数学ギョウザ
私が中学生になり、時間に余裕のできた母は
家事の傍らで漫画を描くようになったのだが
その漫画で、母は大きな賞を受賞する事になった。
───授賞式当日。
「どのような想いで漫画を描くようになったのですか?」
「娘に数学の楽しさを、教えてあげたくて」
「確かに漫画の中には数学の要素が多いですよね!」
「昔、娘の大好きな餃子の中に大嫌いなピーマンを入れたんです。
そしたら、美味しい美味しいって食べたんですよ。
苦手な数学も、大好きな漫画の中に入れてあげたら
好きになってくれるかなぁって。」
またお母さんの餃子作戦にやられたのか、私。
好きになっちゃったじゃん、数学。
でもね、お母さん。ちょっとだけ違うんだよ。
あの日、餃子を食べたのは
お母さんが美味しそうに食べていたからで
漫画を手に取ったのは
夢を追いかけるお母さんと
同じ目線に立ちたかったからなんだよ。
でもね、お母さん。ありがとう。