れる事が出来るといった軽薄なSNS広告を「真実」だと思ってしまう人たちのリテラシーの低さはそのまま相場の負けへと直結します。
少し立ち止まって考える力があればそんなことがあるわけがないと分かるはずです。

「遅いインターネット」
是非手に取って10ページでも読んでみてください。
どこから読んでも「お!」と感じる名文に出会えるはずです。

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