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米国で再び感染が急拡大(2020年7月18日)

2020年東京オリンピック開会を前提として設定された連休が始まりました。現実がこんな展開になろうとは誰が想像したでしょうか?今回は、南部の州を中心に感染の急拡大に直面する米国からのレポートを共有します。若年層が感染再拡大の中心となっているのは日本の現状と同じです。そして米国で死亡率は横ばいだけれどそれは長くは続かない、というThe Economistの予測は、そのままそっくり日本にあてはまる気がしてなりません。

英語原文は、以下からどうぞ:

米国で再び感染が急拡大
2020年7月18日

フロリダ州で1日の新型コロナウイルス新規感染者数が15,000人超と同州の過去最高を記録した週末、同州オーランドにある巨大テーマパーク、ディズニーワールドが入園者のマスク着用を条件に再開した。6月の初め、米国で新型コロナウイルス感染症の死者数が10万人の大台を突破した後、米国での感染拡大はヨーロッパ同様、ある程度の落ち着きを見せたかのようだった。そして米国とヨーロッパはほぼ同じ時期にロックダウンの解除に踏み切った。

しかし、一つ違いがある。米国のいくつかの州では、ロックダウンによる社会的および経済的な閉塞感を打ち破ろうと、感染がまだ拡大しているとみられる中で封鎖の解除が始まったことだ。バーは再開を待ち望んでいた客たちで賑わい、レストランも営業を再開した。人種的不平等に対する抗議活動や、大統領選挙の集会に大勢の人々が参加した。6週間たった現在、米国は他国とは全く異なる感染の第2波に直面している。他の西欧諸国と同様の状況と考えられてきた米国は今、悪い意味で例外的な存在になりつつある。

カリフォルニア州のように、感染拡大防止策にいったんは成功していたと思われる州でも感染者数が急増している。7月13日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事は、感染拡大を食い止めるためバー、レストランの店内飲食、映画館の営業停止を発表した。同日、生徒数60万人を数えるロサンゼルスとサンディエゴにある学校は、秋学期をオンライン開講のみとすると発表した。

新型コロナウイルスの動向の予測は非常に難しい。フロリダ州とテキサス州では3月、共に共和党であるロン・デサンティス知事とグレッグ・アボット知事は外出自粛令の発動を遅らせた。感染拡大を意図的に招くかのようなこの行為は3ヶ月後、予測通りの結果を招いた。二人の知事は事態が手遅れになるまで、検査の陽性率の上昇や入院患者数の増加などの悪い兆候に対策を講じなかった。

同じく共和党のダグ・ドゥシーアリゾナ州知事は5月初旬、1日当たりの新規感染者数が約400人を数える中で州の経済活動を再開した。その2ヶ月後、1日当たりの新規感染者数は10倍の約4,000人に膨れ上がり、州内にある集中治療室の病床使用率は90%に達し、対策の見直しを迫られている。ドゥシー知事は多くの共和党知事と同様、州内の都市が独自のマスク着用義務を課すことを禁じていたが、6月17日にこれを撤回した。

ホワイトハウスにも感染拡大への警戒感はさほどみられなかった。マイク・ペンス副大統領は6月16日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「コロナ『第2波』はない」という見出しの論説を寄稿し「メディアはあらゆる手段で米国民の恐怖心を煽ったが、第2波が到来するという予想もそのうちの一つだ」と主張した。6月に感染者数の拡大が続いていたにも関わらず、トランプ政権のペンス副大統領がこのような議論を展開した主な根拠は、新規感染者数の増加は検査数の増加によるものであること、そして死亡率は減少を続けているという2点だった。これについて最初の点は疑問である(感染者数の増加率は検査数の増加率を上回る)が、2つ目については真実である。

感染者数が再び急拡大する中で死亡者数が横ばいであることを説明する要因は4つ考えられる。第1に、検査数の大幅な増加により感染者の特定が増えている。第2に、最近の感染者数増加の中心は若年層であることが判明している。フロリダ州では、新型コロナウイルス感染者の年齢の中央値は65歳から40歳近くまで下がっている。第3に、新規感染後、州当局に死亡が報告されるまでには通常数週間のタイムラグがある。第4は、これまでの経験から入院が必要な重症患者の治療が改善し死亡率が低下していることだ。

しかし、感染者数の増加を考えると、死亡率の横ばいはそう長くは続かないだろう。数週間前に感染した患者の死亡が報告されるのはこれからだ。数ヶ月前のニューヨーク市の状況と同様に、アリゾナ州とテキサス州の一部の病院ではすでに遺体安置所のスペースが足りなくなり、冷蔵トラックが必要な状況が発生している。若年層の市中感染の増加は今後、高齢者施設での感染拡大と抵抗力の弱い高齢者の死亡率増加をもたらす可能性がある。テキサス州ヒューストンですでに起こっているとみられる病院の患者受け入れ態勢の逼迫も、医療の質の低下と死亡者数の増加につながるだろう。

現状否定が感染拡大抑制に特に効果的な戦略であることは証明されていない。先週、市場調査会社YouGovが行った世論調査では、トランプ氏に投票した米国人の3分の1が、新型コロナウイルスは国の問題としてあまり重要ではない、またはまったく問題ではないと回答した。一方、最近のギャラップ社の世論調査では、民主党員の94%がいつも、またはほぼいつも自宅外ではマスクを着用していると回答しているのに対し、共和党員ではその割合は46%(無党派層の場合は68%)であった。多くの有権者にとって、感染拡大の懸念は大統領不支持を意味し、マスク着用は常軌を逸したリベラリズムから身を守る行為だと見なされている。

アボット知事は知事選中、バラク・オバマ政権を何度訴えたかを自慢げに語っていたが、テキサス州でのマスク着用義務をめぐって、州内の各郡からの反発に直面している。かつては米国のシステムを補うかのように見えたローカルでの統制は、今や封じ込めへの対抗策として機能しているかもしれない。ニューサム知事とカリフォルニア州内の郡との間の対立も、カリフォルニア州でのタイムリーな感染対策実施を妨げている。これらは連邦政府が調整を行い解決すべき問題である。しかし、ホワイトハウスは新型コロナウイルスの危機を通じて、この問題に関心を示しているとは思えない。またしても、米国の州や都市は単独で難題の解決を迫られることになるだろう。

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アメリカは政治的に、連邦レベルでのルール実施が難しいという事情があります。対する日本は国がまだまだ力を持っています。なのに悲しいかな、国レベルの政治のリーダーシップの弱さ。。。



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